映画『ペンギン・レッスン』人間とペンギンとの間に存在する見えない縁

映画『ペンギン・レッスン』人間とペンギンとの間に存在する見えない縁

人生を大きく変える奇跡になる映画『ペンギン・レッスン』

©2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED

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ペンギンは、人を癒す生き物だ。求愛時の首を左右に振り、フリッパーで叩く。威嚇の時は羽を逆立てる。愛情表現では、羽づくろいに一緒に寝てくれる存在。驚いた時には、目を大きく開ける。ペンギンの仕草には様々あり、水中ではフリッパーを羽ばたき高速で泳ぎ、陸上では立ったまま寝る。その時々によって、気持ちや状況に合わせてユニークな行動や仕草を見せるペンギン君(※1)は、動物園でも水族館でも人気ランキング上位に入るほど、子どもからも大人からも人気の動物だ。動物園、水族館でのペンギンは非常に人気が高く、「かわいい」「歩く姿が面白い」「ショーが楽しい」という理由で、子どもから大人まで、特に水族館の人気者ランキング上位に入る常連だ。動物園でも水族館でも展示されている事が多く、全国的にファンが多い動物の種類だ。 ペンギン達が人気の理由には、見た目の愛らしさ、キングペンギン、コウテイペンギン、アデリーペンギン、フンボルトペンギンなどの多様な種類、タッチングや餌やり体験ができる体験型イベント、イルカショーと並び、ペンギンのショーも人気で、ペンギン君達の頑張る姿に魅力を感じる人が大勢いる。ペンギンは水族館でも動物園でもどっちでも見る事ができるが、水族館の方がより多くの種類を観察する事ができる。また、動物園では陸上での行動や個体識別(フリッパーのタグなど)を眺めながら楽しめる傾向がある。どちらに行くかは、水中の姿を見たいか、陸上での姿や多様な種類を見たいかで選ぶと良いと言われ、あなたは水族館?動物園?どちらでペンギンを楽しみたいと考える?水族館の場合には、水中での泳ぎや多様な生態展示に特化していると言える。多くの種類(フンボルトペンギン、キングペンギン、ジェンツーペンギンなど)を間近で見れる機会が豊富。動物園の場合では、陸地での生活や子育て、個体ごとの特徴(フリッパーの番号や模様)を観察しやすいと言われる。動物園では、フンボルトペンギンの個体識別がしやすく、より「動物」としての観察ができる。ペンギンは動物園で見るか、水族館で見るかの議論の結論では、「水の世界」をメインに見たいなら、水族館へGO!「陸の上」での行動や種類ごとの違いをじっくり見たいなら、動物園へGO!ペンギン君達は「飛べない鳥」として有名だが、彼らは水陸両用なので、ペンギンを管理する施設によって、動物としての生体管理にはそれぞれ得意分野が異なる。ペンギン君を深く知れば知るほど、その可愛さに触れる事ができるだろう。 映画『ペンギン・レッスン』は、人生を諦めかけていた英語教師と、重油にまみれた瀕死のペンギンの出会いを描き、世界22カ国で刊行されたベストセラーノンフィクション「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」を映画化。ペンギン君達の可愛い仕草を見れば見るほど、誰もがその魅力に魅了される。

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映画は、1976年のアルゼンチンを舞台にしているが、まずは1970年代におけるアルゼンチンの社会情勢や時代背景について、迫って行きたい。1970年代のアルゼンチン(※2)はまず、「汚い戦争」と呼ばれる軍事政権下での人権弾圧(白色テロ)が起きた時代だ。ポピュリズム経済政策の失敗による深刻な経済危機(高インフレと低成長)、そして、それに伴う社会不安が特徴的であった。政治的経済的に非常に不安定な時代でもあり、1976年からの軍事独裁政権下で数万人が行方不明となり、死亡している。アルゼンチン経済は、国際金利高騰や外債問題に苦しみ、国民生活は困窮し続けた。亜の政治・社会において軍事政権と「汚い戦争」は、切り離せない出来事だ。1976年に軍事政権が樹立され、左翼ゲリラ取締りを名目に学生、ジャーナリスト、労働組合員などが弾圧され、3万人もの人々が殺害・行方不明となった。また、マドレ・デ・プラサ・デ・マヨとは、行方不明者の捜索と解放を求める「5月広場の母たちの運動」が結成され、人権活動の象徴となった時代だ。70年代における経済危機の深刻化は著しく、この時期を通して、高インフレと低成長が常態化し、経済は停滞し非常事態を引き起こした。また外債問題では、アメリカの金融政策転換(金利引き上げ)により、アルゼンチンは巨額の外債返済に直面し、経済はさらに悪化した。1970年代のアルゼンチンを総称すると、この国の70年代初頭(※3)は不安定な民政移管と軍事介入が繰り返され、ポピュリズム政策も経済の不安定さを増幅させただけだった。70年代半ば以降は、軍事政権による抑圧が強まり、経済は破綻寸前となり、80年代への深刻な経済構造問題を残す結果となった。この時代における亜は、先進国としての一面から一転し、経済的・政治的な混乱を極め、その後の「失われた数十年」へと突入する転換期だったと言われる。この過渡期となったアルゼンチンで、孤独な男と一匹のペンギンの出会いは男の人生を変えるターニングポイントとなり、アルゼンチン経済の背景の中、人々の心を癒すペンギンの存在にこそ、この国の未来への希望を象徴させるものになったのだろう。

