映画『FLY!/フライ!』ほんの少しの勇気

映画『FLY!/フライ!』ほんの少しの勇気

2024年3月30日

じっとしていたら“はじめて”と出会えない映画『FLY!/フライ!』

©2023 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved.

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ほんの少しの勇気が、世界を変える。なかなか一歩が出ず、グズグズ悩んでしまう時もあるだろう。本当に、この道が正しいのか、もしくは違う道に行くべきか。この選択なのか、あの選択なのか、どの選択が最良の道なのか、答えはいつも五里霧中。人々は皆、日々暗中模索の中、必死に毎日を生きている。人との接し方、発言の仕方、作法一つ一つが、この行動で良かったのか、あの言葉のチョイスで良かったのか、常に迷いが生じるものだ。もっと正しい選択肢が無かったのか、その場の空気にもう少し適した気遣いができただろうと、いつも気遣ってしまうものだ。私達はいつも、いかなる場面であっても、手持ちのカードを正しい切り札として使う勇気を試されている。一つ一つの行動が、その先にある未来を一つずつ変えていく。「行動力こそが、人生を変える一歩」と言われているが、私自身もその行動力を大切にして来た。時に失敗し反省する事もあるが、勇気を出して一歩前に歩み出す事が、人生を変える一歩となる。行動力の大切さは(※1)、今の社会を生きて行く上で非常に重要な事だ。行動力を持つ人は、環境の変化に柔軟に対応することができます。 自らの成長によって次の高いステップ・ステージへと進むことができるからだ。 変化を恐れず、行動を起こした先で得た刺激を吸収し、自らの成長に活かす事が、あなた自身の人生をより豊かにしてくれる行動力には、そんな傾向にあると言われている。行動力がある人は、自身のポジティブな長所として就職活動においても大活躍してくれるだろう。それだけ、社会において行動力を示せる人は、貴重な存在として重宝される。行動をすると言っても、勇気が出ない時もあるだろう(※2)。どうやって、勇気を出せば分からない時もあると思う。好きな相手に告白する時。スポーツの勝負時。起業への挑戦。受験や就職活動、あらゆる場面、どんなシチュエーションでも私達には常に勇気を出す瞬間が訪れる。精神科医、精神分析学者、心理学者のアルフレッド・アドラーは、勇気に関して、このような言葉を残している。

「勇気を持って人生の課題を処理して行くことで幸福が生まれる」

行動力と勇気は、同等の比率で私達に必要な生活の要素だ。行動を示す事で、勇気は湧いて来る。勇気が湧かないと、行動にも移せない。この先に待っている幸福を掴むには、前へ進むこと。勇気を持つ事。そして、行動力を示す事が大切だ。本作『FLY!/フライ!』は、本来は渡り鳥であるにも関わらず渡ったことの無いカモの一家が、勇気を振り絞り、一家総出で遠く異国の地へと渡る姿を冒険エンターテインメントとして描いたアニメーションだ。

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本作の物語の主人公は、カモの一家だ。日本のカモで連想するものは、食べ物の鴨肉や鴨肉料理、たとえば、鴨鍋、鴨のロースト、鴨ハム、鴨のコンフィ、鴨ねぎうどん、鴨肉の南蛮蕎麦、鴨せいろ(※3)など、どれも美味しそうな料理名が並んでいる。鴨肉料理は、中国やフランスでは高級食材(※4)として使用されており、フランスではフォアグラ、中国では北京ダックが有名だろう。鴨肉には主にマガモ、合鴨、ガチョウ、アヒルの4種類が挙げられる。非常に美味な食材ではあるが、今回は食用に飼育された家禽化の鴨の話ではなく、冒険の旅に出るカモ一家のお話だ。渡り鳥のカモ(※4)は、日本の場合、越冬のため9月から11月にかけて遠くはロシアや北極圏から遠路はるばる、4000キロの飛行距離を渡って来る逞しい鳥類だ。誰が教えた訳でもなく、彼らが持つ本能と習性が、4000キロの空の旅を実現させている。また、日本国内に渡って来るカモの種類は、マガモ、コガモ、クロガモ、オナガガモ等30種類に登ると言われており、多くの野生のカモ達が冬季になると、極寒ロシアから暖冬日本へと温かさを求めて飛来する。そして、日本が暖かくなる春頃(4月から5月)になると、彼らは元いた場所(ロシアや極東部の寒い地域)へと帰ると言われる。その時の日照時間や彼らの中にある体内時計によって、渡りたいと思うホルモンが分泌され、後は本来持っている本能で日本を飛び立って行く。他に海外には、グリーンランドマガモマダラマガモ、メキシコマガモ、フロリダマガモ、ワイマガモ、レイサンマガモ、またマガモの生態に似たアメリカガモ、アメリカヒドリ、ヒドリガモ等が世界各地で生息する。本作で取り上げているカモの種類は、この中では北アメリカ大陸に分布し、冬季は南方へ大陸移動するアメリカガモの一家と考えられる。あるアメリカ人が一羽のカモがどれくらいの飛来距離を渡るのか調査してみると、10か月間で約10,000マイルを旅をしたという調査結果(※6)が産まれた。この約10,000マイルを日本のキロメートルで計算すると、16093.44キロメートルを移動した計算となり、これを日本の首都東京からどこまでが16093キロメートルか調べてみると、日本の反対側となる南米ボリビアの首都ラパスまでの16536キロメートルが一番近い数字だが、およそ10ヶ月の間にあらゆる場所を経由地としながら、カモ達は地球の半分を飛んでいる。私達人類よりも力強く逞しく、野生の本能を持っているのだろう。

