年始一発目、あなたを最高にハッピーにする映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』


AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA –
SAME PLAYER – KABO FILMS – ECHO STUDIO –
BNP PARIBAS PICTURES – IMPACT FILM
まったく、フランスのコメディはジョークが過ぎる。犯罪者が、障がい者達が集うサマーキャンプに紛れ込んで、悪の心が解き解されて行くなんて、ありそうでありえない物語だ。障がい者の世界を何と思っているのか?と、訝しむ人もいるだろう。私自身もその一人であるが、少し視点を変えると、健常者と障がい者の心の交流が描かれていると思えば、それは今、社会全体が求めている課題かもしれない。コメディであるからこそ、非常に荒唐無稽であり、ついさっきまで犯罪を犯して来た者が罪とは真逆のコミュニティに身を投じる事が、実際に起きたら障がい者達の命も危なく、常に危険に晒される状態になるかもしれない。けれど、これは娯楽という名の創作物であり、単なる想像と創造が生んだ産物だと考えれば、笑って過ごせそうだ。そして、この物語の主軸にあるのは、罪と無垢の二項対立の問題提起だ。この相反する課題の先にある未来を、想像して欲しい。まったく方向性の違う2種類のテーマが混ざり合う時、どんなシナジー効果が生まれるというのだろうか?映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』は、宝石泥棒の親子が、障がい者施設のサマーキャンプに逃げ込んだことから巻き起こる騒動を描き、フランスで大ヒットを記録したハートフルコメディだ。親子で宝石泥棒など、絵に描いたような設定ではあるが、物語全体を絵本仕立てのように仕上げ、おとぎ話のように語り掛ける意図があるのかもしれない。悪の権化の宝石泥棒の親子が、どう人間性を育んで行くか乞うご期待だ。

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親子で犯罪者とは、なかなか悪の道を地で行く落ちぶれた人間だ。犯罪者グループは横の繋がりが強く、家族での犯罪組織もよく耳にするが、さほど多くはない。犯罪者集団の繋がり(※1)には、組織の形態によって大きく異なるが、伝統的な強固な結びつきから、現代の匿名性の高い緩やかな繋がりまで、多様な形態が存在する。 主な繋がりの種類には、1. 伝統的な犯罪組織、2. 匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)(※2)、3. その他の繋がりの3種類がある。1は、特に明確な階級や内部規則、規律が存在し、構成員は比較的固定されている。 たとえば、組織内情報共有する疑似血縁的・徒弟制度的な繋がり、地理的な繋がり、経済的な繋がりがある。2では、近年増加している形態で、SNSや求人サイトを通じて実行役を募集する「闇バイト」が典型例。金銭目的で集まり、役割分担と使い捨てが明確であり、SNSなどインターネットを通じた繋がりや流動的な繋がりが考えられる。3では、共犯関係が成立し、収監経験を通じた繋がりや共通の背景(年齢、性別など)が考えられ、少年犯罪もこのような繋がりで起こる場合もある。現代において、暴力団などの伝統的組織と「トクリュウ」のような新しいグループが資金面で連携しているケースも確認され、犯罪者集団の繋がりはより複雑化・多様化している背景がある。 その一方で、家族間で犯罪を犯す人間は少ないが、それでも、家族同士が結託し、罪を犯す者も少ながらずいる。過去には、ローカルであるものの家族が集まって窃盗を繰り返す親子(※3)が現実にいる。殺人に比べれば窃盗が微罪にも感じるが、犯罪は犯罪だが、より大罪となる殺人事件を犯した家族がいる。それが、大牟田4人殺害事件(※4)だ。反社会的勢力に身を置く4人家族が、それぞれに共謀し、犯した連続殺人・死体遺棄事件。家族4人全員が、死刑判決を受けて、現在、拘置所に収監されている恐ろしい事件だ。ごく稀に、家族同士で犯罪行為に走る者が、一部存在するが、反社会的な犯罪を犯す背景には、その国の社会的背景、経済的背景、貧困社会や格差社会が産み落としたであろう負の連鎖が積載している。フランスの場合(本作は、フランス映画)、たとえば、2025年のフランス経済は、低成長、巨額の財政赤字、そして30年ぶりの高水準となる貧困率上昇という厳しい背景を抱えた一年だった。マクロン政権下の構造改革(※5)が限界に達し、インフレや高金利の余波が家計を直撃。貧困に喘ぐフランス人家族はいないにしても、フランスは現在、移民問題で頭を抱えている。偏見ではなく、現実の問題として、貧困で苦しむ移住者たちが犯罪に走るケース(※6)は良くある話で、それこそが現代フランスの現実なのかもしれない。年末に起こったルーブル美術館での強盗事件が、まさに今を象徴する出来事だろう。この点を踏まえて考えると、もしかしたら、この作品に登場する強盗親子の存在が何ら嘘ではなくなる話になる。現実に、こんな家族がいてもおかしくない社会情勢に対して、もっと良くする方法を思いつかないといけない。

