映画『天使にラブ・ソングを…』今年で公開30周年。名作映画は色褪せない。

映画『天使にラブ・ソングを…』今年で公開30周年。名作映画は色褪せない。

2022年1月7日

映画『天使にラブ・ソングを…』

(C)Touchstone Pictures &(C)Buena Vista Pictures. All Rights Reserved

今更、この作品を取り上げるのも些か、恥ずかしい局面もあるのだが、本作『天使にラブ・ソングを…』は今年で1992年の全米公開から30年が経とうとしている(国内公開は1993年4月)。

月日が経つのをとても早く感じるが、これまでの長い期間、多くの人々に愛され続けている作品があるのも、稀有な存在だ。

30年経った今でも、まったく色褪せずに何度もリバイバル上映されてきた作品があるのだろうか?もしあっても、その数は少ないだろう。

本作は、その数少ない映画のひとつに入れても問題ないほど、作品としてのクオリティは高い。

「Sister(修道女)」が、歌って踊る物語なんて、これから先、産まれることはないだろう。

90分という上映時間の間に、主人公と聖歌隊との友情や成長を、万人の人が共に共感できるシナリオの構成は、今観ても秀逸だ。

(C)Touchstone Pictures &(C)Buena Vista Pictures.
All Rights Reserved

本作の公開当時は、話題が話題を呼んで、多くの人間が劇場へと足を運んだ。

全米では半年間のロングランヒットを飛ばしたのは、有名な話。

監督は奇しくも、この作品を発表後に若くしてAIDSのため亡くなったエミール・アルドリーノ。

他の代表作には、映画『ダーティ・ダンシング』がある。音楽を主題にした作品に定評のある監督だ。

また、主演には言わずもがな、ウーピー・ゴールドバーグ。本作で人気は決定的なものになり、全米を代表するドル箱スターへと成長する。

今回、日本独自の特集上映「午前十時の映画祭11」にて上映される作品は、運営委員会の方々が多くの方に本作に触れて欲しいという願う気持ちからで、その想いが本作品の選定に結びついたのだろう。

それは、大いに共感できることだ。今まで多くの作品を観てきたが、この作品ほど映画的な映画はない。

今、改めて観返してみても、衰えることの無い「感動」を味わえることができる。

作品は、コメディの要素のみならず、ミュージカル映画としても、音楽映画としても、主人公同士の成長物語、または修道女たちの友情物語としても、あらゆる側面に触れながら、楽しめる作品として仕上がっている。

一本の映画の中にあらゆるジャンルが、集結した作品としてエンターテインメント性が高いと判断できる。

本作は、アメリカ映画史上、唯一無二の存在だ。

(C)Touchstone Pictures &(C)Buena Vista
Pictures. All Rights Reserved

本作『天使にラブ・ソングを…』には、多くの撮影秘話やエピソードが、存在する。

長年の間、語り尽くされた作品だからこそ、多くの撮影秘話や逸話が残っていてもいいだろう。

ここで、ほんの少しだけ紹介する。

‘Screenwriter Paul Rudnick wrote the original script back in 1987 and Bette Midler was supposed to be cast for the role of Deloris. After Midler had left the project, the script underwent several re-writes by screenwriters Eleanor Bergstein, Nancy Meyers, Jim Cash, Jack Epps, Jr., and Robert Harling. As Rudnick did not consider the final draft of the movie as his own work, the pseudonym “Joseph Howard” was chosen by him after his own suggestion for the writer’s credit (“Screenplay by Goofy”) had been rejected.’

