特集映画『妖怪・特撮映画祭』大阪のシネ・ヌーヴォにて、開催中!!

特集映画『妖怪・特撮映画祭』大阪のシネ・ヌーヴォにて、開催中!!

2021年10月29日
(C)KADOKAWA

文 スズキ トモヤ

この度、大阪にあるシネ・ヌーヴォにて、『妖怪・特撮映画祭』が、開催中だ(11月5日(金)まで)。京都の京都みなみ会館でも、近日公開予定だ。

2021年の夏、2005年に公開し大ヒットした妖怪映画『妖怪大戦争』が、令和の時代に更にスケールを大きくして復活した!!最新作『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(21年8月13日)の公開を記念し、「角川シネマコレクション」が最高の特撮映画30本を激選して組み合わせ、特集上映を展開する。

「実際には存在しない架空の映像」を生み出す特撮を巧みに扱い実体化した幽霊、怪獣、宇宙人が登場する「特撮映画」の特集を開催する。

前半の『妖怪大戦争』から『怪談蚊喰鳥』の9作品は、まさに元祖日本のホラーそのものだ。クラシカル・ジャパニーズ・ホラー、古典的J・ホラーの位置付けだ。

また、怪談お岩や雪女は、日本のホラー・アイコンでもある貞子や伽椰子を上回る存在だ。続く、3作は『大魔神』シリーズ。これぞ、「日本の特撮映画」という称号に相応しい大作だ。

打って変わって、次に『ガメラ』シリーズが9作。「ガメラ」は、当時の子供たちのヒーローだ。今で言う「アメコミ」のポジションではないだろうか?令和版ガメラも観たいところだ。

そして、最後に『釈迦』から『風速七十五米』の9作品は、史劇モノから災害映画という特撮映画の中でも、少し異色作と分類されそうな一風変わった作品が、ピックアップされている。今までにない、妖怪と特撮映画の特集上映となっている。


(C)KADOKAWA1968

映画『妖怪大戦争(1968年)』

監督:黒田義之 出演:青山良彦、川崎あかね、大川修、内田朝雄、神田隆

あらすじ:1715年のある夏の日。突如として、伊豆半島に雷鳴が鳴り響き、黒い塊が勢いよく大きな音を立てながら、降ってきて来た。

その来襲は、バビロニア遺跡から現れた面獣身に翼をもつ妖怪・吸血鬼ダイモンだった。日本の妖怪たちが立ち上がり、悪の化身吸血鬼ダイモンに立ち向かっていく。

ひと言レビュー:1968年の製作の映画にも関わらず、特撮技術は一級品。2005年に公開されたリメイク作『妖怪大戦争』とは、一線を画す妖怪映画だ。

2005年版が子供向け夏休み映画と仮定すれば、本作は勧善懲悪を意識した大人向けの娯楽映画だ。


(C)2005「妖怪大戦争」製作委員会

映画『妖怪大戦争(2005年)』

監督:三池崇史 出演:神木隆之介、宮迫博之、南果歩、菅原文太、栗山千明、豊川悦司

あらすじ:泣き虫な少年タダシは、親の離婚が原因で、タダシは母親と共に田舎で暮らす羽目に。

都会育ちの少年は、田舎ではなかなか馴染めず、いつもいじめられてばかり。ある日、神社のお祭りで、“麒麟送子”に選ばれてしまう。

彼の運命は大きく変わり始める。怪人・加藤保憲が、世界征服しようとしていることを知り、古来の妖怪たちと手を組んで戦いに挑む。

ひと言レビュー:映画『妖怪大戦争』と言えば、誰もがこちらの作品を思い出すだろう。

本作はひと夏を通して描かれる、少年の成長物語という側面として捉えることができる。また、日本を代表する錚々たる妖怪たちが登場し、それを探すのも楽しみの一つだろう。


(C)KADOKAWA1968

映画『妖怪百物語(1968年)』

監督:安田公義 出演:藤巻潤、高田美和、平泉征(成)、坪内ミキ子、ルーキー新一

あらすじ:大映映画「妖怪」シリーズ第一弾。今の世にも伝わる日本古来からの都市伝説「百物語」を題材に描く本作。

悪徳商人・但馬屋が、住民が大切にする長屋と氏神の社殿を取り壊し、女郎宿を作る計画を立てる。長屋の住人は反対するものの、住民たちの必死の声も聴かずに、但馬屋は強引に計画を進め始める。

ついに社殿が取り壊され、そこに祀られていた妖怪たちが突如として遅いかかかる。

ひと言レビュー:ロウソクを一本一本吹き消す都市伝説「百物語」の場面から物語は、始まる。

この行為は、誰もが一度は経験したことがある日本文化の伝統行事。そんな「百物語」を主軸に描いた時代劇ホラー。ラストの妖怪たちが列挙する場面は、Jホラー屈指の恐怖映像。


