最高に気分爽快な一撃!!映画『勇敢な市民』


いつの時代、どこの国、どの年代でも関係なく、学校内でのいじめは無くなる事はない。いじめがいじめと呼ばれるようになって久しく、近頃はいじめそのものが犯罪であると訴える人々の声も聞こえて来る。暴力、脅し、パシリ、無視、嘲笑、仲間外れ。肉体的に傷付くだけでなく、いじめられている側の精神までをも崩壊させる悪行の数々に対して、国はそれらを罰しようとはせず、現在はどこの国でも野放し状態が続く。子どもの安全は、誰が守るのか?彼ら子ども自身が自らを守るのか、大人達が率先して守って行かなければ、いじめは無くならないのでは無いだろうか?一人でも子どもの命を守る大人が現れれば、子ども達の世界は少しでも保証されるものになるだろう。でも今の時代、そんな大人は一人もいない。事なかれ主義で自身の保身ばかりを気にして、子ども達の存在を忘れた大人が大勢いる。生徒の苦しみに向き合おうとはせず、恰もいじめられる側に問題があるような発言ばかりが目立つ。私自身、中学生の頃、いじめられた(いじめられてない生徒の方がこの世の中、少ないのでは?)。進級して、卒業間近のこの季節、同級生の口から、不良生徒からいじめられた者を名乗り出るような取り組みがあると聞かされたが、その時私が感じたのは「何を今更。あまりにも遅すぎる。取り組むのであれば、いじめられたその時に大人である教師は生徒の為に動いて欲しかった。」大人だけでなく、同級生含め、人への不信感が倍増した出来事だ。誰も他者を救う事はしない。誰も自分以外をかわいいとは思わない。みんな、自身の人生を生きるのが必死で、他者への気遣いは忘れてしまっている。私達大人は、子ども達に人生で何を学び、何を習得すれば良いのか教える事はできない生き物だ。映画『勇敢な市民』は、元女子ボクシング王者の非正規教師と凶暴な生徒のバトルを活写したアクションコメディだ。子どもの世界を守れるのは、大人たちだけだったはずが、今では誰もが子どもに対する関心は薄れている社会が、ここにある。

現在の日本社会の教育現場で教鞭を振るう教師達は、もし自身の目の前でいじめが起きた時、どう向き合い、対処するのかが課題となって横たわる。集団生活であるなら、尚の事、いじめは起きてしまうという認識を持たれている。集団生活の中でもいじめを起こさせないと取り組むのが教師や親、第三者である私達住民や民間の役目だ。地域全体が一丸となって、子ども達の世界を守る活動に身を投じなければならないが、それを意識している大人はほぼ皆無と言っていいほど、日本の教育現場では無関心が横行する。「教師はいじめにどう対応していくか~「自主協同学習」 の理念と実践をベースとして~」という報告論文では、章ごとに「いじめの問題にどうとらえていくか」「教師は何をしていけばよいのか」「いじめの解決に向け、特に大事にしたいこと」「いじめる子への指導をもっときめ細かに」「いじめられやすい子や将来のいじめ被害が想定される子の支援を入念に」「いじめに対し教師はどんな心構えで、実践上どんな点に力を注げばよいのか」「いじめをしないために個人や学級はどんな力を身につけていけばよいのか」「いじめを許さない学級ではなく、みんなが仲良く高め合う学級を」と8つの取り組みを通して、いじめに向き合う教師や教育現場がある事も知って欲しい。この論文の締め括りには、「学校におけるいじめはなくならない」と言う人もいるが(以下、割愛)、(いじめのない学級を作る)ポイントは、本論でも繰り返し述べているが, 敢えて3点挙げるならば、 「できない子や学級で一番弱い子を中心に据えた学級づくりを行うこと」、「学習や活動の目的達成に向けては、“競争” ではなく “協同” のよさを最大限引き出すことで、一人残らずゴールさせること」、「人間関係づくりでは, 学級の誰とでも力を合わせられることと、誰もが“心友” がもてるよう推進していくこと」であると考えている。いじめ根絶に即効薬はない、私たちの“教育”そのものが問われているのである(※1)と述べているが、すべては荒唐無稽の理想論だ。人間の特性の一つである「排除の法則」が機能する限り、いじめを根絶させる方法を模索しなければならない。

