映画『散歩時間〜その日を待ちながら〜』
100年に1度、来るか来ないかの「コロナ禍」と呼ばれる世界的パンデミックが、隆盛し始めた初年。
それは、しし座流星群が、栄耀栄華を極めつつある2020年11月17日。
映画『散歩時間〜その日を待ちながら〜』はこの一日だけにスポットライトを当て、あるアラサー世代を中心にした男女数組が、都会とは別の彼ら共通の友人宅であるパーティーを開催しようとする姿を描く。
あれから2年。
混迷を極めるコロナ禍にある若者たちの日常は、どこに向かって突き進むのか。
明日への希望も活力も見出せずにいる今、本作には何らかの生きるヒントが隠されているかもしれない。
人は、「その日」を待っている。その「その日」とは一体、どんな日なのか?
今、それを突き詰めても、まるっきり答えは出ない。
ただ、この世に生きる生きとし生きる者たちが、このコロナ禍を生き抜き、平穏な日々が訪れることを祈っている人は多いはずだ。
そんな殺伐とした感染列島の裏側では、日本の片隅で、ひっそりと人知れず、静黙に、自身らを祝う会を各々に開く。
コロナ時代ど真ん中の若者世代が見た今を通して、彼らの瞳には何が映るのか?
それは、希望か、絶望か。
街中だけでなく、それぞれの人生をも行き交い、旅する若年者たちの姿を群像劇として捉え、彼らが過ごす「ある日」が鮮明に活写される。
コロナ元年となった2020年は、まったく新しいライフスタイルが要求され、誰もが迷い、困惑した時代だ。
今振り返ってみると、コロナ禍時代が幕を開けたあの時期は、どんな年だったのだろうか?
ウェブ上の報道記事(※1)「ニュースで振り返る2020年の日本」内で伝えられている出来事の約半数以上が、コロナウィルス関連が占めている。
私たち市民の行動制限が設けられただけでなく、あらゆる催しが延期や中止となり、コロナが原因で経済が大きく傾いたのも、このタイミングだ。
GDP成長率が、リーマン・ショックを超える落ち込みに達し、間違いなく新型コロナウイルス感染拡大が、経済活動を圧迫し、大幅に停滞させた。
また、2020年1月には最初の感染者が確認され、その数ヵ月後には感染数が3000人を突破し、covid-19が脅威の未知のウィルスとなりつつあった時期でもあった。
こんなトンデモない時代に、明日への生きる意味を見つけ出そうとする若者らの姿が、最も愛おしく、愛くるしい。
映画『散歩時間〜その日を待ちながら〜』を製作した戸田彬弘監督は、作品に対するコメントにて、本作を製作した意味を、こう明かす。
戸田監督:「(※2)あの頃感じた感情を、いつか懐かしく思える日が来る。そしてその時、あの時間が停滞ではなく、世界や他人を改めて感じるちょっとしたひと休みの期間だった。そう思える未来なら良いな。」と監督は、いつまで続くか分からない今のこの期間を、「ひと休みする時間」として話す。群像劇が主体の物語に、このタイトルの一致性について、コロナ禍の今の時代を「散歩時間」として表現している点は、大いに合点が行く。いつか、この鬱屈な時期を振り返り、この期間もまた必要な時間であったと思える、さんな未来が訪れることを願うばかりだ。
最後に、本作『散歩時間〜その日を待ちながら〜』は、コロナ禍の今を生きる若者たちの日常を描いた作品だ。
流転する私たちの今も、未来も、どう移ろい行くのかは、誰も予見できない。
ただ、本作が描くしし座流星群やその星の輝きは、あたかも私たち自身だ。
群像の中に一人一人、この世に生きる私たちと宇宙空間を漂い流れる眩いぐらいに輝く星たちは、まるで合わせ鏡のようでもある。
私たちの未来が、どこに向かって進んでいるのか未知数のように、宇宙空間で漂流しながら宇宙遊泳する流星たちの行方もまた、誰にも予想できない。
夜空を流れる星たちが行き着くその先が必ずしも極楽浄土だとは限らないが、未だ見ぬ私たちの未来が明るく希望の持てる嚮後(きょうこう)である事を望むばかりだ。
映画『散歩時間〜その日を待ちながら〜』は現在、12月9日(金)より大阪府のシネマート心斎橋、12月10日(土)より第七藝術劇場、12月16日(金)より京都シネマにて、公開中。
(※1)ニュースで振り返る2020年の日本https://www.nippon.com/ja/news/l00285/(2022年12月18日)
(※2)誰しもが過ごしたあの2020年の一夜を戸田彬弘監督が描くオリジナル 群像劇『散歩時間 ~その日を待ちながら』前原滉が主演、大友花恋がヒロインとして出演!https://www.cinemanavi.com/article_detail/id/6557/%E8%AA%B0%E3%81%97%E3%82%82%E3%81%8C%E9%81%8E%E3%81%94%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%82%E3%81%AE2020%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%B8%80%E5%A4%9C%E3%82%92%E6%88%B8%E7%94%B0%E5%BD%AC%E5%BC%98%E7%9B%A3%E7%9D%A3%E3%81%8C%E6%8F%8F%E3%81%8F%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%20%E7%BE%A4%E5%83%8F%E5%8A%87%E3%80%8E%E6%95%A3%E6%AD%A9%E6%99%82%E9%96%93%20%EF%BD%9E%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%82%92%E5%BE%85%E3%81%A1%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E3%80%8F%E5%89%8D%E5%8E%9F%E6%BB%89%E3%81%8C%E4%B8%BB%E6%BC%94%E3%80%81%E5%A4%A7%E5%8F%8B%E8%8A%B1%E6%81%8B%E3%81%8C%E3%83%92%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E5%87%BA%E6%BC%94%EF%BC%81.html(2022年12月18日)