(C)KADOKAWA 1969

映画『東海道お化け道中(1969年)』

監督:安田公義 出演:本郷功次郎、保積ペペ、古城門昌美、戸浦六宏、五味龍太郎

あらすじ:祖父をヤクザに殺された少女お美代。祖父の甚兵衛は亡くなる際に、お美代の父親がまだ生きていると言い残し息絶える。

少女は、物語のキーポイントとなる唯一のサイコロを握って、父親探しの旅に出る。道中、口封じのために駆り出されたヤクザの手下や百太郎少年に助けを借りて、一歩ずつ前に前進するのだった。

ひと言レビュー:本作『東海道お化け道中』は、『妖怪百物語』『妖怪大戦争』に続くシリーズ第3弾。

前2作では、妖怪×妖怪、人間×妖怪のアクション・スペクタクル・ホラーだったが、本作では気色を変えて、亡き父親の姿を追う少女のロード・ムービーだ。

妖怪映画、怪談映画、ロード・ムービー、どのジャンルを切り取っても、異色中の異色作に仕上げている。


(C)KADOKAWA1969

映画『四谷怪談 お岩の亡霊(1969年)』

監督:森一生 出演:佐藤慶、稲野和子、青山良彦、御影京子、小林昭二

あらすじ:日本の怪談小説「東海道四谷怪談」を基に製作された7度目の映画化。お岩とお袖は没藩後、不幸のどん底。

お袖は婚約者と生き別れ、老いた父を養うため娼婦に。お岩はある男と所帯を持てたものの、江戸では相当気の毒な生活を送っていた。彼女は旦那を精力的に奉仕するも、男はお岩を忌まわしく扱う。

自身の出世ばかりを気にし、邪魔となっていたお岩を、不義密通が原因で、離縁しようと実行しようとするも…。

ひと言レビュー:時は江戸幕府。元禄時代。この時代に起きた事件を基に言い伝えられた日本を代表する怪談物語。

本作『四谷怪談 お岩の亡霊(1969年)』に登場するお岩の亡霊は、まさに現代のJ・ホラーを代表する貞子、伽椰子らの元祖だろう。ジャパニーズ・ホラー界の元祖アイドル的存在だ。この機会にぜひ、恐ろしいお岩を堪能したいものだ。


(C)KADOKAWA1968

映画『怪談雪女郎(1968年)』
監督:田中徳三 出演:藤村志保、石浜朗、長谷川待子、内藤武敏、鈴木瑞穂

あらすじ:本作『怪談雪女郎』は、日本の古くから伝わる恐怖の怪談噺『雪女伝説』を大胆にもアレンジした耽美的怪奇ロマンだ。

真っ白で綺麗な雪女の顔が、唐突にも見るも恐ろしい面向きに変わる女の妖怪。ある雪が吹雪く深い夜、老仏師とその弟子の与作は、山小屋にて雪女に襲われてしまう。

老仏師の命を奪った雪女郎を見た与作は、誰にも言わないと秘密を共有させられる。時が過ぎ春、彼の家に一人の美しい小娘が訪ねてくる。

ひと言レビュー:映画『四谷怪談 お岩の亡霊』と同様、日本古来の都市伝説「雪女伝説」を大幅にアレンジした本作は、怪奇ロマンの位置付けだ。

先程も『四谷怪談』のお岩が、元祖J・ホラーのアイドル的存在と話したが、本作の主題となっている「雪女」は、元祖J・ホラー界のクイーンだ。

彼女達の存在があるからこそ、貞子・伽椰子達が輝くのだ!


(C)KADOKAWA1968

映画『牡丹燈籠(1968年)』
監督:山本薩夫 出演:本郷功次郎、赤座美代子、小川真由美、西村 晃、志村喬

あらすじ:遠くからカランコロンと下駄の音をさせながら、小美しい遊女がある日、長屋を訪ねる。

浪人・萩原新三郎は、遊女・お露の境遇に哀れみ、輿入れの真似をする。その晩から毎夜、彼女は男の長屋を訪ねるが、彼女は実は幽霊だったのだ。

落語家の三遊亭円朝の名作怪談噺を、あの社会派の映画監督、山本薩夫が大胆に映画化した意欲作だ。

ひと言レビュー:女の哀しみを纏った心悲しき幽霊が、男の優しさを頼って夜な夜な男の胸に身を寄せる。如何に、女性としての儚さを描いたクラシカルなロマンス・ホラー。


(C)KADOKAWA1960

映画『怪談塁が淵(1960年)』
監督:安田公義 出演:中村鴈治郎、中田康子、北上弥太朗、浦路洋子、三田登喜子

あらすじ:因果報応とは、まさにこの事!親の不幸が、子に返る。貧乏旗本・新左衛門は、借金の催促に来た針医・宗悦を刺殺してしまう。

死体を棄てた後、発狂した新左衛門は、情婦の女、おくままでも殺してしまう。三遊亭円朝の名作怪談噺「真景累ケ淵」の5度目の映像化作品。

ひと言レビュー:借金苦を背景に、殺人を犯した男の数奇な末路を描いた怪談映画。

累ヶ淵とは、茨城県常総市にある地名。江戸時代、この地では、累という女性の怨念と除霊を巡る都市伝説が広く知れ渡っている。その伝説を物語にした本作は、女の無念を描く恐怖映画だ。