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ペンギンの習性や仕草に関しては、上述したような行動をして、人々を魅了させている事はよく理解できるが、ペンギンが人間に、人間がペンギンに与える影響(※4)はいかがなものだろうか?ペンギンは、環境へのポジティブな影響(うんちによる雲形成)と、人間活動によるネガティブな影響(気候変動、汚染、漁業)の両方を受け、医学・生態学研究の対象にもなっている。人間にウイルスを媒介する可能性(ニューカッスル病ウイルスなど)も指摘されているが、ペンギンの行動や生態は地球温暖化や海洋保護の重要性を私たちに示唆し、保全活動の対象となっている。 ポジティブ・ネガティブ両面においてペンギンが人間に与える影響には、間接的な環境へのポジティブな影響、ペンギンの大量のフンに含まれるアンモニアが雲の形成を助け、太陽光を反射して地球を冷やす「冷却効果」をもたらす雲形成の促進、ウイルス感染のリスクやペンギンが持つウイルスが人間に与えるネガティブな影響、人為的要因によるペンギンへの影響、気候変動、海洋汚染、過剰な漁業活動がペンギンの生息環境を悪化(※5)させる。また、人間の活動が営巣地や移動経路に影響を与え、新たな捕食者の出現が生態系への介入となりペンギンへの脅威をもたらす。ポジティブな面でもネガティブな面でもペンギンの命を脅かす一方で、ペンギンの存在が人間にも影響を与える相互的に波及していると言える。私達人間がペンギンから学ぶ事・研究対象としての側面では、ペンギンが直面する脅威に対する環境保全の意識向上(※6)、ペンギンの特殊な呼吸システムや長距離移動、繁殖行動は生態学や医学研究に対して生物学的医学的知見(ウイルス学)も得られる。「ファーストペンギン」のように、リーダーシップや行動力の象徴として、また「ペンギン系女子」のように、キャラクター性(現実的で冷静、分析的)を表す言葉が人間社会の社会的文化的な側面で使用されるようになった。ペンギン君達は、地球環境のバロメーターであり、私達人間が地球と共存する上で、その存在を理解し、保護して行くべき重要な存在だ。地球上においてペンギンの存在や役割が重要視されている中、海上環境における重油問題もまた、環境破壊の一つとして注目されている。1950年代以降、世界の至る所で重油違法投棄問題に着目し、議論されはじめている。「「オリバ号事件」経過報告〜その3〜」にて、重油の違法投棄の問題を鋭く指摘している。「1950年代以降、半世紀以上続いてきた「重油流出事故」にともなう海鳥救護活動の歴史を概観しても、大型原油タンカー事故あり、貨物船の座礁事故あり、貨物船の沈没事故あり、かなり以前に沈没した船舶からの突然の流出事故あり、重油の不法投棄あり、バラスト水の不法投棄あり、沿岸工場からの重油流出事故あり」(※7)とあり、人間の身勝手な行動(重油やゴミの不法投棄や生活・工場排水による水質汚染、気候変動(海水温上昇、海洋酸性化)、外来種侵入、水中騒音、深海採鉱)が多数あり、人間やペンギンだけでなく、多くの生物達の環境を脅かしているのは私達人類自身だ。1969年のカリフォルニア州サンタバーバラで起きた大規模油流出事故を背景に、環境保護への意識が高まった。この時期、世界各地で油流出事故に関する灼熱の議論が巻き起こった。映画『ペンギン・レッスン』を監督したピーター・カッタネオ監督は、あるインタビューにて本作のペンギン君と周囲の人間の関係性について、こう話す。

