映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』世界の平和はトランプの手の中

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』世界の平和はトランプの手の中

いかにして歴史に残る怪物になったのか?映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

©2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

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「成功は最終的なものではなく、失敗は致命的なものではありません。それは、そのカウントを続ける勇気です。」

政治家ウィンストン・チャーチルの野心に関する名言より

第二次トランプ政権が発足して一週間が経つ現在、世界中からの期待と不安の声を集めながら、新しいアメリカが動き始めた。今回の大統領選挙を通して、世界が今、団結と分断の瀬戸際に立たされている事が如実に可視化された次第だろう。日本における第二次トランプ政権への注目度は、期待を遥かに上回る不安要素で占められている。ドナルド・トランプが大統領選に再選し、何が変わると言うのだろうか?提言誌Voice2月号の表紙になっている「トランプ2.0の真実 アメリカで何が起きているのか」に寄稿されている「「パックス・アメリカーナ」の本当の終わり」という政治論評(一部を引用。頁36から頁49)では、「2024年は世界にとって、まさに『転換点』になりうる一年となるだろう。」と、筆者である京都大学名誉教授の中西輝政(なかにしてるまさ)氏は昨年刊行した同誌にて予測したと話す。「なぜ、2024年が世界にとって、「転換点」になると予測したのかと言えば、混迷の深まりが予測される選挙が、多くの国々で次々と重なる「魔の選挙イヤー」となることが予想されたからだ。2020年に始まったコロナ・パンデミックと2022年からのウクライナ戦争が重なり、全世界的な未曾有の物価高が多くの国で国民の不満を劇的に高め、それが選挙結果に影響することは容易に予見し得た。4月には韓国で総選挙が行なわれ、尹錫悦政権の与党は大敗を喫することとなり、北朝鮮や中国への親近性が指摘される「共に民主党」をはじめとする野党勢力が議会で圧倒的多数を占めた。12月3日深夜、尹大統領は「非常戒厳」を宣布するに至り、一時は韓国の民主主義は崩壊し、かつての軍事政権が復活するのではないかというショックが世界中に走ったのである。この「大統領のクーデター」と呼ばれる「非常戒厳」の措置は、6時間程度で解除されたものの、最悪の禁じ手となった。ヨーロッパに目を転じると、6月の欧州議会選ではEUに懐疑的な右派・極右勢力が伸長した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は仏議会の総選挙に踏み切ったが、極右と極左が票を伸ばして、マクロン率いる中道左派との三つ巴の様相を呈した。」と記述する。これらの世界的イベントが示すものは、世界的混乱だ。今、どこの国の政治を見ても、不透明な出来事が起きている。日本もまた政権交代をした今、この世界的混迷をどう対処するのか、石破政権が試されている。それは、トランプ政権も同じと言えるだろう。ロシアウクライナ侵攻やガザ地区問題だけでなく、世界の別の国や地域で紛争が起きてもおかしくない。それだけ、世界は今、一触即発の状態だ。トランプ自身、第二次トランプ政権をどう舵を取るのか、世界が固唾を飲んで見守っている。映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、今や世界の代表となったドナルド・トランプの若き頃の熱き野心家の姿を捉えた作品だ。世界の危機が目の前にある今、映画はギラギラとした80年代とは正反対のトランプ氏の青二才を描く。人が抱く野心がどのように成し遂げられるのか、心して見届けて欲しい。

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本作で描かれているトランプの若い頃の姿は、誰にでもあった一つの通過儀礼のようなものだ。偉人、著名人、政治家、誰もが必ず通って来た道ではあるが、その誰もが若き頃の自身の姿を忘れている。今回は、トランプ大統領以外の著名な人物の青二才の頃に少しスポットを当ててみたいと思う。まず、日本ではお馴染みの商売人である松下幸之助氏(※1)が22歳で独立し、事業で成功するまでの姿は成功人とは思えない苦労人であった。彼が商売人として一歩を踏み出したのは、丁稚奉公に出された9歳の頃だ。和歌山まで乗り入れしていなかった南海電鉄の頃、母親と紀ノ川駅で別れを告げた瞬間から苦労が始まっている。また、昭和を代表する日本の首相・田中角栄(※2)は、「政治は国民のものであります。民主政治は国民の支持と理解がなければ、政策効果を上げることはできません。国民の支持を求め前進してまいります」と語り、幼少年時代に父がコイ養魚業、種牛の輸入で相次いで失敗し、家産が傾き、極貧下の生活を余儀なくされ、最終学歴は小学校卒。にも関わらず、53歳で史上最年少の時の総理大臣の座に着く。波乱万丈な人生を送っているが、彼が首相就任前に発表した「日本列島改造論」(都市部と地方の格差を無くす考え方)は、今の地方創に必要不可欠かもしれない。また海外に目を向ければ、ギリシャ哲学の第一人者の一人アリストテレスは、幼少にして両親を亡くし、義兄プロクセノスを後見人として少年期を過ごす。また世界的なデジタル革命を起こした若き日のスティーブ・ジョブズ(※3)は、失敗を繰り返し、他人から侮辱され、同じApple社の同僚から嘲笑されるような存在であった。その時の悔しい経験が、今の成功に繋がっている。世襲政治家と呼ばれる今の日本のボンボン育ちの政治家を除けば、政治家だけでなく、起業家、商売人、哲学者、とあらゆる分野の偉人や著名人は皆、幼い頃や若い頃にある一定の苦労を背負って、歴史や国の代表として立派に成長している。幼い頃や若い時分に苦労を味わうからこそ、後の人生に活かされる。青二才であった20代の頃のトランプが得た経験が、今世界的に直面している政治的危機に立ち向かえる度量が、彼にあって欲しいと願うばかりだ。