(C)KADOKAWA1961

映画『怪談蚊喰鳥(1961年)』
監督:森一生 出演:船越英二、中田康子、小林勝彦、丹羽又三郎、丸凡太

あらすじ:江戸の下町。菊次は、年下の孝次郎にお熱だった。ここ数年、痣の残る按摩辰の市は菊次に恋慕の情を抱いていた。

ある日、辰の市に瓜二つの徳の市が現れ、兄である辰の市は菊次に恋焦がれたあまり、死を選んだと伝える。

しかし、孝次郎が徳の市を金ヅルとして利用し始めてからというのも、徳の市に不運が訪れる。こうなったのも、兄の辰の市の亡霊のせいだと追い詰められる。文芸怪談映画「不知火検校」の名作戯曲の映画化。

ひと言レビュー:本作には、昭和の名脚本家の橋本忍が、構成・監修として参加していることにも注目したい。

また、船越英一郎の父親、船越英二が初めて時代劇の主演を務め、兄弟二役を難役を演じている点にも注目したい。男と男の金と愛欲に塗れた歪な世界を描いた文芸怪談映画だ。


(C)KADOKAWA1966

映画『大魔神(1966年)』
監督:安田公義 出演:高田美和、青山良彦、藤巻潤、五味龍太郎、遠藤辰雄

あらすじ:少女の一滴の涙!大魔神、覚醒す!戦国時代、丹波での祭りの夜、大館左馬之助と彼の仲間は寝返る。

親を惨殺された幼き姉弟の忠文と小笹は、巫覡の信夫と一緒に狼谷の巌窟に潜み、成長する。この山では、巨大な魔神を封緘した大形の戦士像が祀られていた。

災害時には、護ってくれるという伝説が、まことしやかに囁かれていた。悪の勢力に悩まされていた領民たち。一人の少女小笹が祈ると、それに答えるように巨人兵が、目を覚ます!

ひと言レビュー:特撮時代劇という当時としては、まったくもって新しいジャンルを切り開いた本作。音楽担当には、初代の『ゴジラ』を作曲した特撮音楽の巨匠、伊福部昭が参加。

シリーズを通して、全作彼が担当している点にも着目したい。ラストの魔神が目覚める場面は、特撮映画屈指の名場面。


(C)KADOKAWA1966

映画『大魔神怒る(1966年)』
監督:三隅研次 出演:本郷功次郎、藤村志保、丸井太郎、内田朝雄、神田隆

あらすじ:時は戦国の世。名越一族と千草一族は、両者平和に暮らしていた。ある日、彼らは予想外の事態の侵攻に相対する羽目になる。

隣の国の領主御子柴弾正が、千草一族を、次に名越一族を滅ぼし、平和に暮らしていた領地を奪ってしまう。渦巻く湖面をぶった切り、𠮟する大魔神が再び降臨する!

ひと言レビュー:弱き農民たちが、勢力を伸ばした上級農民たちの悪事に身を滅ぼす姿を描く。今回もまた、スコア担当の伊福部昭氏の作曲力に心酔いしれる。

一度は誰もが聞いた事ある『ゴジラ』の楽曲に似ている本作の劇中曲。勧善懲悪の物語にも、気持ちが晴れやかになる。


(C)KADOKAWA1966

映画『大魔神逆襲(1966年)』
監督:森一生 出演:二宮秀樹、堀井晋次、飯塚真英、長友宗之、山下洵一郎

あらすじ:残忍非道な君主の元、強制労働をさせられていた多くの村人たち。彼らのために、四人の子供たちが立ち上がる。

主君側の追跡者から逃げつつ、禁足地の山に向かう幼子たち。道中、四人の子供のうち一人が、命を落としてしまう。遂に、山々の神、武神像が目を覚ます。

ひと言レビュー:「大魔神」シリーズ第三弾にして、最終章。最後を飾る本作では、幼い子供たちが活躍する。

山を登り、川を渡る。暴君による暴力によって苦しめられる農民を救うための行動。お子の涙で大魔神が目覚める設定だが、観る側の心までをも突き動かされる特撮系感動巨篇だ。


(C)KADOKAWA1965

映画『大怪獣ガメラ(1965年)』
監督:湯浅憲明 出演:船越英二、姿美千子、霧立はるみ、山下洵一郎、内田喜郎

あらすじ:エスキモーの伝説的怪獣「ガメラ」が覚醒する!北極海上にて、原爆を搭載した身元不明の飛行機が、米軍によって襲撃される。

氷山に撃沈した不明機は爆発し、氷山で眠っていた巨体亀怪獣ガメラが目を覚ます。俊夫少年との交流も描く心温まる怪獣映画だ。大映映画が誇る記念すべきシリーズ一作目。

ひと言レビュー:本作『ガメラ大怪獣』は、日本が誇る特撮映画『ゴジラ』と並ぶ世界的人気がある怪獣映画のデビュー作だ!

