圧倒的な魅力。映画『SEBASTIAN セバスチャン』


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自分自身を見失う現象は、二重生活の成れの果て。本物の自分が、一体どっちで、何者か分からなくなる。嘘に嘘を上書きし、嘘に塗り潰した偽りの生活はリアルな現実と交錯する。昼の顔と夜の顔が遠ければ遠い程、実際の生活も掛け離れたスタイルになる。相手に伝える虚言が多ければ多い程、大きければ大きい程、真実が明るみに出た瞬間、人々は失望の波に打たれる。他人を絶望のどん底に叩き落とされても、平然とした顔でいられる人間はペテン師そのものだ。誰も相手の嘘を望んではおらず、欺瞞的になればなるほど、周囲への信頼性は失われる。真実と嘘の姿が二項対立する生活に重きを置けば、自分自身が本当の自分を見失ってしまう。けれど、誤魔化しの効かない世界にいる限り、私達は偽りで本当の姿を隠さなくても良くなくなるはずだ。映画『SEBASTIAN セバスチャン』は、ロンドンの街を舞台に、小説家の夢とセックスワークの狭間で揺れ動く青年の姿を赤裸々につづったドラマだ。昼間は夢を追いかける青年、夜間はその夢の為に潜入取材で身分を隠し同性愛者として振る舞う背信生活。真の姿を隠してまで、危険な世界に潜り込もうと画策する豪傑ぶりには血の気も引くだろう。

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実際に、二重生活をする日本人は現代社会にどれぐらいいるだろうか?認識する限りで言えば、夜の世界にお勤めになっている方は、人知れず二重生活の沼にハマっているのかもしれない。たとえば、昼間は学生という顔を持ちつつ、夜は水商売で働くスタイル。その影には、ホストで払えなくなった売掛金(借金)の返済(※1)を余儀なくされ、夜の世界に身を置くパターンがあり、これは社会問題にもなっている。幾つかの男の為の夜の仕事(※2)はあるが、そのほとんどの場合、お酒絡みのホスト系の仕事ばかりだ。また、女の為の夜の仕事(※3)も男達と同じようにお酒絡みの仕事がほとんどだ。お酒が絡む夜の仕事(キャバクラ、ホストクラブ、ガールズバー、スナックなど)は、高収入という大きな魅力がある一方、身体的・精神的リスクを伴い、「暗い側面」も存在する。働く理由と夜職に潜むリスクを一つずつ整理して行く。夜勤で働くメリットには、何個か理由があり、1.圧倒的高収入と即金性、2.短時間で効率的に稼げる、3.お酒や接客が好き、4.人脈や成長(コミュニケーション能力)と様々な事柄がポジティブの面として受け入れられている一方、夜間勤務の場合、暗い側面・デメリット(※4)も同時に存在する。お酒が絡む事による物理的なダメージだけでなく、夜型生活が健康に与える影響は深刻だ。たとえば、身体や健康への影響は甚大だ。たとえば、アルコール依存に肝機能障害のリスク。睡眠不足と生活リズムの崩れ。飲みすぎによる急性アルコール中毒のリスク。精神や生活への影響。夜間に起きて、活動するだけで「生活がすべておかしくなる」リスク(※4)があり、身体への影響は避けられない。また、昼夜逆転生活では、精神的な負担やトラブルは避けられない。深夜までの勤務、客とのトラブル、人間関係の希薄さから「酒うつ」などストレスを抱え、メンタルの不調となりうつ病や精神的な病気(酒うつ)になりうつ病が発生しやすくなる。また、セクハラ、パワハラによる客とのトラブル、店外での付き合い(アフター、同伴など)の強要。ノルマ未達成時の自腹(ドレス購入、酒の買い取り)や、給料からの罰金天引きなど、自腹・ノルマへのプレッシャーが激しく、ブラックな環境に遭遇するリスクがある。 社会的・将来的な問題は一般職に比べ数倍あり、長期間夜職に従事すると、昼職(正社員)への転職が難しくなり、履歴書やキャリアへの壁を感じやすくなり、 履歴書には「飲食・接客業」と書く必要があるなど、経歴隠しを余儀なくされる場合がある。 夜の仕事にはインセンティブ(売上報酬)が発生しやすく、「飲まなくても稼げる」は嘘ではないが、夢物語であり、飲まずにコミュニケーションが成り立つ世界ではない。 お酒が絡む夜の仕事は、「手っ取り早く高収入を得る」という目標と、「心身の健康と引き換えにする」という暗い側面が表裏一体となっている。期間を決めて、目標額を稼ぐなどの工夫がなければ、健康や生活を維持できなくなるリスクを認識する事が重要だ。これは、お水の世界に関わらず、どの夜勤職でも同じ事が言え、夜勤帯は高時給である代わりに、昼間の活動と二重生活になるざるを得ない。昼と夜の活動を通して、自身がどちらの顔なのか錯綜してしまう。私自身も長い間、夜勤帯での仕事をしながら、日中にも活動をしているので、自分自身、どちらが本当の自分なのか混同してしまいがちだが、できるならば、昼間の顔(ライターの顔)を維持し続けたい。日々の暮らしにおける二重の生活は、ほとんどメリットがない。まとまった収入が得られ、日中の自由な時間を確保をできる反面、健康は消耗し尽くされ、人間関係は希薄になり、身も心も廃人のようにボロボロとなる。周囲からの信頼は剥奪され、最後は孤独だけが人生の味方に。