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この渡り鳥の話題から本作の原題「Migration」には、「移住・移転・移動」と言った人にとっては引越し。物にとっては、移動を意味する言葉が当てられている。また、似た英語の単語に「Immigration」と言う言葉があるが、この単語の意味には「移住、移民」がある。本作の日本語のタイトル「FLY!/フライ!」には、単純に「飛ぶ」という意味合いを持たせて付けたと思われるが、作品本来のテーマ性には近年、世界中で問題になっている「移民問題」が色濃く反映されていると考えても良い。日本では、少子高齢化が進む中、不足する労働力を補うために移民を積極的に受け入れている背景がある。私が居住する街でも、10年前と現在では街中で外国人を目にする頻度も増えていると肌で感じている。地方の街でも、外国人移民を積極的に受け入れていると考える事ができる。ここで移民を受け入れを行う上でのメリット・デメリットを比較すると、メリットには「少子化による労働力不足を補うこと」と「人口の増加によって生産性と所得の上昇が起こる」とかんがえられている。その一方で、デメリットには「不法移民」「自国民の雇用の減少」「賃金の低下」「差別」「治安の悪化」など、多くの課題がのしかかる。また、世界での移民の現状は、それぞれの国や環境によって、大きく違いがあり、深い歴史や深刻な問題も介在し、それを解決するために各国が移民問題に取り組んでいる。アメリカを始めとする欧州、サウジアラビア、日本での移民の現状は、それぞれに異なる。その一方で、インドからの国際移民は世界最多を誇る。様々な国の、様々な課題が何層にも重なり合い、根深い問題となっている。近年、日本では2024年1月下旬、国内で働く外国人労働者は204万人余りというデータが算出され(※8)、初めて200万人を超え、これまでで過去最多の移民外国人が日本に居住していると厚生労働省が発表した。今後、ますます日本は移民の数が増える。移民大国日本になるだろう。その時、私達は今まで以上に、外国人達とどう折り合いを付けるのかが試される時代が訪れる。私達は、どう彼らと向き合えば良いのか、今からでも真剣に考えないといけない。現地点で200万人と言われると、もしかしたら、今から考えるでは遅すぎて、もっと10年以上前から真剣に議論がなされるべき問題だったのかもしれない。残念ながら、この点、日本の対応は遅すぎるのかもしれない。日本における移民問題は、現在進行形で今も問題視されているが、近い将来に向けて、私達がどう取り組めば良いのか、それをじっくり考える必要がある。映画『FLY!/フライ!』には、この移民問題を解決するための何かしらのヒントが隠されているのかもしれない。引越しや移住に纏わる近年の日本の問題で言えば、今年年明けに起きた「令和6年能登半島地震」における被災者の方々の移住問題(※9)は社会に重くのしかかった。第三者の私があれやこれやと横から発言できる事ではないが、移住したくないと言い張る高齢者住民の気持ちも理解でき、非常に胸が痛む。「復興より移住か」(※10)と究極の選択を迫られた時、私達はどう向き合えば良いのか、今からでも議論すべき事だ。近い将来、別の過疎化が進む地方の地域でも、今回と同じように地震が発災すれば、同じ問題が浮上するはずだ。移民問題と移住問題、そして本作の内容は大同小異だ。移住に対して臆病になっていたカモの一家(特に、父親カモ)が、勇気を出して一歩踏み出し、前を向いて移住を決意する姿には必ず励まされるはずだ。本作『FLY!/フライ!』を制作したバンジャマン・レネール監督は、あるインタビューにおいて、カモの家族が移住しない理由を話している。