ガメラによって都市が破壊されるのを防ぐため、大人たちが立ち上がる熱き骨太なアクション映画だが、一方で子供と怪獣の関係性を描くことを忘れていない。

子供と生き物の友情は、まるで洋画『フリー・ウィリー』やアニメ劇場版『ドラえもん』シリーズをも、彷彿とさせる。


(C)KADOKAWA1966

映画『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン(1966年)』
監督:田中重雄 出演:本郷功次郎、江波杏子、早川雄三、藤山浩二、北原義郎

あらすじ:ガメラが蘇る!今度の敵は、冷凍液を吐く怪物バルゴン!関西の大都市を巨大怪獣が、襲いかかる。

大阪、神戸、琵琶湖の上空や水中で大乱闘!バルゴンは、海外から密輸されたオパールの宝石に赤外線が当たり、誕生する!大阪城を挟んで対峙するガメラとバルゴンの姿を描く。

シリアス路線のドラマが展開される大人向けアダルティックな特撮映画!

ひと言レビュー:着ぐるみの中に入るスーツアクター、若手スタッフの苦労が、手に取るようにわかる力作だ。

本作『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』は、シリーズ二作目。この作品では、舞台を関西に変更して、日本の第二の都市、大阪を中心にバルゴンが襲撃する物語。

エンドクレジットの構成も渋く、スコア担当は木下惠介の弟、木下忠が関わっている点にも興味がそそられる。


(C)KADOKAWA1967

映画『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス(1967年)』
監督:湯浅憲明 出演:本郷功次郎、笠原玲子、丸井太郎、北原義郎、上田吉二郎

あらすじ:64年の東京オリンピック後、70年の大阪万博前夜の高度経済成長真っ只中の67年の日本を背景に、巨大怪獣の戦いを描く。

口から超音波を発するギャオスに苦節するガメラ。富士火山の異様な活発で目覚めた怪物ギャオスの驚き慄く。

殺人音波を武器に戦うギャオスと火炎噴射で対抗するガメラの戦いが今始まる。

ひと言レビュー:前作から徐々に徐々に、製作陣は知恵を搾って、敵対する怪獣たちの特徴を設定しようとしているのが、手に取るように分かる。

観客を飽きさせないようにと、シリーズを追うごとに、一風変わった怪物が、とても奇妙な技を繰り出してくる。

本作では、「口から超音波」という斜め上行くような設定が微笑ましく感じる。この辺りから、拍車をかけて変テコな怪獣たちが登場するのも、シリーズ全体を通しての見どころだろう。


(C)KADOKAWA1968

映画『ガメラ対宇宙怪獣バイラス(1968年)』
監督:湯浅憲明 出演:本郷功次郎、八重垣路子、渥美マリ、八代順子、北原義郎

あらすじ:ボーイスカウトに所属する二人の少年、正夫とジム。彼らは潜水艇に乗り込み、海中でバイラスの宇宙船が放った「スーパーキャッチ光線」に当たり囚われの身となる。

子供好きなガメラは、地球征服を目論んだバイラスによって、体内に脳波コントロールを埋め込まれ、大都市を破壊し始める。

少年二人の命と引き換えにして、我々人類は地球を守れるのか?前シリーズまで、陸海空で熾烈な争いを繰り広げたガメラだが、今作では遂に宇宙空間にまで飛び出してしまう。シリーズ第4作目。

ひと言レビュー:4作目にまでになると、とうとうネタ切れも露見し始め、ガメラがまさかの宇宙遊泳するというトンデモ展開が見受けらるが、これが正しく本作の魅力なのだろう。

また、主題歌『ガメラ・マーチ』が積極的に使用され、本作から子供たちが主人公のストーリーが展開される。ガメラがゴジラと並ぶ特撮ヒーローの象徴となりつつある。

そして、毎年恒例の「春休み映画」の様相が、この作品から形成されているのが、よく分かる。


(C)KADOKAWA1969

映画『ガメラ対大悪獣ギロン(1969年)』
監督:湯浅憲明 出演:加島信博、秋山みゆき、クリストファ・マーフィ、大村崑、イーデス・ハンソン

あらすじ:裏山に突然現れた宇宙船に勝手に乗り込んだ少年たち。太陽を挟んで、地球とは真反対の第10惑星テラに到着。

そこには、頭がナタのようになっている怪獣ギロンと過去の怪獣ギャオスが戦う姿を目撃する。新怪獣ギロン、宇宙怪獣ギャオス、そして子供たちのヒーロー、ガメラの三つ巴の激戦が、幕を開ける。