「脚本家のポール・ラドニックは1987年にオリジナルの脚本を書き、ベット・ミドラーはデロリスの役に出演することになっていた。諸事情でミドラーがプロジェクトを去った後、脚本にはエレノア・バーグスタイン、ナンシー・マイヤーズ、ジム・キャッシュ、ジャック・エップス・ジュニア、ロバート・ハーリングによって何度か書き直された。ラドニックは映画の最終ドラフトを自分の作品とは認めなかった。脚本家としてのクレジットに関し、すべてにおいて拒否した。その結果、作品のクレジットには、仮名「ジョセフ・ハワード」を採用。」

この一文には、多くの逸話が隠されており、シナリオ自体は作品が公開される5年ほど前から存在していたとされている。また、主役はウーピー・ゴールドバーグではなく、ベット・ミドラーだったと言う。降板後には、多くの脚本家や関係者によって、シナリオは書き直され、それを知った脚本家ポール・ラドニックは、クレジットから除名を表明(当然の流れと言えば、当然の流れでもある)。

‘While Paul Rudnick was writing the screenplay, Bette Midler (who was attached to star at the time) suggested he should go to an actual convent to do research. So he went to stay in the Regina Laudis Abbey in Bethlehem, Connecticut. The Prioress of this convent was Mother Dolores Hart, O.S.B., who as a younger woman had been an actress, singer, and dancer in such Hollywood movies as the Elvis vehicle King Creole (1958) and the beach romance Where the Boys Are (1960).’

「ポール・ラドニックが脚本を書いている間、ベット・ミドラー(当時スターに愛着を持っていた)は、研究を行うために実際の修道院に行くべきだと提案した。彼はコネチカット州ベスレヘムのレジーナラウディス修道院に滞在。この修道院の責任者は、マザー・ドロレス・ハート。彼女は若い女性として、エルビス・プレスリーの主演の映画『闇に響く声(1958)』や『ボーイハント(1960)』などのハリウッド映画で女優、歌手、ダンサーを務めた人物。」

まさに、本作の主人公デロリス・ヴァン・カルティエ/シスター・メアリー・クラレンスは、マザー・ドロレス・ハートから着想を得たことを忘れてはいけない。実在した人物から、この作品が産まれた。

‘Because many scenes were shot in Reno, the cast members would often stay in their nun outfits and wander off the set to pull some pranks at the casinos, bars, clubs, and strip clubs. Kathy Najimy and Wendy Makkena tell a story that they once ordered wine and fries to their hotel room and answered the door in their nun outfits while loud porn was playing on the television just to mess with the hotel staff.’

「多くのシーンがリノで撮影されたため、キャストメンバーは尼僧の衣装にとどまり、カジノ、バー、クラブ、ストリップクラブでいたずらをするためにセットをさまよった。キャシー・ナジミーとウェンディ・マッケナは、ホテルのスタッフを混乱させるためにテレビで大音量のポルノが再生されているときに、かつてホテルの部屋にワインとフライを注文し、修道女の衣装でドアに答えたという。」

主演のキャシー・ナジミーとウェンディ・マッケナが、撮影期間中に悪ふざけをていたという、少し笑えるエピソード。

‘Whoopi Goldberg hired Carrie Fisher to re-write her dialogue, which led to many arguments with Disney executives. Fisher later told Goldberg, “You’re getting into a pissing contest with people who have actual dicks.”‘

(C)Touchstone Pictures &(C)Buena Vista Pictures.
All Rights Reserved

「ウーピー・ゴールドバーグはキャリー・フィッシャーを雇って彼女の会話を書き直し、それがディズニーの幹部との多くの議論につながった。」

主演のベット・ミドラーや脚本家のポール・ラドニックがプロジェクトから離脱した後に、映画『スター・ウォーズ』でレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーが、脚本協力していたことを知らなかった。有名な話かも知れないが、彼女は女優兼シナリオ・アドバイザーだという。

‘The Rolling Stone Magazine cover shown during the closing credits is real.’

「エンド・クレジットで表示されるローリングストーン・マガジンの表紙は、すべて本物。」

作品の最後の最後まで、目が離せない演出は、この時代から始まったのだろうか?この手法は、一体どの映画が出発点なのか、気になるところだ。

‘One of the neighborhood teenage girls was played by Desreta Jackson, who played the young version of Celie, Whoopi Goldberg’s character in The Color Purple (1985).’

