誰かに聞いてほしかった映画『悠優の君へ』
いつかの君へ。いつかの貴方へ。心が落ち着かない時、気持ちがソワソワする時、悠優の時の狭間で、君達は今を生きている。他者からの優しさを跳ね除け、時に差し出してくれる手を払い除け、自身の殻に閉じこもってしまう時もあるだろう。でも、大丈夫。君はもう、大丈夫。君は、君自身の足で一人前を向いて歩いて行ける。この言葉が、何の慰めにならなくてもいい。この優しさが、何の役に立たくていい。この考えが、君自身に影響を与えなくてもいい。なぜなら、君はもう一人で歩いているから。前を向いて、たった一人で人生を歩いて行ける事を証明しているから。私の出る幕は、もうないだろう。その代わり、君は君自身の人生を誇りを持って生きて欲しい。一人で生きるには、茨の道が待っているだろう。日本社会は、私達が思っている以上に、冷徹で冷ややかな目を向ける。それでも、君が「一歩踏み出すんだ!」と自身を鼓舞するのであれば、それは間違いなく、これからを生きる大きな糧になるだろう。根拠の無い単なる自信こそが、後の人生を輝かせてくれる。映画『悠優の君へ』は、強迫症を隠して生きる高校生とその友情を描いた青春ドラマ。誰にも言えずに秘密や悩みを抱えた学生達は、今もどこかにいる。その子ども達の心を救えるのは、私達大人達だ。
強迫症(またの名を強迫性障害)は、一体どんな症状を有する病気なのだろうか?たとえば、汚れや細菌などを怖がり、必要以上に手洗いや入浴を繰り返す。ドアノブなど、汚いと思うものには触れられない。誰かに危ない思いをさせたと思い込んだり、戸締りや電気のスイッチなどを何度も確認。どんな状況でも決まった手順で物事を進めないと不安。ある特定の数字にこだわりをもち、その時間や順番を好んで行動。物の置き場所が必ず思い通りになっていないと不安。代表的な症状は、今挙げた内容がほとんどだが、他にも精神的な不安に陥れる症状が多岐にわたる。大人の強迫性障害の平均発症年齢は20歳前後と言われているが、成人になってから発症する事も少なからずある。では、子どもの強迫性障害は、どうだろうか?先述した通り、平均発症年齢は20歳前後(他の病気と比べ、比較的遅咲きな印象)、ただ10歳未満の発症も稀で、小児期では10~12歳に発症のピークがある。社会人となってからのストレス負荷が多くあると、心の中の不安が増大に膨れ上がって来るのだろう。それが、子どもの時分に発症すれば、相当苦しかったのではないだろうか?親や教師、誰にも相談できず、自身の中てずっと苦しみを抱え、それが病気の症状と思えず、苦しみ続ける子ども達が、今もどこかにいる。それが、心苦しく、不憫でならない。できるのであれば、そんな子ども達の心の苦しみを少しでも半減し、取り除いてありたい。その為に、映画という文化芸術があると信じたい。映画を通して、少しでも子ども達の心の苦しみが和らぐのであれば、私は映画を通して、何でもしてあげたいと心から願う。
10代で発症する強迫性障害の場合は、思春期とガッチャンコの時期に相当するから、より苦しい時期と考えても良いと思う。発症率は100人に2~3人。10代の発症年齢は、平均19.5歳。男性は18歳前後、女性は少し上の22~23歳頃。まず、発症の原因が分かっていない。遺伝的なのか、後天的なのか。ただ、遺伝の影響が強いと考えられている。特に、幼少期や思春期に発症した方やチック障害を持っている方では、遺伝による影響が強いと言われている。また一度、親族に強迫性障害が見られる場合、障害発生率は10-20%と言われ、一卵性双生児による一致率が60-90%と高い。結果的、軽度の遺伝性があると考えられている。思春期における強迫性障害の発症は、多くあると結論づけられている。その上、思春期に発症した場合、統合失調症の前駆期となる可能性があると言われており、早期の治療が重要とされている。まずは、相手を知る事が大切だ。今何を考え、何を思っているのか。相手の話を聞いて、その苦しみを理解し、共有する事が相手を知る一番の近道だ。もし隣に強迫性障害で苦しむお友達が現れたら、迷わず貴方の手を差し伸べて上げて欲しい。それは、話だけを聞く関係でもいい。それは、何も言わず、そっと隣にいてあげるだけでもいい。相手の心が、安らぐ事を率先してあげて欲しい。
最後に、『悠優の君へ』は、強迫症を隠して生きる高校生とその友情を描いた青春ドラマ。監督は、「少しでも、強迫性障害の理解が進めば」と話す。強迫性障害の有無に関わらず、今の日本社会は生きにくい。ただでさえ、普通に暮らしていても、息苦しい。生きにくさの原因は、特に、家庭外の人間関係や家庭内の問題に対して、生きにくさを感じる時がある。先日、私自身もその生きにくさを感じて、掛け持ちしている仕事のうちの一つを辞めた。仕事をする上で人間関係が相反して、メンタル的に生きにくさを感じたのなら、その場から離れるのが一番だ。一番大切なのは、あなた自身。あなたという存在が、この世で一番大切。もし息苦しさや生きにくさを感じているなら、自身を守る行動が優先される世の中にして行かなけなればいけない。日本語には、「悠優」という言葉と意味はないが、もし言葉の意味を持たせるとするのであれば、「のんびりと心のままに」あらんとする社会である事を望む言葉であって欲しい。
映画『悠優の君へ』は現在、関西では11月30日(土)より兵庫県の元町映画館にて公開予定。また、12月6日(金)より京都府の出町座にて公開予定。
(※1)こころの病気を知る 強迫性障害https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MiyHEH6ZUZDxDeYX(2024年11月26日)