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野心とは誰もが抱く人生での大志のようなものだが、若者が抱く淡いイメージより、大人達が抱く野心は沸々と自身の中で打算的に抱くようなドロドロしたイメージを持たれやすいだろう。これは私だけかも知れないが、野心とはよりメラメラとした大人達の欲の塊というイメージが強くある。この目には見えない欲と野望が、各界の重要人物として人を成長させる。心理学的に見て、野心を持つ人の心理には、6つの法則がある。①目先の目標ではなく、大きな夢や野望を抱いている。②夢の実現に向かって努力するストイックさを持っている。③努力する過程を楽しんでいる。④チャレンジ精神に溢れている。⑤新しいことにも臆することなく飛び込んでいける。⑥自分の望みを叶えるために必要なことであれば、迷わず挑戦する(※4)。これらの思想の持ち主達が、後の大統領や首相、国を牽引するトップとなったり、医学界の権威、ノーベル賞受賞者など、立派な人物になるのだろう。その根源にあるのが、人としての志の高さや野心の深さと関係しているのだろう。その一方で、「野心家たちは常に明確な目標を設定し、次のゴールに向かって邁進しますが、健康的な野心家は自分の目標を内に秘めているものです。心理学者らによる研究で、目標を誰かに話してしまうと、それだけで既に何かを達成した気になるいわゆる「社会的現実」現象が起き、実際に努力をしないために実現しにくいことがわかっています。最近では「口に出して周囲に目標を宣言した方が自分を追い込み、実現できる」という風潮がありますが、言っただけでやった気になってしまう、というのは心当たりがあるだけに避けたいところ。怠惰にならずに野心を保ち続けるには、日本に古くからある「不言実行」の考え方が一番のようです。」(※5)と、言わぬのが花とでも言うように、実行不可能な事に対して、敢えて、何も言わないと選択する事こそが志が高い人という捉え方もできる。私は、「不言実行」より「有言実行」の人でありたいと思う今日この頃。映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を制作したアリ・アッバシ監督は、あるインタビューにて本作の本質について、こう話している。

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アッバシ監督:「この映画は議論を呼ぶ映画だという考え方自体がおかしい。この映画には特に議論を呼ぶようなことは何もないのに…ウィキペディアの情報を使って脚本を書けるくらいだ。私にとって最も議論を呼ぶのは、ハリウッドという大企業が、私たちが危険で常軌を逸していると思っていることだ。この映画は、観客が駆け出しのビジネスマンから今日の政治家になるまでのトランプ氏の軌跡をたどる追体験できるところにある。」(※)と話す。確かに、トランプの若かりし頃からの半生を体験でき、ひ弱だったであろう20代の彼がモンスターへと豹変する様自体を、私達が体験できるのは稀有な出来事だ。ドナルド・トランプはこの世に一人しかいない。その一人しかいない人物の人生に対して、全世界の何億人がその一人の人生を体験できるのは、映画という媒介があるから、なせる技だ。貴方は、貴方の人生を歩みたいか?それとも、モンスターと呼ばれるアメリカ大統領の人生を体験したいか?

最後に、映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、今や世界の代表となったドナルド・トランプの若き頃の熱き野心家の姿を捉えた作品だ。世界の危機が目の前にある今、映画はギラギラとした80年代とは正反対のトランプ氏の青二才を描くその一方で、忘れてはいけないのが、これからの世界の行く末だ。私達人類は、一人の大統領の若かりし頃に経験した過去の栄光に縋りたくない。映画は、80年代のヒットソングと80年代の懐かしの映像のモンタージュで彩られるが、私達は40年前の出来事を知るのではなく、今と未来のアメリカ、日本、アジア、ヨーロッパが、どう変革して行くのか知りたいだけだ。今、世界中は不安の渦中にあり、いつ何かが崩壊するか分からない。第二次トランプ政権が発足したばかりだが、世界の平和はトランプの手中に試されている。

「自分の能力以下の人生に甘んじることに、小さなことをする情熱は見出されません。」

政治家ネルソン・マンデラの野心に関する名言より

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映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は現在、全国の劇場にて公開中。

(※1)紀ノ川駅の別れ――人生断章〈1〉https://konosuke-matsushita.com/episodes/life/no1.php(2025年1月27日)

(※2)田中角栄は常に学歴を気にしていた…田原総一朗が考える「本物の一流と偏差値だけの人間」の決定的な違いhttps://president.jp/articles/-/79995?page=1#goog_rewarded(2025年1月27日)

(※3)失敗を繰り返した若き日のジョブズ 〜スティーブ・ジョブズの成長物語〜挫折篇(1)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2f6a61b01a246f13462a6c2d51c099433300aadb(2025年1月27日)

(※4)もっと成長したい!「野心家」の人たちの特徴は? 付き合う上での注意点や、「野心家」になるための方法について解説https://oggi.jp/6594871(2025年1月28日)

(※5)「野心」は他人に話さない。本当にアンビシャスな人たちの習慣https://www.mashingup.jp/2015/07/047877ambitious.html(2025年1月28日)

(※6)’The Apprentice’ director talks about the film Donald Trump doesn’t want you to seehttps://www.npr.org/2024/10/10/nx-s1-5100620/the-apprentice-donald-trump-director-film(2025年1月28日)