家族の愛と喪失、記憶と希望を描く映画『HERE 時を越えて』


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数百万年という時を超えて、私達人類は一つの縁で結ばれている。恐竜が生きた中生代から絶滅した氷河期、人類が誕生した旧石器時代と新石器時代で跨る原始時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、江戸時代、明治、大正、昭和、平成の近代史を経て、そして令和への時代を軽々と超越した私達。紀元前BCから紀元後AD、20世紀から21世紀へ、自由自在に時空を飛び越え、私達は令和という時代の今ここで生きている。一つの家族が、一人の人間が、数百万年前の「私」と今の「私」が遺伝子レベルなのか、よりスピリチュアルな部分なのか分からない、目には見えない血や絆、運命の歯車によって繋がり合い共鳴し合う。時空を超え、時間を飛び越え、「今」という水流に乗りながら、私達が長い時代を生きて来た水源を辿り、過去を遡る。断崖絶壁の高い滝、万馬奔騰の激流に晒されながら、明日を夢見て息づいている。光陰矢の如し。時間は、私達の人生や生活を待ってくれない。私達自身が、上手に時間と向き合い、時間を上手に操らなければならない。映画『HERE 時を越えて』は、その場所に生きる幾世代もの家族の愛と喪失、記憶と希望を描き出す壮大な大河ドラマ。あなたの家族、そして親、そのまた上の親の世代、そのまたまた上の世代、家族は幾重にも繋がる見えない絆で築かれる。

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なぜ、時間は一本の線で結ばれていないのか?〇〇期や〇〇時代で区分され、私達にとって、理解しやすい期間として時間が捉えられている。それは、学術上、学問上、カテゴライズした方が分かりやすいから中世期や石器時代と名付けられただけで、時間そのものは分類する事も、区分けする事もできないはずだ。時間は、目に見えない速さで前に進み、この1分1秒はもう二度と、還って来ない。どれだけ嘆いても、どれだけ落胆しても、一度、砂のように掌から零れ溢れた時間は取り戻せない。だからこそ、私達は与えられた今を大切に生きなければならないのではないだろうか?時間に関して、「人間は誰しもが過去と未来を客観的なものであるかのように考える。しかし、実際の「時間」はみなが思うような確固たる存在ではない。ならば「時間」の流れとは、実は意識の錯覚に過ぎないのではないか?」と4世紀に実在した哲学者の聖アウレリウス・アウグスティヌスは考えた。また、アウグスティヌスの哲学思想を元に「『時間』とは、前と後ろにかかわる変化の数である」(※1)と考えたのが、古代ギリシャの古典期に実在した哲学者のアリストテレスだ。彼は、人が感じる時の流れ(たとえば、人の老化や季節の移ろい)の中に「時間」が存在すると提言した。そして現在、数千年の時が経ち、時間に対する概念はどう変わったと言えるだろうか?16世紀ルネサンス期に活動した哲学者のミシェル・エケム・ド・モンテーニュ氏が残した「人生の価値は時間の長さではなく、その使い道で決まる。」(※2)という言葉が、今でも時間に対する指針として残っている。どの人にも平等に存在するのが、時間だ。産まれてから死ぬまでの限られた時間の中で、私達自身は自身に与えられた時間をどう有効活用するのかが、人生評価として問われる。長く生きたから良いのではなく、短調関係なく、自身の人生の時間に何を残せるのかが、大切なのだ。

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また、地球が誕生してから現在までは、約46億年になると言われている。この46億年という膨大な年数を時間に換算すると、46億(年)を365(日)で割ってみれば、見えて来るものがある。まず、1日が何年か算出される。1日はなんと126万年に相当する。同様に1時間は5万2500年、1分は8750年、1秒は146年。地球は、短い時間の中で急速な時間の流れを感じて生きている。それを人間の一生に換算(※3)すると、僅か0.5秒に過ぎない。私達が寿命70年から80年、時に100年を生きたとしても、地球の時間軸で考えると、たったの0.5秒となる。如何に、私達の人生の時間が、短命であり薄命であるか可視化できるだろう。地球の時間から見たこの0.5秒という人生の中で、私達に何ができるのか共に考えたい。人間の視点から考えれば、産まれて死ぬまでの私達人類に与えられた時間は、25億秒(※4)(計算式:2,500,000,000秒÷365日÷24時間÷60分÷60秒=平均79.2年(個人差もあるだろう))と言われている。もっとスケートを大きく考えると、宇宙が誕生して、約138億年が経過し、これを時間に換算すると、138億秒(4.37×10^16秒)という答えが出てくる訳だが、この宇宙誕生や地球誕生から考えて、私達が今生きているこの時間が如何に一瞬であるか理解できるだろう。光陰矢の如しなんて言葉があるか、これよりも速いスピードで時間が過ぎていると予測できる。体感では感じられない事かもしれないが、1日1日が身体で感じる時の速さよりもより速い速度で過ぎ去っているのだ。光陰流水、烏兎匆匆。過ぎ去りし日々の中、私達が今、何ができるのか1秒1秒の時間の中に込めたい。映画『HERE 時を越えて』を制作したロバート・ゼメキス監督が、あるインタビューにて本作について、こう話している。

