特集上映「オスロ、3つの愛の風景」この街に暮らす私達と同じ

特集上映「オスロ、3つの愛の風景」この街に暮らす私達と同じ

これまでにない感情に出会うとき。特集上映「オスロ、3つの愛の風景」

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ノルウェーの首都オスロから届いた心温まる3つの愛の物語。自身の性に悩む10代の少女、中年に差し掛かった男女の思いもよらない恋愛模様、中年男性2人が織り成す性へのアイデンティティの目覚め。様々な人生が繰り広げられる中、三者三様の恋や愛、性への自問自答が描かれる。人は誰かに恋して、誰かを愛して、自身の性を育む。オスロという街が人の愛を育てるが、それはどこの街でも一緒だ。少数であったとしても、どんな街にも、自身の性自認に悩む人々が生きている。これらトリロジー『DREAMS』『LOVE』『SEX』3作品は、この映画を手掛けたダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の視点で描かれた大人の為のおとぎ話だ。恋に焦がれて、愛を知り、性を自覚し、自身の中の本当の自分に気付く。この3作品は、本当の自分を知る為の心の扉を開ける入り口だ。

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映画『DREAMS』

あらすじ:女性教師のヨハンナに初めての恋をした17歳のヨハンネは、恋焦がれる思いや高揚感を手記にしたためる。自らの気持ちを誰かに共有しようと詩人の祖母に手記を見せるヨハンナだったが、事態はそこから思わぬ方向へと展開してしまう。祖母は孫の手記に自らの女性としての戦いの歴史を思い起こし、母は“同性愛の目覚めを記したフェミニズム小説”として現代的な価値観にあてはめようとする。

一言レビュー:10代の多感な時期に、同性愛に関して悩む学生(※1)は大勢いる。もしカミングアウトして、学校というコミュニティの空間で受けいれられなかったら?学校生活の3年間(もしくは、残りの時間)、たった一人、爪弾き者(※2)として過ごさなくてはならない。もし受け入れられたとしても、きっと悩みは尽きないだろう。異性愛であろうと、同性愛であろうと、同じ時間だけで愛や性に対して悩み続ける。物語に登場する17歳のヨハンネのような学生は、どこにでもいる。自身の内実をさらけ出す事によって、他者との関係性に不協和音を引き起こす要因になるかもしれないが、もし目の前に自身の性に悩む学生や子どもがいれば、どんな大人であっても、優しく手を差し伸べて欲しい。日記に綴られた見えない叫びこそが、今を生きる子ども達の心の叫びだから。その言葉にしっかり耳を傾けられる大人であって欲しいと、強く願う。

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映画『LOVE』

あらすじ:泌尿器科に勤める医師マリアンヌと看護師トールは、ともに独身で、ステレオタイプな恋愛から距離を置いている。マリアンヌは友人に紹介された男性に会うが、子どもがいる彼との恋愛に前向きになれない。その後、フェリーに乗ったマリアンヌはトールに遭遇し、マッチングアプリなどから始まるカジュアルな恋愛を勧められ、興味を抱く。一方トールは、フェリーで知り合った精神科医ビョルンの姿を、自らの勤務先である病院で見かけ……。

一言レビュー:男女の関係にしても、同性(※3)の関係(※4)にしても、どんな関係にしろ、そこには必ず「愛」がある。離婚の問題、出会いの問題、マッチングアプリの問題、何にしろ、それぞれが抱える愛に関する問題がある。本当に大切な事は、それらの問題に対してしっかり立ち向かう強さを持つ事。愛に関する問題を解決するには、まず自分自身と向き合い、自己肯定感を育む事が重要。また、相手に対して過剰に期待せず、健全な関係を築く事を目指す。さらに、相手をありのままに受け入れ、成長を願う「無償の愛」を意識するだけでなく、自分自身の感情に正直になり、境界線を設ける事が大切(※5)。双方の愛を育むには、一人で悩みを抱え込まず、自他共に一緒に愛を育てる意識が大切だ。

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映画『SEX』

あらすじ:煙突掃除人として働く、妻子持ちの2人の男。ひとりは客先の男性との思いがけないセックスで新しい刺激を覚えるが、悪びれることなく妻にその体験を話したことで夫婦仲がこじれてしまう。もうひとりは、デビッド・ボウイに女性として意識される夢を見たことから、自分という人格が他人の視線によりどのように形成されているのか気になりはじめる。それぞれ良き父、良き夫として過ごしてきた彼らは、自らの「男らしさ」やアイデンティティと向き合っていくことになる。

一言レビュー:中年に差し掛かろうとしている煙突掃除夫の男が、自身のアイデンティティに悩む。男の体の中に眠るもう一人の自分。性自認は男性であっても、心の中で求めるものはそれとは正反対。今まで男性性で過ごして来た男達が、ある日、自身の中に眠る本当のアイデンティティ(※6)に気付かされる。日本でも中年男性が同性への愛に悩む姿を描いたドラマが制作されていたが、実際に現実社会にも同じ事は起きている。セクシャルもジェンダーも、いくつになっても気付いてもいい。一番大切な事は、自身の本当の気持ちに蓋をしない事。男女に関わらず、異性愛者の中に必ず同性愛者は存在する。自分では気付かなくても、異性愛の中には必ず同性愛の要素が眠っている。それに初めて気付いた時、どこまで自分を愛せるかが大切だろう。

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最後に、特集上映「オスロ、3つの愛の風景」はノルウェーの首都オスロを舞台に「恋」「愛」「性」にまつわる3つの男女の風景を描いたトリロジーの3作品。どんな風景にも、必ず恋があり、愛があり、性がある。それは、オスロというノルウェーの街に限らず、東京や大阪といった日本の大都市の片隅にも様々な愛のカタチの存在がある。あなたの隣にいる人が、どんな愛や性に悩んでいるかは分からないが、ほんの少しでも理解し、歩み寄る事はできるはずだ。オスロの街の片隅に暮らす人々は、東京や大阪の街に暮らす私達とまったく同じ人間だ。

特集上映「オスロ、3つの愛の風景」は現在、全国の劇場にて公開中。

(※1)「同性を好きに…親にも言えない」悩む女子高生へ、LGBT当事者の助言 まずは味方を増やそう 「ふんわりカミングアウト」も有効https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/support/32392/(2025年9月25日)

(※2)LGBTQの中高生、9割が学校で困難やハラスメントを経験 「ネタ・笑いものにされた」https://www.asahi.com/sdgs/article/15865450(2025年9月25日)

(※3)男女の仲を破綻させる人が知らない「男女の根本的な違い」12の法則【書籍オンライン編集部セレクション】https://diamond.jp/articles/-/354306?_gl=1*986veg*_ga*YW1wLXgxZGFNQnQ2N0V6V25mUHlFT0xFaW8xdW14YjdBM3NHV3NTTC1DT0tFZnZxaG5oNFpleG0yVnNUeGRRb180cFo.*_ga_4ZRR68SQNH*MTc1ODc4MTYyNS42LjEuMTc1ODc4MTc2NC4wLjAuMA..(2025年9月25日)

(※4)異性愛規範な社会が浮き彫りにしたことhttps://lgbter.jp/noise/0069/(2025年9月25日)

(※5)すべての問題行動は愛の欠乏から生まれる:心の満たされ方が行動に与える影響https://agape-mission.jp/love-lack/#:~:text=%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82-,%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%82%92%E9%98%B2%E3%81%90%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%84%9B%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2025年9月25日)

(※6)まさかこの俺が!? 人の性的志向は自分で思っているほど確かではない!?https://www.leon.jp/lifestyle/8652(2025年9月25日)