日本でのいじめ対策は、ここ10年ほどで画期的に定義付けられている。いじめの定義(※2)とは何か?児童生徒に対して心理的または物理的な影響を与える行為で、相手が心身の苦痛を感じている事を指し、行為をした加害生徒と行為の対象となった被害生徒は児童生徒であり、両者に一定の人的関係がある。加害生徒が被害生徒に対して心理的または物理的な影響を与える行為をし、被害生徒が心身の苦痛を感じている。これを日本国内におけるいじめ加害の定義として国が定めた法律が作られた。平成25年(2013年)9月28日から発令されたいじめ防止対策推進法(平成25年9月28日)を知っているだろうか?いじめ防止対策推進法とは、いじめを防止し、いじめを受けた児童生徒を保護することを目的とした法律(※3)だ。同年10月11日には、いじめの防止等のための基本的な方針が打ち出され、平成29年(2017年)3月16日には同方針が改定されている。令和6年8月には、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインが作成された。この10数年の長きに渡り、大人達は日本のいじめ問題と向き合い、根絶を目指して奮闘しているのが理解できるが、それでもいじめ事案が減らないのは、この法律が国内で全く機能してないからではないかと疑わざるを得ない。一方韓国では、1990年代に社会問題化したいじめに対して、1995年から政府による対策が開始されています。いじめ対策法の制定や、いじめ加害者の厳罰化、学校現場の対応力向上などが行われている(※4)。また、韓国におけるいじめ対策として挙げられるものとして、①いじめ加害者の厳罰化②学校現場の対応力向上③いじめ加害記録の大学入試への反映④いじめ隠蔽の厳罰化⑤教師の評価に際して、いじめの発生件数ではなく措置の適切性を重視するなどを制定している。韓国のいじめ加害生徒に対する厳罰の一例としては、最も軽い1号は被害者への書面による謝罪。6号では「出席停止」、7号は「クラス替え」、8号では「転校」。高校生にはさらに重い9号の「退学」処分がある。その上、いじめ加害記録は学生生活記録簿に残され、大学入試の選考に大きく反映される。日本も韓国と同じぐらいの厳罰化を定めれば、日本国内におけるいじめ問題にも一つの決着が着くのかもしれない。映画『勇敢な市民』を制作したパク・ジンピョ監督は、あるインタビューにて本作が取り上げるいじめ問題についてこう話す。
パク監督:「状況は誇張されて見えるかもしれないが、行為は誇張しないように心で演出しました。本作の劇中に登場するいじめ被害者であるコ・ジンヒョンを抱きしめながら、「あなたのせいではない」と言う。これが映画を通じて、いじめ被害者の皆さんに一番伝えたかった言葉だった。」(※5)と話す。日本も韓国も、暴力のない喧嘩のない真の学校教育を目指さなければならない。この教育現場の先には、暴力のない日本社会(韓国社会)、または争いのない世界へと発展することができ、その社会(世界)の縮図が、この学校内における教育現場でもある。喧嘩のない真の学校教育を訴える本作のパク監督が、本作で目指したのはもしかしたら、真の世界平和なのかもしれない。

最後に、映画『勇敢な市民』は、元女子ボクシング王者の非正規教師と凶暴な生徒のバトルを活写したアクションコメディだが、このアクションの先にあるのは子どもを救おうとする一人の大人の優しさが描かれる。でも現実社会、子どもの命を救おうとする大人は一人もいない。2022年(令和4年)3月18日に起きた泉南市男子中学生自殺事件(※6)では、いじめ被害の当事者の少年が学校や教育委員会にも相談し、自殺する半年前には大阪弁護士会のLINE相談窓口にも相談していたが、大人達はこの少年の苦しみに耳を傾け、手を差し伸べる事はしなかった。一人でもいい、たった一人でもいい、この作品に登場する女性教師のような大人が一人でも彼の前に現れていたら、少年の人生はもっと違った方向に舵を取っていたのかもしれないと考えると、本当に悔やまれる事件だ。死んでもいい命は、一つもない。傷付いてもいい心は、一つもない。それでも、私達大人はどこまで行っても社会の片隅に生きる小市民にしか過ぎない。この小市民に何ができるのか、何もできないかも。たった一人の力は無力かもしれないが、それでも、その少しの勇気が子どもの命を救えるのであれば、あなたの中に「勇敢な市民」は存在するだろう。

映画『勇敢な市民』は現在、全国の劇場にて公開中。
(※1)教師はいじめにどう対応していくか~「自主協同学習」 の理念と実践をベースとして~https://drive.google.com/file/d/1OKQmC4m6uz9lCAGoB1ABB8-IWYUjTf0X/view?usp=drivesdk(205年2月7日)
(※2)いじめの問題に対する施策https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302904.htm(205年2月7日)
(※3)いじめ防止対策推進法とは? 子どもがいじめの被害に遭ったとき弁護士ができることhttps://fujisawa.vbest.jp/columns/school/g_bullying/6739/#:~:text=%E5%B9%B3%E6%88%9025%E5%B9%B46%E6%9C%88,%E3%81%A8%E5%AE%9A%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82(205年2月7日)
(※5)[인터뷰] 거침없는 참교육! ‘용감한 시민’ 감독이 통쾌함을 주는 방법https://www.maxmovie.com/news/435247(205年2月7日)
(※6)中学生自殺“学校対応が一因”調査結果 大阪 泉南https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240531/2000084822.html(205年2月7日)