Benjamin:“Yeah, definitely.  Mallards actually have way more problems that we do in terms of quality of life.  The idea came from my producer who read an article about Mallards who, because winters are getting warmer and warmer, don’t need to go on migration any more.  Some of them decide to stay home.  The idea of being stuck in a routine is very relatable and we all go through it at some point in our life.  I’m important to travel and discover new things and open yourself to the world – it’s something we wanted to share in the movie.”(※11)

レネール監督:「マガモは実際、生活の質の点で私たちと同じような問題を抱えています。このアイデアは、冬がますます暖かくなり、渡りをする必要がなくなったマガモについての記事を読んだ私のプロデューサーから生まれました。彼らの中には家に留まることに決めた人もいます。ルーティンに縛られるという考えは非常に共感できるものであり、誰もが人生のある時点でそれを経験します。私は旅行して新しいものを発見し、世界に自分を開くことが重要です。」と話しているように、今世界中で起きている自然破壊や地球温暖化が、動物達の住環境を脅かしている。渡り鳥であったカモたちが、敢えて渡らなくなった背景にある暖冬への危機感。世界における地球温暖化問題や日本の震災における移住問題は、遥か遠くの話題や結びつきのない問題にも感じられるが、その根底にある自然破壊の問題や自然災害、移住問題は常に私達の日常の隣にある。

最後に、本作『FLY!/フライ!』は渡り鳥のカモ親子が勇気を出して、渡りを行う姿を冒険エンターテインメントとして描いた子ども向けアニメーションではあるが、もしこれを子どもの視点で見るのであれば、今の子ども達にはこの物語に登場するカモ親子のように勇気を持って今を生きて欲しい。心の中に小さく灯るその勇気こそが、明日を生きるヒントとなり、今を輝かせてくれる。一人でお留守番できない時、跳び箱が飛べない時、嫌いな食べ物が出された時、自身にとって苦手なこと、嫌なことが目の前に現れた時、この映画に出てくるカモ一家を思い出して欲しい。ほんの少しの勇気が、この先の未来を明るいものに変えると強く信じて欲しい。

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映画『FLY!/フライ!』は現在、全国の劇場にて上映中。

(※1)行動力とは? 言い換え例や効果的な自己PRのコツも詳しく解説
https://hataractive.jp/useful/2961/(2024年3月30日)

(※2)勇気が出ない,仕事や恋愛で勇気を出す方法https://www.direct-commu.com/chie/mental/courage1/(2024年3月30日)

(※3)【鴨肉】美味しい食べ方7選!贅沢なローストレシピなどご紹介https://delishkitchen.tv/curations/5371(2024年3月30日)

(※4)鴨料理レシピの種類をご紹介https://amanecu.com/?mode=f27#:~:text=%E9%B4%A8%E8%82%89%E3%81%AF%E5%8F%A4%E3%81%8F%E3%81%8B%E3%82%89,%E3%81%AE%E6%96%99%E7%90%86%E3%81%A7%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2024年3月30日)

(※5)我が国へ渡来するカモ類の渡りについてhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/dabbler.html(2024年3月30日)

(※6)How Far Can Ducks Migrate in a Day? About 2,000 Mileshttps://www.outdoorlife.com/conservation/pintail-duck-migrate-russia-louisiana/(2024年3月30日)

(※7)移民問題とは?増える移民の現状と各国の政策https://www.yoridori.jp/earth-note/immigration/(2024年3月30日)

(※8)外国人労働者 初の200万人超で過去最多に 厚労省https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240126/k10014335871000.html(2024年3月30日)

(※9)能登半島地震 「復興より移住」は正しい? インフラ整備かコンパクトシティか、災害に強い国づくりを考えるhttps://merkmal-biz.jp/post/60665(2024年3月30日)

(※10)被災集落、すべては復興できないから 「小さな移転」が地域を救う
https://www.asahi.com/articles/ASS363GV4S31UPQJ007.html(2024年3月30日)

(※11)Interview – Director Benjamin Renner on ‘Migration’https://www.thefilmpie.com/index.php/blog-2/6016-interview-director-benjamin-renner-on-migration(2024年3月30日)