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日本に身分を隠して、活動している人はどれくらいいるだろうか?たとえば、諜報活動(スパイ活動)をしている人はどのくらいいるだろうか?覆面捜査官や覆面ショッパーなどもまた、その部類としてカウントすれば、日本にいてスパイ活動をしている人が大勢いてもおかしくは無いだろう。日本国内で活動するスパイや情報収集活動に関わる人数は公式には発表されておらず不明だが、専門家やメディアの推計(※5)によると、外国のスパイが1つの国だけで約3万人、合計すると10万人ほど潜んでいる可能性があると言われている。日本は経済・技術力が高く安全保障上の要衝であるため「スパイ天国」(※6)とも称され、外国の情報機関が活発に活動していると指摘されている。 外国スパイの潜伏規模においては、推計人数の数は、一説には1ヶ国だけで約3万人、数ヶ国を合わせると10万人ほどが暗躍している可能性があると元公安関係者が言及している。ロシア、北朝鮮の「スリーパー(潜伏工作員)」、その他、中国なども活発に動いている主な国として挙げられる。産業技術、安全保障関連情報、政治家、企業技術などが標的にされ、狙われている。日本の主な情報・諜報機関(インテリジェンス・コミュニティ)には、独自のインテリジェンス機能を持っており、多くの機関が中核を担っている。たとえば、国内の外国スパイや極左・極右などの監視を担当し、その尾行・監視能力は世界レベルと評されている公安警察(警視庁公安部)。法務省の機関であり、国内外の公共の安全に関する情報を収集し、約1,600〜1,700人規模で活動している公安調査庁。平成9年に創設された自衛隊の防衛・技術・電波情報の中央機関として期待が高まっている防衛省情報本部。内閣の重要政策に関する情報を収集・分析する機関を内閣情報調査室と呼ぶ。なぜ、日本が「スパイ天国」と呼ばれるか?諸外国のような「スパイ防止法」が存在せず、産業スパイなども捕まえにくく、法整備の遅れが叫ばれている。高度な技術を持つ企業が多く、狙われやすい環境にある経済と技術情報。 元公安捜査官によると、スパイは一般市民に混ざって生活しており、SNSに写真を載せるのを極端に嫌がる特徴があると話す。「スパイト行動」(※7)とは、自分が損をしてでも相手を陥れようとする「意地悪」な行動を指し、日本人は欧米人と比較してこの傾向が顕著であるという行動経済学の研究結果が出ている。具体的には、公共財(皆が恩恵を受けるもの)に投資する実験で、自分は利益を得られるのに相手がただ乗りしても、相手の利益を減らすためなら自分の利益も減らす(投資しない)選択をする人が多い事が示された。これは、嫉妬や同調圧力、不寛容さが背景にあると言われ、ネットの誹謗中傷やカスハラなどにも通じる側面として指摘されている。主なスパイト行動の具体例とメカニズム(※8)には、投資すれば自分も相手も得をする状況で、相手が「ただ乗り」(投資しない)するのを許せず、自分の利益が減る(投資しない)事で相手の利益も減らそうとする「公共財」実験。また、「スパイト・ディレンマ」には相手を出し抜こうとする心理が働き、結果的に自分も損をするというジレンマ状態になる場合もある。嫉妬、敵意、同調圧力、他者への不寛容さなどが引き金となりやすく、利己的でも利他的でもない「第三の選択肢」と言われる背景もある。これらが、日本で顕著な理由(研究による示唆)には、大阪大学などの研究で、日本人、アメリカ人、中国人を比較すると、日本人がスパイト行動を特に多くとる事が示された研究結果が出た。「足を引っ張る」「出る杭は打たれる」といった文化的な側面と関連している可能性が指摘されている。スパイト行動がもたらす影響には、ネットの誹謗中傷、カスタマーハラスメント(カスハラ)など、他者を攻撃する行動の背景がここに繋がり、社会的な問題となっている点。ダイバーシティとの関連には、個性を尊重しにくい社会の側面とも関連し、多様な生き方を許容するダイバーシティの実現を妨げる可能性もあると示唆される。スパイト行動は、研究を繰り返す事により、次第に協力的になる結果も出ており、社会的制裁として機能する側面をも持つ。この映画の主人公は、「セバスチャン」という偽名を使って、自身の創作の為だけに同性愛者の世界に潜入を試みた。ゲイとしてスパイト行動を繰り広げながら、怪しげな二重生活で得た知識を創作に盗用しようとしたが、この生活の選択が思わぬ方向に転び、彼を窮地に立たせてしまう。彼が人生で選んだ代償は、余りにも大きく取り返しの付かない現実であった。映画『SEBASTIAN セバスチャン』で出演した俳優のルーアリ・モリカは、あるインタビューにて自身が演じるキャラクターについて、こう話している。