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この作品が主題にしているテーマは、「障がいを持つ者の世界に、どうコミットメントして行くか」だ。私達が、常日頃生活していれば、そう簡単に彼らの世界に入る込む事はできないし、出会う事もそうそうない。学童期は、同じ学校で障がいを持つ子と一緒に同じ時間を過ごしていたが、大人になればなるにつれ、健常者は一般社会に就職、障がいを持つ方は作業所に通所するようになると考えれば、大人にれば健常者と障がい者が出会う機会は限りなく少なくなる。だからこそ、私達は少しでも障がい者の方と関わるチャンスを作る方法を考えた方がいいのかもしれない。障がい者の世界(支援活動やコミュニティ、障がい当事者の生活圏)に、家族や専門職以外の「関係ないの人(第三者)」が入って来るケース(※7)は、現代においてボランティア、地域ボランティア、理解ある市民など様々な形で存在する。まず、障がい者の生活圏内に入って来る人は、どのような方が入って来るのか?地域のサポート団体や社協(社会福祉協議会)を通じて活動するボランティアの方々。地域のイベントや防災活動を通じて、自然な形で障がい者と交流する地域ボランティアや学生。インクルーシブ社会(誰もが排除されない社会)を目指し、個人のスキル(プログラミング、趣味など)を生かして関わる理解ある市民・技術提供者。そして、なぜ無関係な人が入って来るのか?社会全体は今、「心のバリアフリー」を推進し、障がいの有無で分け隔てない社会を目指す意識が広がりつつある。がい者福祉サービスだけでなく、地域生活を支える多様な人々が求める支援ニーズの多様化。関わり方には様々な形があり、その重要点が何かを議論されている。まず、適切な距離感を持つ事。支援員は利用者と適切な距離感を保ち、自立支援を意識する。そして、コミュニケーションの努力をし、障がい特性による対人関係が難しい場合でも、理解しようとする努力する事が求められる。最後に、対等な関係も必要であり、「支援する人/される人」という固定的な関係ではなく、お互いが刺激し合える水平な関係が理想とされる、3つの点が重要視される。 また、障がい者の方の世界に入る際・関わる際の注意点としては、障がいや病気を理解し、自尊心を傷つけない接し方への知識と配慮。相手のニーズより自分の都合を優先させ、自己満足にしない。新たに活動を始める場合、すでに地域で活動している団体への配慮や連携を大切にし、既存団体への尊重を忘れない事。たとえ無関係者であっても、一方的な思い込みや、安全な距離感を持たない介入は、当事者にとってストレスや負担になる可能性があり、福祉的意識や正しい理解に基づいた行動が重要とされる。今の社会で最も無くさないといけない事は、エイブリズムへの価値観(※8)だ。簡単に言ってしまえば、優生至上主義や健常者優先主義、非障害者優先主義、健常者中心主義。「能力が高い人は優れている」「劣っている人は排除する」考え方に対して、私達はしっかりと否定をしなければならない。日本社会の根底にある優生思想の改善が今、求められている。映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』を制作したアルトゥス監督は、あるインタビューにて本作の障がいである事、大人になる事について、こう話している。

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アルトゥス監督:「小さい頃の夢は、公園で障害者を散歩させる事と答えていた。それは、本当の仕事ではないと思う。なぜかはわからないけど。僕はいつも、何か特別なもの、言葉の良い意味でのシンプルさ、つまり社会的な障壁や自分たちが作り出した規範がない人たちに惹かれてきたんだ。(中略)彼らには、健常者の笑顔のような偽善的な笑顔がない。彼らはそういう笑顔の作り方を知らない。それは良いことだ。このシンプルな人間関係は、信じられないほど気持ちがいいんだ。頭部に影響を及ぼすあらゆる障害において、常に子供時代とのつながりがあり、子供時代のままでいることに気づくのは驚くべきことです。その子供時代の泡の中に留まっていることに気づくのは、本当に素晴らしいことです。私自身も少しはそう感じているので、共感を覚えます。年を重ねることへの不安、大人になることへの不安。ジャック・ブレルの『大人にならずに年を重ねる』という、私がとても好きな一節があります。まさにその通りだと思います。大人になるのは苦痛なのです。」(※10)と話す。あるゆる障壁を乗り越えて、私達は本当に自然に笑う事を忘れてしまった大人達がたくさんいる。子ども時代に感じた屈託のない純粋な笑いは、どこへ行ってしまったのか。愛想笑いしか知らない私達にとって、心の底から笑う事を教えてくれる障がいを持つ方々の自然な笑い方こそが、殺伐とした今の世の中に必要とされている要素かもしれない。