ひと言レビュー:とうとう舞台は、地球から宇宙へ。日本の子供たちが、第10惑星テラへと降り立つという驚きの展開が、構成されるシリーズ第5作。

本作から外国人の子供が、日本の子供と活躍するという、今までの特撮映画では考えられない設定が、用意されている。徐々に徐々に国際色豊かな作品として昇華されていく。


(C)KADOKAWA1970

映画『ガメラ対大魔獣ジャイガー(1970年)』
監督:湯浅憲明 出演:高桑勉、ケリー・バリス、キャサリン・マーフィ、炎三四郎、平泉征(成)

あらすじ:大阪万博で湧く1970年。ウェスター島の石像・悪魔の笛が、当会場で展示されることに。

だがしかし、展示されていた石から大魔獣ジャイガーが蘇る。ジャイガーの復活を知ったガメラが、再び立ち上がる。本作では、少年たちがガメラの体内で活躍する作品に仕上がっている。

ひと言レビュー:70年に日本全国で話題が沸騰した大阪万国博覧会を作品の目玉に持って来たシナリオの構成は、秀逸。

映画は時代を読み取るものだが、本作ではこの要素が遺憾無く発揮している。万博にちなんだ「日本」を飛び越えた設定が、本作の見どころ(映画『トランス・フォーマー 最後の騎士王』の設定に似ている)。

また、子供たちが、ガメラの体内に入り込む物語は、まるでSF映画の金字塔『ミクロの決死圏』のようだ。本作では、前作にも増してグローバルな配役が、目立つようになっている。


(C)KADOKAWA1971

映画『ガメラ対深海怪獣ジグラ(1971年)』
監督:湯浅憲明 出演:坂上也寸志、グロリア・ゾーナ、アーリン・ゾーナ、坪内ミキ子、藤山浩二

あらすじ:公害汚染された惑星を捨て、地球に移住しようとジグラ星人が、少年たちを捕らえようとする。

ガメラが、何とか彼らを救い出し、事なきを得る。そして、子供らが警告したことで、鴨川シーワールドにてジグラ星人対策本部を設置するが…。永田大映の最後のガメラ・シリーズ。

ひと言レビュー:本シリーズは、高度経済成長期の時代を背景に、新幹線開通、高速道路建設の事案が、作品に社会性を与えていた。

また、本作では同年5月にチリで起きた大地震、アンカシュ地震も要素に盛り込み、単なる怪物映画にはせず、社会的メッセージも垣間見える。

この作品で大映映画としての「ガメラ」は、終演を迎える。映画会社の倒産という事実は、斜陽産業となりつつあった映画業界に大きな衝撃を与えた。

この会社で映画監督として活躍していた湯浅憲明は、あまりのショックで、自身が撮影で使用していた小道具などを、破壊したという事実は有名な話。

会社に対しても、自らが生み出した「ガメラ」に対しても深い愛情があったのかもしれない。最後に、本作の有終の美を見届けたい!


(C)KADOKAWA1980

映画『宇宙怪獣ガメラ(1980年)』
監督:湯浅憲明 出演:マッハ文朱、小島八重子、小松蓉子、前田晃一、工藤啓子

あらすじ:全宇宙の支配を画策する宇宙海賊ザノン号とギルゲ。歴代の悪獣ギャオス、バルゴン、ギロンら6大怪獣を呼び起こす。

地球人は、都市を次から次へと破壊する大怪獣たちに為す術もない。一方、地球を守っている平和星M-88の超人ウーマン三人が、ガメラを超能力で起こそうとする。徳間グループ時代の大映時代の映像とVHSの画像を合成して作成したガメラ復活版作品だ!

ひと言レビュー:前作からおよそ9年ぶりのシリーズ復活作。大映映画が倒産後、過去のシリーズで携わったスタッフ達が再集結し、製作した本作。

『ガメラ』シリーズを生み出した立役者である湯浅憲明監督の勇姿を肌で感じたいものだ。また、物語は一作目『大怪獣ガメラ(1965年)』を彷彿とさせる、子供とガメラの友情が描かれている点で言えば、本作は原点回帰していると言えるだろう。


(C)2006「小さき勇者たち ~ガメラ~ 」製作委員会

映画『小さき勇者たち~ガメラ~(2006年)』
監督:田崎竜太 出演:富岡涼、夏帆、津田寛治、寺島進、奥貫薫

あらすじ:伊勢志摩にある小さな漁村で暮らす父子家庭の少年透が、海岸で偶然発見した奇妙な卵から赤ちゃんカメが生まれる。

少年がそのカメにトトと名付け、驚く速さで成長してしまう。

本作は、従来のガメラとはまったく違うアプローチで製作された新ガメラ・シリーズの最後の作品。平成ガメラ三部作が公開された後に、改めて角川ヘラルドによって作られた映画。

ひと言レビュー:1966年に初期作品『大怪獣ガメラ』が公開されて以降、40数年が経ち、90年代には「平成ガメラ三部作」として『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神覚醒』が製作された。

99年の最終作公開後、2006年に本作が誕生した。終始描かれるのは「少年と生物」の不思議な友情物語だ。初代『大怪獣ガメラ』や80年の再編集版『宇宙怪獣ガメラ』を想起させる子供とガメラの関係性が、本作の魅力でもある。