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「ミッコ監督とあらゆるニュアンスを掘り下げていったので、まさに共同作業でした。ミッコはこのキャラクターを知り尽くしていたので、何時間もかけて脚本のあらゆるセリフを何度も読み返し、率直に話し合いました。『このシーンでは何が起こっているのか? マックスはこのシーンから何を得たいのか? 彼はこの瞬間に何を感じているのか?』と。そして、脚本のあらゆる部分をマックスの目を通して細かく分析していく作業は、本当に特別な経験でした。これまで、これほど実践的な経験をしたことはありませんでした。」(※9)と話す。マックスという青年は、二重生活をしながら、知らず知らずのうちに、自身の居場所を求めて翻弄していたという見方もできる。単なる創作材料を求めて、魅惑の同性愛の世界に取材をしに行ったつもりが、本当の自分が誰であれ、何であれかを確かめる為、無意識のうちにそう行動したとも読み取れる。潜入取材の為に未知の世界に入り込み、迷宮のような二重生活を選んだ果ては、自分自身の喪失だったのかもしれない。人生の選択において、正しさはどこにもない。あるのは、間違いを繰り返す人間そのものだけだ。

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最後に、映画『SEBASTIAN セバスチャン』は、ロンドンの街を舞台に、小説家の夢とセックスワークの狭間で揺れ動く青年の姿を赤裸々につづったドラマだが、実際は禁断の同性愛の世界にハマっていく中毒性を描いている側面もある。それは、この映画が描く同性愛の世界に限らず、無意識でハマってしまう出来事はこの世の中、山ほどある。薬物中毒(※10)、アルコール中毒、ギャンブル中毒など、一度ハマった沼から這い出れない耽溺性を持った禁断症状に悩まされる。この中毒症状に陥った人のその先に待ち受けているのは、破滅だ。中毒的禁断症状が、自身の理性を失わせ、人間本来の行動が制御不能となる。結果として、自身の人生を棒に振り、自分の存在そのものを破滅させる道に迷い込んでしまう。

映画『SEBASTIAN セバスチャン』は現在、全国の劇場にて公開中。
(※1)ホストに使った金額は“数千万円”「金で愛を買う」女性たちの売掛金問題…九州一の歓楽街・中洲でも立ち入り検査https://rkb.jp/contents/202312/202312209358/(2026年1月29日)
(※2)男の夜職は何種類ある?各ナイトワークの特徴や給料・適正を解説 【Q&Aも】https://tainew-otoko.com/plus/jobtype/night-all/shokusyu-hikaku/(2026年1月29日)
(※3)夜職は何種類ある?女性に人気のナイトワーク15業種を徹底解説☆https://www.tainew.com/plus/nightwork/knowledge/about-nighteork-type/(2026年1月29日)
(※4)夜勤はすべてがおかしくなる5つの理由!危険性や向かない人を解説https://rinroad.com/news/p10741/#:~:text=%E3%82%82%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%A8%E5%A4%9C%E5%9E%8B%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AF%E3%80%81%E5%A4%9C%E3%81%AB%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%99%E3%82%8B,%E8%B2%A0%E6%8B%85%E3%80%8D%E3%81%AF%E8%93%84%E7%A9%8D%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2026年1月30日)
(※5)日本にスパイは10万人?元公安警察が教える”スパイの特徴”にJO1佐藤が「いたわ」「友達でやたら…」https://times.abema.tv/articles/-/10117233#google_vignette(2026年1月30日)
(※6)日本が「スパイ天国」と呼ばれているのはなぜ? 世界中にいるスパイの活動と日本の課題【親子で語る国際問題】https://hugkum.sho.jp/738325#:~:text=%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E3%80%8C%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E5%A4%A9%E5%9B%BD,%E7%8B%99%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2026年1月30日)
(※7)“日本人は特にいじわる”とデータが証明?行動経済学が明かす「スパイト行動」https://data.wingarc.com/spiteful-behavior-33866/amp(2026年1月30日)
(※8)池上彰が解説「日本のスパイ能力」の実態、米英の機密情報共有の輪に加われるかhttps://diamond.jp/articles/-/321033(2026年1月30日)
(※9)Interview: Ruaridh Mollica on ‘Sebastian’https://filmupdates.net/2025/04/04/interview-ruaridh-mollica-talks-sebastian/(2026年1月30日)
(※10)「大麻使用していた」関大幼稚園侵入し職員羽交い締めで逮捕の男が供述 支離滅裂な発言もhttps://www.sankei.com/article/20260128-RA3WTVSNR5NCVI5766R2GQIZ3Y/(2026年1月30日)