映画『マインクラフト ザ・ムービー』壮大で荒唐無稽な夢を見続けて欲しい

映画『マインクラフト ザ・ムービー』壮大で荒唐無稽な夢を見続けて欲しい

ようこそ、四角形の世界へ映画『マインクラフト ザ・ムービー』

©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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幼い頃に一度は憧れた世界規模のデッカイ夢。大人になれば、その時の野望が如何に荒唐無稽で、笑止千万の笑い話であったかと、誰もが振り返るだろう。「世界征服」「宇宙飛行士になりたい」「世界中を旅したい」と事実無根の絵空事を並べ立て、特に年頃の男の子が実現不可能な夢ばかりを追い掛けて、妄想ばかりの夢見がちな時間を過ごしていただろう。子どもの頃に見たデッカイ夢は、大人になるにつれて忘れがちとなるが、それでも、心のどこかに残っているものだ。その時の願望が、自分が将来何をしたいのか、どうなりたいのかという大きな夢とあり、人生の羅針盤の役割を果たす。子どもの頃のデッカイ夢は、具体的な目標や願望だけではない。幼少期の頃の自身の可能性を信じ、未来に希望を抱く指針となる。子どもの頃に見た夢は、大人になってからの人生の目標や行動のヒントにもなり得る。あの頃に見た夢は、大人になってからの人生を豊かに彩る、大切な宝物でもある。その夢を大切にし、実現に向けて努力を続ける事が、充実した人生を送る糧となる。映画『マインクラフト ザ・ムービー』は、3Dブロックを集めながら自分の好きなように動き、自分の好きなようにものづくりや冒険が楽しめるゲームの世界観を再現し、そこで繰り広げられる冒険を描く。

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コンピューターゲーム「マインクラフト」がこの世に誕生した歴史(※1)は、2009年5月にまで遡る事ができると言われている。スウェーデンのフリーのゲームクリエイターのマルクス・ぺルソン氏(マインクラフト開発当時は、アマチュアだったが、作品がヒットした後に会社を設立している)が開発。この頃のマインクラフトは、今のような動物や植物の登場はなかったと言われている。最初のバージョンでは、ブロックはたったの2種類からのスタートだったのだ。ゲームの名前も「Minecraft」ではなく「Cave Game」という所からマインクラフトの歴史は始まっている。最初は、インディーズゲームと呼ばれ、世間にある人気のゲーム群とは一線を画す存在であり、超有名ゲームクリエイターが開発したゲームではなく、素人より技術を少し身に付けたアマチュアのゲームクリエイターが開発した事実に世界が驚愕した。ゲーム「マインクラフト」は、この点に関して、他のゲームやクリエイターと比べて大きな差別化的要素がある。どこの団体にも所属せず、独学でゲーム制作の技術を習得しながら、生み出したインディーズゲームが多くの衆目の目の元、人気を得、10年以上続くベストセラーとなった。それが、今ではハリウッド映画にまで姿かたちを変え、大成したと考えると夢のある話だ。最初、2つのブロックから始まったマインクラフト伝説は、今では世界中でブームを巻き起こし、まるで誰もが抱くアメリカンドリームを地で行く人間のロマンが詰まっている。

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「君は将来何になりたいの?」「夢を持つ事は、大切だ。」「自分の将来について、考えてみよう。」(※2)と、誰もが子どもの頃に言われた事だろう。小さな頃は、宇宙飛行士、スポーツ選手、サッカー選手、野球選手、警察官、消防士、YouTuber。お花屋さん、ケーキ屋さん、幼稚園の先生。年齢別、男女別に大きな夢から小さな夢まで、子どもの頃は各々に将来の夢について、遥かな想像を膨らませていただろう。この物語に登場する幼少期のスティーブが、実際の採掘場での採掘(マイン)の発掘に憧れたように、現代を生きる子ども達が、少し荒唐無稽でもいいから、自身の壮大な夢を見て欲しいと願いたい。それが今では、将来の夢を見ない子ども達が増えている。近年、将来の夢を持てない、夢が見つからないという子ども達が増えていると声をよく聞く。夢を持てない子ども達が抱える様々な問題や、社会の変化によって影響を受けていると考えられ、ある種、現代における社会問題の一つとして捉えても良いのかもしれない。この問題にはいくつかの要因が考えられ、たとえば、競争社会と将来への不安、情報過多と多様な価値観、自己肯定感の低下、親の価値観や期待に対する親の影響など、様々な原因が折り重なった結果、将来への夢を見れなくなった子ども達が増えていると考えられる。再度、子ども達が明日への希望を胸に夢を見れるようになるには、親や教師といった大人達が子どもの興味や関心を大切にする事。小さいうちから様々な経験を積ませる事。失敗を恐れずに挑戦する姿勢を促す事。大人自身が子どもとのコミュニケーションを大切にする事。そして、親自身が子どもたちの成長をサポートする事が課題だ。これらを解決する一番の方法には、家庭、教育機関、そして地域の大人達、この3つの柱が必要となる。一方で、2022年5月に経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」のデータによると、18歳未満で「将来の夢を持っている」と答えた子どもが日本は60%しかいなかった。他国は80~90%を超えている(※3)。外国の諸外国と比べた時の日本の数字が、衝撃的ではないだろうか?如何に、日本の今の若い世代が日本の将来に辟易していると伺い知れる。最終的に、私達大人はどうすれば良いのか?その答えは一つしかなく、それは子ども達への保護者のサポート(※4)を中心に教育機関や地域周辺に住む大人達のサポートもまた必要となって来るだろう。夢見る事を忘れてしまった子ども達にこそ、この作品の娯楽性が必要だ。映画『マインクラフト ザ・ムービー』を制作したジャレッド・ヘス監督は、あるインタビューにて本作の真の部分について聞かれ、こう話している。