やっぱりガメラは、この物語でないと、と思わせる設定に納得。今年、本作が公開されてから25年。

あと数年すれば、ガメラ生誕60年という節目を迎える。そろそろ「令和ガメラ」の誕生を待ちわびたいところだ。


(C)KADOKAWA1961

映画『釈迦(1961年)』
監督:三隅研次 出演:本郷功次郎、勝新太郎、市川雷蔵、山本富士子、チェリト・ソリス

あらすじ:2500年前のインド北方。その地の王家に生まれたシッダ太子は、市民の苦しみを知った上で苦悩する。

彼は、悟りを追求するあまり、妻と故郷を捨てて、旅に出る。欧米が生み出した70ミリ映画(恐らく映画『スパルタカス』や『キング・オズ・キングス』)に対抗し、製作した日本初のスーパーテクニラマ方式の70ミリ超大作。響き渡るように崩落する大神殿の場面は、見ものだ!

ひと言レビュー:インドの仏陀の生涯を日本風に描いた歴史スペクタクル映画。

洋画『クレオパトラ』や『スパルタカス』を連想させる歴史絵巻に仕上げている。または、現代で言うインド映画『バーフバリ』の位置付けとして考えてもいいだろう。

話変わって、映画は特に、現場を取り仕切る監督が注目を浴びがちだが、本作では脚本家と美術監督に目を向けてみたい。

日本にはあまり縁のない東洋の国「インド」の歴史伝来を、大胆にも脚本としてアレンジしたのは、日本が誇る脚本家、八尋不二だ。

彼は日本映画の黎明期サイレント期から活躍するベテランの脚本家だ。そんな彼が豪快に書いたシナリオが、本作を面白くさせている。

また、作品で最も注目したいのが、セットの美術だ。仏陀が暮らすインドの神殿を絢爛豪華に作り上げた建造物は、本作の最高の見どころだ。このセットを作ったのが、美術監督の内藤昭だ。

映画『大魔神』『大魔神怒る』『怪談雪女郎』など、本特集の映画にも参加している大ベテラン。また、80年公開の日本映画屈指の傑作『泥の河』のうどん屋のセットが、芸術的だ。監督の三隅研次と彼ら二人は、この時代の日本映画界を牽引した伝説的人物。

多くの名作に関わったクリエイターだからこそ、本作は一級品の史劇映画として観応えがある。


(C)KADOKAWA 1958

映画『日蓮と蒙古大襲来(1958年)』
監督:渡辺邦男 出演:長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、林成年、淡島千景

あらすじ:日蓮は、鎌倉幕府の迫害に耐え、救世済民を渇望し南無妙法蓮華経」のすべてを賭け布教を続け、異国侵略を予言し「吾れ今日より日本の柱とならん!日本の眼目とならん!」と宣誓する。

以前からの警告通り、日本制覇を策する蒙古軍が博多湾に詰め寄る中、日蓮は脇目も振らず政敵の屈服を祈り続ける。日本史をドラマティックに改編した歴史大活劇。

ひと言レビュー:そもそも、蒙古軍とは一体何か?それは、遡ること1266年(文永3年)、日本に旧モンゴル帝国から届いた手紙に起因する。

その手紙をきっかけとして、元寇(蒙古軍)が2度にわたり襲来して来た。「文永の役」と「弘安の役」だ。その時、襲ってきたのが、蒙古軍と呼ぶ。

また、作中では、「南無阿弥陀仏」の日蓮宗か、「南無妙法蓮華経」の浄土宗派かで派閥が別れる構図は、ほぼ宗教を全面に押し出した作品となっており、今の時代に作るには難易度の高い題材でもある。

過去にあった歴史を超大作の作品として大胆に置き換えたシナリオは、逸品だ。

この映画の脚本を書いたのもまた、八尋不二だ。彼の存在が、いかに日本映画界に必要だったかよく分かるほど、作品は完成度が高い。


(C)KADOKAWA1960

映画『大江山酒天童子(1960年)』
監督:田中徳三 出演:長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、本郷功次郎、山本富士子

あらすじ:平安時代の末期、藤原道長から妖怪退治を任命された源氏の大将こと源頼光は大江山にいる妖怪達の首領(ドン)である酒天童子を殺すことを心に誓う。

丹波国と丹後国の境にある大江山に伝えられる鬼の都市伝説を大胆にもアレンジした大映版特撮歴史ロマン映画。

ひと言レビュー:本作『大江山酒天童子』は、『釈迦』と『日蓮と蒙古大襲来』と同様、八尋不二が脚本家として作品に参加している点に目がいく。

八尋だからこそ、現代風に改編された特撮歴史映画は、見事なまでに観応えがある。ただ、今回は作中に登場する衣装について軽く言及したい。

本作の終盤にかけて、作品内で目立ってくるのはキャストたちが着る衣装だ。時代や都市伝説を背景にした装いは、心を鷲掴みにされるはずだ。

この作品での衣装を担当したスタッフを調べたところ、ネットのサイトでは一切名前が表記されておらず、作中に流れるスタッフ・クレジットで確認してみると「中野芳生」という人物に突き当たった。