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最後に、映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』は、宝石泥棒の親子が、障がい者施設のサマーキャンプに逃げ込んだことから巻き起こる騒動を描き、フランスで大ヒットを記録したハートフルコメディだが、単なるコメディではない。一歩引いて、この物語に登場する人物の一挙手一投足の行動を一つずつ覗いてみれば、ハラハラさせられっぱなしだ。上記の記述を踏まて、この映画に登場する2人の親子の存在は実に荒唐無稽である。なぜなら、この物語自体が突拍子もなく絵空事にも思えてならない。障がいを持つ方への知識や配慮が分からない強盗犯の接し方や発言に心配させられっぱなしだ。冒頭で間違えてサマーキャンプ行きのバスに乗せられてしまった2人の強盗が、どこに連れて行かれるのか、まるで連行されてしまう姿に笑いが止まらない。配慮という言葉すら知らない強盗犯が、もしかしたら、旅の途中で障がい者の方々に牙を剥くかもしれないと考えたら、障がい者の方々との交流を通して、気持ちが穏やかになるかは分からない。ただただ荒唐無稽のおとぎ話でも読んでいるような気分をさせられるが、少し視点を変えると、健常者と障がい者が同じ空間で楽しむ大切さを教えてくれる交流の数々。心から笑う事を忘れてしまった大人達に向けて、心から笑える真の笑いを届けてくれる障がい者の人達。コメディ映画だからこそ、伝わる何かがある。誰もが共に笑い合える世界があるからこそ、誰もが輝いて生きられる。今、日本の社会はインクルーシブな社会(※11)を目指している。最近、心の底から笑い合った事があるだろうか?作品のタイトル(原題)にもなっている「ちょっとしたおまけ」とは、日々の疲れた心にほんの少しの笑いを届ける温かいプレゼントかもしれない。障がい者に対する健常者からの冷たい嘲笑ではなく、新年を迎えたこの寒い季節にピッタリの、コメディから届いた心温まる一つの笑顔をたった一人の君に贈りたい。

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』は現在、全国の劇場にて絶賛公開中。
(※2)第1節 匿名・流動型犯罪グループの特徴と動向 1 匿名・流動型犯罪グループの特徴 (1)匿名・流動型犯罪グループの台頭https://www.npa.go.jp/hakusyo/r06/honbun/html/aaf111000.html#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%80%81%E5%8C%BF%E5%90%8D%E3%83%BB%E6%B5%81%E5%8B%95,%E3%82%82%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%BF%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82(2026年1月16日)
(※3)万引き家族でくり返す「手口は大胆かつ手慣れたもの」親子3人に執行猶予付きの有罪判決 広島https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/746455?display=1(2026年1月17日)
(※4)大牟田4人殺害事件はどれだけ残酷だったか家族全員死刑、父も母も兄も弟もhttps://toyokeizai.net/articles/-/197774?display=b(2026年1月17日)
(※5)フランス中銀、2025年の実質GDP成長率を6月予測から上方修正、0.7%予測(フランス、EU、米国)https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/09/cb65348a4d3f78d6.html(2026年1月17日)
(※6)「フランスはもうフランスでなくなった…」 ルーヴル盗難事件が映す外国人問題の先行事例《引き返せない地点》のリアルhttps://toyokeizai.net/articles/-/916717?display=b(2026年1月17日)
(※8)障害者とのコミュニケーションは難しい?理解や対応の仕方で大切なこととは?https://pekoe.ricoh/pekomaga/communication-muzukasii#:~:text=%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%81%A8%E6%8E%A5%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%8D,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2026年1月17日)
(※10)”Je suis en lévitation” : Artus se confie sur l’énorme succès d'”Un p’tit truc en plus”https://www.tf1info.fr/culture/video-interview-je-suis-en-levitation-artus-se-confie-sur-l-enorme-succes-d-un-p-tit-truc-en-plus-face-a-audrey-crespo-mara-dans-sept-a-huit-2313515.html(2026年1月17日)
(※11)インクルーシブとはすべての人が共生できる社会を目指す理念https://hellouniweb.com/columns/inclusive/(2026年1月17日)