映画『わたしの頭はいつもうるさい』今の自身の生き方に託されている

映画『わたしの頭はいつもうるさい』今の自身の生き方に託されている

2025年5月22日

「応答せよ、私。」映画『わたしの頭はいつもうるさい』

©食卓

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胸が痛い物語だ。今の自分は、本当に望んだ今の自分自身だろうか?10代の頃、20代の頃に思い描いた今の私が、本当に今、存在するのだろうか?そうやって、過去にしがみついて、不透明さの未来に焦燥感を募らせる。これは、誰もが経験した人生の通過儀礼ではないだろうか?いつから、今の自分が出来上がったのか?いつから、思い描いていた未来とは違う道を選択したのか?世の大人達は皆、現実に打ちのめされて、今の生き方に諦めを覚えているだろう。今の私は、私でいい。これ以上、求めても未来だけでなく、現実にある現状すら変えることはできない。どれだけジタバタ反抗しても、どれだけ動き回っても、残念ながら、今の私を変える事はできない。望んでいなかった現実に身を投じて、変わらない未来に安心を覚えるだけ。映画『わたしの頭はいつもうるさい』は、思い描いたような人生が送れず将来に対する漫然とした不安や焦燥感を抱くなど、人生の1/4が過ぎた20代後半から30代が陥りがちな心理状態である「クォーターライフクライシス」をテーマに描いた作品。ジリジリと先立つ苛立ちに押し潰されそうになりながら、焦慮に駆られる人々は、大勢いる。その感情でさえも忘れて、日夜、ロボットのように日々を働くだけ。あの頃、思い描いた未来は、どこに行ったのか?それは、誰にも分からない。見失ってしまった今の自分を取り戻すには、今の自分を変えるしか道はない。

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20代後半から30代前半にかけて、人生や生き方について漠然とした不安や焦燥感、憂鬱感を感じる期間をクォーターライフクライシスと呼ぶ。人生の4分の1が過ぎた時期に対してクォーターと名付け、この時期の寄る辺のない押し寄せる感情に右往左往させられる。具体的な例として、社会人としての社会経験を積む中、学生時代に抱いていた理想と現実の差に悩み、仕事へのやりがいを感じられない、経済的な不安を感じる若者(※1)が年々、増えている。この誰にも打ち明けられない感情と向き合いながら、若者は自身の感情に押し寄せる焦燥感を乗り越えなければならない。実際は、乗り越える必要もなく、ただただ海面でフラフラと漂うかの如く生きているだけでもいいだろう。もし、このクォーターライフクライシスに陥ってしまったら、「自分自身を見つめ直し、自己認識を深めることが重要です。日記をつけたり、理想と現実を比較検討したりすることで、自分の価値観や課題を整理できます。また、他者との比較をやめ、SNSから距離を置くことも効果的です。必要であれば、専門家やメンターに相談することも検討しましょう。」(※2)と専門家は話す。どんな時でも、自己分析が大切だ。落ち込んでしまった時、何か壁にぶち当たった時、ひと呼吸置いて、今置かれている現状の自分自身と向き合う事が大切だ。

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このクォーターライフクライシスと延長線にあるのが、中年期に起こすミッドライフクライシスだ。クォーターライフクライシスが、20代後半から30代前半の年齢層に現れる現象であるなら、ミッドライフクライシスは40代から50代の年齢にかけて、子ども達が自立し、親自身が育児から手が離れた瞬間に自身の人生に対して何が残っているのかと、ふと考えて気持ちが落ち込む時期をミッドライフクライシスと呼ぶ。人生の岐路、不安と葛藤、自己評価の低下、身体的変化、社会的変化など、様々な原因が混ざり合い、その結果、ミッドライフクライシスを引き起こしてしまう。どの年代にも起こりうる外側への焦燥感の表出は、クォーターライフクライシスもミッドライフクライシスの期間だけに起こるものではなく、いつでもどこでも、あらゆる年代でどんな人にも襲って来る感情だろう。20代は10代の頃を、30代は20代の頃を、40代は30代の頃を、50代は40代の頃を、60代は50代の頃を。いや歳を重ねれば重ねるほど、過去の数十年間に対する後悔と焦り、若い頃にできなかったやり残した事を眺望する。この忸怩たる想いを抱えて、人は皆、今を生きている。それは若い世代でも中年の世代でも関係なく、今の世の誰もが同じ想いを抱いて生きている。あの時、あぁしていれば良かったなと思う後悔と望んだ未来の今を生きていないと思う焦りを誰にも言えずに未来への不安を抱いている。

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最後に、映画『わたしの頭はいつもうるさい』は、思い描いたような人生が送れず将来に対する漫然とした不安や焦燥感を抱くなど、人生の1/4が過ぎた20代後半から30代が陥りがちな心理状態である「クォーターライフクライシス」をテーマに描いた作品だが、この感情はどの世代でも誰もが抱く強い気持ちだ。過去への後悔を抱いて、今の自身が歩む人生に不安を抱える。今望んだ人生が、過去に思い描いた未来でなくても、今は今しかない。歩んで来た人生の道は変えることはできないが、これから歩もうとする未来へ続く道は今の生き方や立ち振る舞いによって、いくらでも未来を変える事はできる。どんな未来を迎えたいのか、どのように生きたいのか。それは、今の自身の生き方に託されている。

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映画『わたしの頭はいつもうるさい』は現在、5月16日(金)より東京のテアトル新宿にて上映中。6月23日(月)の1日限定上映で大阪府のテアトル梅田にて上映予定。また、7月25日(金)より下北沢シモキタエキマエシネマK2で上映が決定した。

(※1)30代前後に訪れる「クォーターライフクライシス」の乗り越え方https://career-research.mynavi.jp/column/20240913_85662/#:~:text=%E3%82%AF%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%AE%E4%BD%8E%E8%BF%B7%E6%9C%9F%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%84%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82(2025年5月21日)

(※2)クォーターライフクライシスとは?急増の理由や対策方法、接し方を解説https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/71077/#:~:text=%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%E8%87%AA%E5%88%86%E8%87%AA%E8%BA%AB%E3%81%A8%E5%90%91%E3%81%8D%E5%90%88%E3%81%86,%E7%9B%B4%E3%81%99%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(2025年5月21日)