彼は、現場に精通した人物ではなく、大映映画の社員であった。でも、50年代から60年代に衣装考証人として業界で名を馳せている。ここに(1)面白い記事を見つけたので、一部抜粋して記載する。

「1959年、監督六年目の三隅は、自分の映画製作スタイル・・独自の映像美を築き上げてきていた。『千姫御殿』で三隅は衣装考証に上野芳生を迎える。上野の衣装考証家としての名声は高まっており、衣笠、溝口以外にも多くの映画で招かれ、京都衣装の社員というよりは、衣装や風俗の考証家として名を成していた。三隅が羨み『上野さんの、あの知識才能を盗まねば・・』と言うほどである。

平社員でありながら、当時の映画業界において、とても尊敬され、重宝された人物だ。まったく名前を知られていない人ではあるが、この作品を通して「中野芳生」の才能溢れる仕事ぶりを堪能したいものだ。

(1)一部抜粋:留旦の思い出し日記
「色彩時代劇(その11)衣笠この一本」の第三段落の9行分http://micknodiary.blog.fc2.com/blog-entry-87.html?sp(2021年10月23日)


(C)KADOKAWA1962

映画『鯨神(1962年)』
監督:田中徳三 出演:本郷功次郎、勝新太郎、藤村志保、江波杏子、志村喬

あらすじ:鯨は俺が倒す!明治時代初期の九州にある小さな漁村。鯨神と人々がそう呼ぶ巨大鯨に父も兄も襲われた若漁師。

自らの手でその鯨神を破ると心に誓う。名も無き漁村の民の視点から、鯨を恐怖の象徴として描く冒険スペクタクル映画。

ひと言レビュー:物語は、アメリカ文学を代表するハーマン・メルヴィルの代表作『白鯨』を丸々日本に置き換えたような作品。

分かりやすく言えば、スピルバーグの代表作『ジョーズ』の構成にもよく似ている。

本作には原作があり、宇野鴻一郎の芥川賞受賞小説『鯨神』を土台に、実物大モデルの模型クジラを使用して特撮撮影された。

脚本には、新藤兼人が参加しており、市井の人間の声なき声に焦点を当てたシナリオは秀逸。単なる『白鯨』にはせず、市民たちのやり場のない怒りを表現した物語は、心奪われる。


(C)KADOKAWA1956

映画『宇宙人東京に現わる(1956年)』
監督:島耕二 出演:苅田とよみ、川崎敬三、八木沢敏、見明凡太郎、南部彰三

あらすじ:城北天文台の磯部は、ある夜、雲の切れ間に奇妙な形をした不思議な発行現象を確認する。

その一方で、謎の物体と軟体人間の目撃情報が流れる。その後、世界のあらゆる場所で、UFOの目撃が相次ぐ。遂に、ヒトデ型パイラ星人の宇宙人が、大都会東京を襲い出す!恐怖に戦く人々の姿に戦々慄々するはずだ!

ひと言レビュー:ヴィジュアルはまさに、アメリカの特撮映画を代表する巨匠レイ・ハリーハウゼンそのものだ。

彼の特定の作品からフューチャーされている訳では無いが、恐らくアメリカの特撮技術の影響は、大いに受けていることだろう。

物語も宇宙人侵略ものであるので、ヴィジュアル面だけでなく、ストーリー面でもハリウッドのSF侵略モノから着想を得たのは、確かだろう。

それでも、この作品で最も注目すべきは、日本初の本格的カラー空想特撮映画ということだ。

(C)KADOKAWA1968

映画『蛇娘と白髪魔(1968年)』
監督:湯浅憲明 出演:村井八知栄、高橋まゆみ、平泉征(成)、浜田ゆう子、北原義郎

あらすじ:孤児院めぐみ園で育った小百合は、離れ離れになっていた彼女の両親と再び出会い、南條家に引き取られる。

しかし、小百合の父親の海外への出張と同時に、彼女の周囲で立て続けに奇々怪々な怪奇現象が、襲い始める。屋根裏部屋から白髪の老婆!彼女の姉の手は冷たく、彼女のベッドには蛇のようなウロコが!