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ゼメキス監督:「この支配的な視点こそが、究極の覗き見ストーリーであり、まさにこの映画の真髄です。面白いのは、観客がこのたった一つの視点でしか何も見られないということに気づくと、不思議なほど親密な雰囲気になるということです。観客は『ああ、寝室やキッチンで彼らが何を話しているのかは分からない。この家のたった一つの部屋、たまたまリビングルームだったこの一つの視点からしか、彼らについて何も分からないんだ』と理解するのです。そして、それが非常に強い親密感となり、観客は登場人物の行動や言葉を理解しようと集中し、身を乗り出すのです。観客が、ユニークで、他とは違っていて、よくできていて、面白くて、感情に訴えかける要素があって、心を揺さぶられる映画を見たいと思っていることを願うばかりです。私たちはそれを実現するために最善を尽くしました。観客が自分たちが言う通りの作品を見たいと思っているかどうかは、実際に見てみるしかないでしょう。どうなるか、見守ってみないとわかりません。」(※5)また出演者のトム・ハンクスは、「17歳では、自分が過去に生きていることに気づかない。そして22歳になると、自分の未来への道しるべとなる決断を下していることに気づかない。」(※6)と、この役柄に挑む中で役者として感じた事を話しているが、これは現実社会での10代、20代の少年少女、青年成人にも当てはまる発言ではないだろうか?10代では、自身の過去に関して無頓着であり、20代では自身の未来が自らの行動でどう変化もたらすのか未知数なのだ。それは、30代や40代、年配の50代以上の世代の方にも言える事だろう。人は、過去に生きる生き物だ。過去に体験した出来事に悔やみながら、明日を生きている。人生の悔いを少しでも減らす為に、今を一生懸命生きているのではないだろうか?
最後に、映画『HERE 時を越えて』は、その場所に生きる幾世代もの家族の愛と喪失、記憶と希望を描き出す壮大な大河ドラマだが、定点カメラが見つめたその先にあるのは、私達が常日頃過ごしている日々の時間が横たわる。光よりも速い速度で過ぎ行く時の狭間で、私達は今を生きている。もし過去も未来もないと言うのであれば、この1分1秒に与えられた「今」に対して、私達は何ができるのか考えたい。私達は過去に起きた出来事を悔いない為に、今ここで生きているのだろう。

映画『HERE 時を越えて』は現在、全国の劇場にて公開中。
(※1)アリストテレス「時間は流れていない…」2500年前のつぶやきを、ついに最新科学が解明https://gentosha-go.com/articles/-/46340(2025年4月14日)
(※2)「人生の価値は、時間の長さではなく、その使い道で決まる。」https://www.academy.co.jp/tips/courage_10_times_20200530/(2025年4月14日)
(※3)地球の歴史を一年で表すとhttps://www.gyosei-system.co.jp/topics/483#:~:text=%EF%BC%91%E6%97%A5%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A8%EF%BC%91%EF%BC%92%EF%BC%96,%EF%BC%91%E7%A7%92%E3%81%AF%EF%BC%91%EF%BC%94%EF%BC%96%E5%B9%B4%EF%BC%81(2025年4月14日)
(※4)いままで「何秒」生きてきた?「ちょうど1億秒」は何歳か?…意外と知らない“人生を秒数で表す”計算方法https://gentosha-go.com/articles/-/51716#google_vignette(2025年4月14日)
(※5)Robert Zemeckis Didn’t Initially Know If ‘Here’ Would Work As A Moviehttps://www.forbes.com/sites/simonthompson/2024/11/01/robert-zemeckis-didnt-initially-know-if-here-would-work-as-a-movie/(2025年4月14日)
(※6)Robert Zemeckis Breaks Down the Cutting Edge Tech That Powered ‘Here’: ‘We Could Not Have Made This Movie Five Years Ago’https://variety.com/2024/film/features/robert-zemeckis-here-tom-hanks-aging-tech-1236196938/(2025年4月14日)