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ヘス監督:「現実世界で不運に見舞われている様々なキャラクターたちを、創造力を使って生き延び、自分らしさを確立していく冒険へと送り出すのは、とにかく楽しかったです。そして、このゲームの大きな要素でもあるんです。世界を生き抜くためには創造力が必要だ、というのが。それを映画のテーマとして使うことは、本当に重要でした。クリエイティブな人間として自分の作品を世に出すのは本当に大変で、大きな勇気も必要です。映画の中でジャック(ブラック)が言うように、「だから臆病者は二の足を踏むんだ」。これは私のお気に入りのシーンの一つで、映画の精神を象徴していると言えるでしょう。人々が創造力を発揮し、作品を発表すれば、世界はもっと良い場所になり、私たちは皆、その恩恵を受けるのです。」(※5)と話す。ハリウッドの映画界は、インディーズ出身のジャレッド・ヘス監督の事を賛辞を持って、本作含めまだインディーズ界隈にいる巨匠と讃える。その一方で、監督は現実の世界でスポットライトにも当たらず、不遇の人生を送っている人々が、本作に登場する人物と自身の人生を重ね合わせて欲しいと話す。この作品は、影日向で一所懸命に頑張る人々にエールを送っている作品と評しても遜色ないだろう。ゲーム「マインクラフト」の創始者マルクス・ぺルソン含め、本作の映画監督も、フィールドは違うが、皆インディーズ出身のクリエイターだ。また物語に登場する人物達は皆、人生のスポットライトには当たらない地味な人生を送っている人物達の冒険譚を描く。

最後に、映画『マインクラフト ザ・ムービー』は、3Dブロックを集めながら自分の好きなように動き、自分の好きなようにものづくりや冒険が楽しめるゲームの世界観を再現し、そこで繰り広げられる冒険を描いているが、単なるゲームを映画化した作品ではない。ゲームが好きな陰キャ、映画が好きな陰キャ、パリピで毎晩パーティー三昧のような陽キャも皆、昔は夢見る子ども達だった。今の子ども達もまた、陰キャと陽キャの垣根を越えて、笑っちゃうような壮大で荒唐無稽な夢を見続けて欲しい。この映画には、そんな願いが込められているようだ。

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映画『マインクラフト ザ・ムービー』は現在、全国の劇場にて公開中。

(※1)【マイクラ】マイクラとは?歴史から楽しみ方まで紹介!https://www.conoha.jp/game/media/mine-semi/try-minecraft-1/(2025年5月23日)

(※2)小学生に人気の将来の夢は?子どもの可能性を広げる方法も紹介https://kids.athuman.com/cecoe/articles/000197/(2025年5月24日)

(※3)日本では「夢をみられない」子どもが4割。「ミスが許されない」ことが起こす弊害https://gendai.media/articles/-/100476(2025年5月24日)

(※4)夢を語れない子どもが増加!? 子どもの夢をはぐくむ保護者のサポートとは?https://benesse.jp/kosodate/201702/20170201-2.html(2025年5月24日)

(※5)Jared Hess talks turning Minecraft into an ‘epic, hilarious adventure’ moviehttps://www.azcentral.com/story/entertainment/movies/2025/03/31/jared-hess-a-minecraft-movie-interview/82568384007/(2025年5月24日)