昭和の時代に、人々を恐怖のどん底に陥れた楳図かずおのホラー漫画を鮮麗に映像化。

ひと言レビュー:本作『蛇娘と白髪魔』で最も言いたいのは、「人間の真の美しさは、心の問題」というところだ。とてもありふれたメッセージではあるものの、人として一番持っておきたい性質だろう。

ただ、タイトルから連想されるのは、「時代劇」の印象。しかし、作品そのものは、現代を舞台にしたホラーだ。

さらに、作品全体の佇まいは、少し古風な雰囲気を嗅ぎつける。現代風でありながら、古臭さを醸し出しているのは、監督自身の演出の手腕があるからだろう。

本作を製作したのは、『ガメラ』シリーズを担当した湯浅憲明監督ということを忘れてはならない。彼が「ガメラ」以外の作品を堅実に作れることに驚きだ。


(C)KADOKAWA1957

映画『透明人間と蝿男(1957年)』
監督:村山三男 出演:北原義郎、叶順子、品川隆二、毛利郁子、伊沢一郎

あらすじ:完全密室殺人事件は、上空にいる旅客機の中で起きた!大都会の東京を恐怖に陥れる奇怪な事件の数々。

被害者は皆、白昼の繁華街か、密室で殺害された者ばかり。ただ、手がかりと言えば、おかしな羽根の音のみ。連続殺人の捜査に身を乗り出すことになった科学者の月岡。

彼は捜査協力のために透明光線を浴び、透明人間になる。また犯人が、自身の体を縮めた蝿男だと知る。殺人を繰り返す巨悪蝿男対透明人間として事件を捜査する科学者の格闘が展開される。

ひと言レビュー:タイトルの『透明人間と蝿男』と聞くと、恐らく洋画の大作映画を思い出すだろう。例えば、ジョン・カーペンターによる『透明人間(92年)』やデヴィッド・クローネンバーグによる『ザ・フライ(86年)』など。

でも、その起源は旧い。「透明人間」は、1897年にH・G・ウェルズが発刊した小説『透明人間』を1933年に映像化している。

また、「蝿男」を題材にした小説は、イギリス国籍のフランス語作家ジョルジュ・ランジュランによる短編『蝿(65年)』を映画化した『ハエ男の恐怖(58年)』が、有名だ(続編もある)。本作『透明人間と蝿男』は、これらの作品から着想を得て、製作したのだろう。

本作を監督した村山三男は、遺作(映画のみ)として1974年に公開された映画『樺太1945年夏 氷雪の門』を製作していることにも注目したい。


(C)関西テレビ放送・徳間書店・KADOKAWA

映画『首都消失(1987年)』
監督:舛田利雄 出演:渡瀬恒彦、名取裕子、山下真司、石野陽子、大滝秀治

あらすじ:ある夏の日の朝。突如として、首都東京が、気がつけば高さ2キロ、半径30キロの謎の深い霧に覆われる。

濃霧が原因で、すべての通信電波は途絶え、交通手段すらも止まってしまう。

首都東京を失ってしまった日本は、甚大な非常事態に遭遇する。首都を失った国民たちの反応を丁寧に描写した苦心惨憺のSFドラマだ。

ひと言レビュー:1987年に公開された小松左京原作のSF映画。監督は、舛田利雄。音楽には『アラビアのロレンス』のモーリス・ジャールが参加。

出演には、渡瀬恒彦や名取裕子、山下真司など、当時としては豪華な配役ばかり。巨額の製作費を投入し、映画会社としても相当力を入れていただろうと分かる本作。

この年の一種の目玉映画だったに違いない。原作は、SF作家の権威として知られる小松左京の作品。小説家としては、預言者的な立ち位置の彼。

1964年に書き下ろされた『復活の日』は、コロナのパンデミックを予見していたような作品だ。

また、本作『首都消失』では、「濃霧」を「地震」に切り替え考えた時、近年発生している巨大地震時における、首都東京の交通機関麻痺による帰宅難民者の増加など「首都を失った国民たちの反応」が、まさに現実の風景と被る。

作者小松左京は、この作品でも未来を予知していたのだろうか?小説や映画が、創造の世界を飛び越えて、実際に現実で起きた時、作品世界自体が現実味を帯び、説得力を持たせる。


(C)KADOKAWA1963

映画『風速七十五米(1963年)』
監督:田中重雄 出演:田宮二郎、叶順子、宇津井健、高松英郎、浜田ゆう子

あらすじ:大型の巨大台風が、日本を襲う。そんな危険な暴風雨の危険性を訴え、新聞記者の田村が警告を出したにも関わらず、銀座の街に巨大な広告ネオンが建設される。

台風が頻繁に上陸する日本で、巨大広告塔建設の危険度や是非を巡って、人間たちが衝突する姿を描いた人間ドラマだ。

ひと言レビュー:「台風」は「地震」と同様に、日本にとっては切って切れない災害だ。過去には、「伊勢湾台風」を初めとする、甚大な被害をもたらした台風災害がたくさんある。「枕崎台風」「室戸台風」「カスリーン台風」など。

近年では、西日本豪雨と呼ばれる2018年7月豪雨や平成30年台風第21号もまた、記憶に新しい。

そんな台風大国日本が、自然災害を題材にした作品を製作するのは、必然のことだろう。また、 日本風のスペクタクルで、天文学的なディザスター映画を令和版として観たいものだ。


特集上映『妖怪・特撮映画祭』は、現在、大阪府のシネ・ヌーヴォにて絶賛、上映中。京都府では、アップリンク京都にて近日公開予定だ。また全国の一部劇場にて、公開中だ。