文・構成 スズキ トモヤ 協力 堤 健介
リル・バックという人物を知ってるかな?
黒人ラッパーの2PAC?
いやいや、彼とはまったくの別人。
リル・バック。
メンフィスの小さな町で育った一人の青年。
彼の得意とするダンス「メンフィス・ジューキン」。
黒人の若人たちが作り上げたダンシングだ。
片田舎のストリート・ダンサーから世界的なプロへと成長し続ける今。
彼は常に、表現したいスタイルを模索し続ける今。
物語は、90年代前半のメンフィス。
あるダンスが誕生した。
彼らは実力を磨く。
毎晩踊る若者たち。
ダンスの社交場。
溢れかえるクリスタル・パレス。
彼らは皆、スラム街の若人ばかり。
いつも様々な問題抱えてる。
内に秘めた感情をダンスを通して表現する。
彼らジューキーは口々にこう言う。
「俺たちは人殺しになるより、ダンスがしたい」と。
映画の舞台。
90年代、メンフィスの片田舎。
彼らにとっては混沌とした時代。
黒人差別が横行した当時。
全米各地至るところで日常化していた暴力。
91年に起きたロサンザルス暴動を知ってるかな?
白人警官が、無抵抗の黒人を無差別に痛めつけた事件。
黒人差別が、まだまだ根深く残っていた時代の出来事。
この問題を目にしていたジューキン達。
ダンスに打ち込みながら、世の中の不条理さを払拭。
幼少期「メンフィス・ジューキン」を踊り続けていたリル・バック。
町一番のダンサーとして注目浴びる。
奨学金得て、バレエの世界飛び込む。
バレエとジューキン融合させた創作ダンス。
独創的な踊り見た世界的チェリスト、ヨーヨー・マ。
彼らはチャリティー・イベントでコラボ行う。
偶然、彼らの催し撮影していたハリウッドの名監督スパイク・ジョーンズ。
彼がユーチューブにアップした結果。
瞬く間にリル・バックの人気火がつく。
まるでアメリカン・ドリーム地で行くような話。
でも、本当の話。
「Real Swan」という原題。
どう理解するかな?
有名な童話作家アンデルセンの代表作「みにくいアヒルの子」を土台しているような題名。
種類の違う一羽のアヒル。
ある日美しい白鳥へと変貌する物語。
まるでリル・バックの半生のよう。
タイトルが表現しているのは、ストリートから世界へ羽ばたく様子だ。
ダンサー界隈では押しも押されぬ存在のリル・バック。
現在、世界の伝統的な舞踊を習得。
新しい事への挑戦は今も続く。
ダンスは言語。
手話もまた言語。
彼は、ダンスと手話を融合させる構想を練っている。
最近では、ダンス以外に手話にも関心を持っている。
更なる彼の進化に拍車が、かかっているんだ。
バレエ界では異色の存在だった彼。
ストリートから大空という世界へ。
羽ばたくリル・バック。
現実に存在したReal Swan。
ジューキーズとして「メンフィス・ジューキン」を。
今も大空から世界へと発信し続けている。
リル・バックは日本では無名のダンサー。
けど、映画から見える彼の姿。
誰しもが成功できるチャンスがあることを教えてくれている。
映画『リル・バック ストリートから世界へ』は、関西では8月27日(金)から大阪府のシネ・リーブル梅田、京都府のアップリンク京都にて現在公開中。9月18日(土)から兵庫県の神戸元町映画館にて、公開予定。