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カッタネオ監督:「トム・ミッチェルとは制作中ずっと話し合いました。『ペンギン・レッスン』を作るには彼の承認が必要だったんです。トム・ミッチェルは(回顧録では)50代ではなく20代で、その点にとても賛成してくれました。「ペンギンには忠実で、人間の物語を語れ」という考え方でした。映画が完成した後、彼は「君はペンギンが親友であるという点をうまく捉えているね」と言ってくれました。それは本当です。彼はこう言いました。「アパートにいた時、カーテンが閉まっていて、生徒の一人がペンギンにスペイン語で話しかけているのが聞こえたんだ。街で女の子に会ってデートに誘いたいんだけど、なんて言えばいいんだろう?誘うべきだろう?」って。私は「ああ、あのシーンを入れればよかったのに。どうして彼は実際にそんなことがあったって教えてくれなかったんだろう?」と思いました(笑)。つまり、当時学校で起こったことについてのトムの証言が、私たちの物語に大きく影響しているということです。ペンギンの素晴らしいところは、優れたセラピストのようにあまり話さないことです。ただ耳を傾け、相手が話すことを許し、まるで自分自身のことを聞いているかのように、何らかの解決策を導き出してくれるのです。」(※8)と話す。ペンギン君達は、人間の話し相手であり、相談相手であり、癒しを与えてくれる存在だ。普段、この物語のようにペンギンと一緒に生活を共にする事はほとんど無く、出会えるとしたら、動物園か水族館に赴くしか選択肢はない。けれど、ペンギンのように他の動物達も人間にとって同じ役割を果たしてくれる存在だ。動物は人間が落ち込んだ時、そっと寄り添ってくれ、慰めてくれる。嬉しい時も一緒に喜んでくれ、言葉を話せなくても、人間と気持ちはリンクする。人間が不法に廃棄した重油によって、命の危険に晒されたとしても、人間が持つ優しさによって救われた小さな命が恩を返してくれる。

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最後に、映画『ペンギン・レッスン』は、人生を諦めかけていた英語教師と、重油にまみれた瀕死のペンギンの出会いを描き、世界22カ国で刊行されたベストセラーノンフィクション「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」を映画化した物語だが、単なる映画化作品ではなく、ポップでカジュアルに飾られた本作が伝えている事は人間と動物の絆だ。人間が持つ優しさは必ず、動物達の心に伝わっている。混乱期の70年代のアルゼンチンで育まれた孤独の男と人間社会に迷い込んだ一匹のペンギンの絆は、何年経とうが変わらず色褪せない。水質汚染によって住む場所や命を奪われる水中の動物達が数多くいる昨今、動物愛護団体が動物達の命を救おうと粉骨砕身する姿(※9)は美しい。人間とペンギンとの間に存在する見えない縁(えにし)は、今の世にも必ず残されているはずだ。

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映画『ペンギン・レッスン』は現在、全国の劇場にて公開中。

(※1)子どもの好奇心を育む動物 子どもたちに人気の動物第1位は…?https://benesse.jp/kosodate/201610/20161001-1.html#:~:text=%E4%B8%80%E7%95%AA%E4%BA%BA%E6%B0%97%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%20%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%82%92%E9%81%B8%E3%82%93%E3%81%A0%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E3%81%8B%E3%82%8F%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%8D%E3%80%8C%E6%B0%B4%E6%97%8F%E9%A4%A8%E3%81%A7%E8%A6%8B%E3%81%A6%E6%B0%97%E3%81%AB%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A0%E3%80%8D%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%80%81%E3%81%A8%E3%81%8F%E3%81%AB%E6%AD%A9%E3%81%8F%E5%A7%BF%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%82%8F%E3%81%84%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%95%E3%82%92%E6%8C%99%E3%81%92%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%8B%E3%81%9F%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%8F%E8%A6%8B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%202%E4%BD%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%80%8D%E3%80%82%20%E6%B0%B4%E6%97%8F%E9%A4%A8%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%93%E3%82%8D%E3%82%82%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%A6%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%8F%AF%E9%BA%97%E3%81%AA%E5%A7%BF%E3%81%AB%E6%84%9F%E5%8B%95%E3%81%99%E3%82%8B%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%82%82%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2026年1月11日)

(※2)第3章 アルゼンチン 一経済停滞と産業保護の制度KSS041200_005.pdf(2026年1月12日)

(※3)【ゼロからわかるアルゼンチン史】 第3部:軍政の悲劇と経済危機を経てhttps://note.com/buenosinsidermag/n/nf949dca38d61(2026年1月12日)

(※4)危機にさらされている世界中のペンギンを救うhttps://www.rolex.org/ja/rolex-awards/environment/pablo-garcia-borboroglu(2026年1月12日)

(※5)ペンギンのふん、南極で地球温暖化の影響を抑える可能性-研究結果https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-05-23/SWOGLVDWX2PS00(2026年1月12日)

(※6)ペンギンと温暖化https://circureact.com/column/enviromental/%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%81%A8%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96/#:~:text=%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AB%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%82%84%E5%AF%84%E4%BB%98%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82&text=%E3%81%BB%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%82%82%E9%87%8E%E7%94%9F%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%B3,%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%B3%E5%9F%BA%E9%87%91%E3%80%8D%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2026年1月12日)

(※7)「オリバ号事件」経過報告〜その3〜http://www.penguin-ueda.net/weblog/penguins/2894(2026年1月12日)

(※8)Peter Cattaneo on Walking a Fine Line with the Charming “Penguin Lessons”https://moveablefest.com/peter-cattaneo-penguin-lessons/(2026年1月12日)

(※9)島忠が目論む「動物保護活動新時代」の幕開け「ステイホーム」でペット人気が高まっているhttps://toyokeizai.net/articles/-/409909(2026年1月12日)