「近所の10代の少女の一人は、カラーパープル(1985)でウーピー・ゴールドバーグの幼少期のセリー役を演じたデスレタ・ジャクソンによって演じた。」

恐らく、製作者の粋な計らいで、デレスタ・ジャクソンの出演が、決まらったのではと思います。ベット・ミドラーが主演だったら、確実に起こり得ないエピソードだろう。

‘Deloris’ girl group is named the Ronelles, a combination of the names of two other girl groups from the 1960s, the Ronettes and the Shirelles.’

「作品冒頭に登場するデロリス率いるガール・グループは、ロネレスと名付けられている。これは、1960年代の他の2つのガールグループ、ロネッツとシュレルズの名前を組み合わせたもの。」

このような物語の設定からでも分かるように、本作は「音楽」にも拘りを見せており、作中の選曲だけでなく、グループ名の設定にまで気を配っている。60年代から70年代に流行したレコード会社モータウン・レーベル発信のブラック・ミュージックへの敬愛の念が強い。

‘When the casting was changed from Bette Midler to Whoopi Goldberg, the main location was changed from Chicago to San Francisco, where the comedian had started her stand up career.’

「キャスティングがベット・ミドラーからウーピー・ゴールドバーグに変更されたとき、メインのロケ地はシカゴから彼女がスタンダップ・コメディアンとしてキャリアを始めたサンフランシスコに変更された。」

自身のホームグラウンドで、仕事ができるのは誰もが嬉しいことではないだろうか?気持ちにも張りが出る上、リラックスして物事に取り組める。だからこそ、作中のウーピー・ゴールドバーグは、伸び伸びと役を演じれたのではないだろうか?

(C)Touchstone Pictures &(C)Buena Vista
Pictures. All Rights Reserved

最後に、本作のシリーズは、最新作である3作目が製作段階に入っている。

1作目の翌年に公開された2作目や2011年にはアメリカでブロードウェイミュージカル化されるほどの人気を誇る。

ここ日本でも、オペラ歌手の森公美子が、主役のデロリス・ヴァン・カルティエを何公演にも亘って続投している。

また、少し古い記事だが、米国では(1)2017年に主演のウーピー・ゴールドバーグが、自身の役柄について懐古的に振り返るインタビュー記事がある。

記事内では、音楽的バックグラウンドやミュージカル・ナンバーをどのようにまとめたか、また自身が舞台に立ったミュージカルについての感想を聞いている。

そして、映画『天使にラブソングを…』の3作目の続編についての質問もされているようだ。

2017年頃から、このような話をしていることが、よく分かる。

長期に渡り、続編に対する渇望が成されてきたことだろう。

最新のニュースでは、本作のこれまでの流れを説明しつつも、(2)2021年頃の製作に対するニュースをまとめた記事が、昨年11月に掲載されたばかり。

この記事の最後には、最も新しい情報として(3)ケケ・パーマーがホストを務める番組に出演したウーピー・ゴールドバーグに対して、主役以外の多くの役割を担うように示唆する発言をしている。

米国では、常に新しい話題で持ち切りの映画『天使にラブソングを…』は、どのような続編となるのか未知数ではあるものの、その前にもう一度、初期作品を観るために、劇場に足を運ぶのも、名作に触れる絶好のチャンスかもしれない。

今年、公開30周年を迎える本作に何か動きがあるのだろうか?

映画『天使にラブソングを…』は、本日1月7日(金)より特集上映「午前十時の映画祭11」Bグループにて、上映開始。1月21日(金)よりAグループでも上映予定。また、U-NEXTDisney+他にて、配信中。

(1)Whoopi Goldberg looks back on Sister Acthttps://ew.com/movies/2017/05/28/whoopi-goldberg-sister-act-25th-anniversary/(2022年1月7日)

(2)‘Sister Act 3’: Everything We Know About Whoopi Goldberg’s Third Nun-Filled Moviehttps://www.usmagazine.com/entertainment/pictures/sister-act-3-everything-we-know-about-the-new-film/(2022年1月7日)

(3)Keke Palmer Asks Whoopi Goldberg For “Any Role” In ‘Sister Act 3’https://decider.com/2021/11/10/keke-palmer-whoopi-goldberg-sister-act-3-role/(2022年1月7日)