映画『リバウンド』巨頭の相手に立ち向かうネバーギブアップ精神

映画『リバウンド』巨頭の相手に立ち向かうネバーギブアップ精神

2024年5月22日

下剋上球児ならぬ下剋上バスケの真骨頂となる映画『リバウンド』

©2023 NEXON Korea Corporation, B.A. ENTERTAINMENT, WALKHOUSECOMPANY ALL RIGHTS RESERVED

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「リバウンド」。体重が増えた時によく世間から揶揄される言葉にも聞こえるが、今回はそれとはまったく違う。この「リバウンド」は、球技スポーツの最高峰バスケットボールの専門用語の一つだ。通称、バスケット、バスケと呼ばれる今も昔も若者から支持率の高い人気のスポーツは、1891年、アメリカのマサチューセッツ州スプリングフィールドにある国際YMCAトレーニング・スクール で、カナダ人の体育担当の教師ネイスミスが、冬の間に体育館でプレーする新しいゲームとしてバスケットボール を考案したのが起源(※1)で、これを考案された当初、バスケットという名前の競技は桃を入れる〈かご〉をゴ ールに用いた事から「バスケットボール」と名付けられた。このスポーツ競技は、比較的歴史は浅く、およそ100年と少ししか経っていないが、それでも、世界的に見ても非常に人気のあるスポーツだ。近年では、アニメシリーズの正当な続編となる日本の劇場版アニメーション『THE FIRST SLAM DUNK』も公開されて、アニメ人気が再熱したばかりだ。また、日本のバスケ選手と言えば、田臥選手や八村選手、渡邊選手(※2)など、世界と互角で勝負が出来る有名プレイヤーも日本から輩出されている。今、日本でのバスケ人気は熱く、アメリカのNBAに次ぐ世界2位の人気と注目度(※3)を図っている。映画『リバウンド』は、日本ではなく、韓国のバスケットボールの世界を描いたスポーツ映画だ。廃部寸前の高校バスケットボール部の新任コーチが、わずか6人の選手を率いて、全国大会を目指す姿を、2012年に韓国を熱狂させた実話を基に映画化した青春スポーツドラマとして仕上がっている。韓国におけるバスケ事情は、日本にほとんど情報として入る事はまず無いが、現在韓国では、先程の話題でもあるアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の人気急騰を背景に、バスケ教室は大盛況(※4)だったと言われているが、その一方で、国民的な人気を誇っても、プロのバスケ界隈の世界レベルは著しく低いと言われており、日本にさえも太刀打ちできない(※5)と韓国国内で言われているのが現状だ。昨年行われた杭州アジア大会では、「バスケットボール男子韓国代表チームが17年ぶりにメダルを逃したのに続き、女子韓国代表チームも日本に完敗し、決勝進出が頓挫しました。」と報道される程、韓国のプロバスケ界は非常に厳しい現実に直面している。そんな中、本作『リバウンド』が韓国や日本で劇場公開されるのは、韓国のバスケットボール協会に対して砂漠にオアシスという韓国のバスケ界に潤いを与えるいいパイプ役になったに違いないと、強く思いたい。

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韓国国内にバスケットボールが、プロスポーツや競技、教育現場におけるスポーツの一環として導入されたのは、日本統治時代の1925年に朝鮮バスケットボール協会としてスタートした歴史的背景がある。この朝鮮バスケットボール協会は、「バスケ通じて立派な朝鮮人に」を協会のモットーとして活動し、古くから韓国におけるバスケットボールの向上や大人の一般層や一般家庭への普及、並びに、世界に誇れるバスケ選手を輩出しようと取り組んでいる団体だ。ままた、在日本朝鮮人バスケットボール協会会長の康勲さんは、2006年のインタビュー(※7)にて、自身のバスケ人生においてバスケを行う上で最も大切な考えを話す。「バスケをするには3つの敵に勝たないといけない」との持論を生徒たちに教えた。「1に対戦相手、2に自分のライバル、3に弱い己の心」。また、「朝鮮人のバスケの普及と発展」(※7)と話す。男性プロバスケプレイヤーだけでなく、女性のプロバスケプレイヤー(※8)も大活躍している。バスケという球技の世界は、国境や人種、性別を越えて、多くの人間の関係性を育む大切なスポーツ競技だ。今や、大人から子どもまで、老若男女が参加でき、体を動かし、楽しむことができるスポーツ(※9)となっており、来月6月にはドキュメンタリー映画『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』という作品が公開を控えておられているり、昨年に引き続き、今年もまたバスケイヤーの重要な一年になるのかもしれない。そんな年に韓国発のバスケ映画が日本に紹介されるのは、日韓共々、バスケへの人気熱がますます再熱される予感を孕むいい機会であり、必然のタイミングだろう。近頃、日本同様に、NBAで活躍できる選手を輩出し始めた韓国(※11)のバスケへの注目度が今後、どんどん上がって行くいい契機になるのではないだろうか?本作『リバウンド』を制作したチャン・ハンジュン監督は、韓国のインタビューにて本作の制作経緯について、こう話している。

장항준:“<리바운드>는 2012년 부산 중앙고의 실화에서 시작됐다. 당시 ‘언더도그의 반란이다’, ‘한국판 <슬램덩크>다’ 하는 기사를 본 기억이 난다. 그때 장원석 제작자가 강양현 코치에게 “당장이 아니라도 언젠가 당신의 이야기를 영화로 만들고 싶다”고 허락을 구했다고 한다. 농구영화가 만들어지기 어렵던 시절이라 진행이 좀 더뎌서 그로부터 5년 뒤에 연출 제안과 함께 권성휘 작가의 시나리오를 전달받았다. 조사를 해보니 상황이 훨씬 열악했던 터라 조금 더 실제에 가깝게 고증하기 위해 시나리오를 수정하기 시작했다. 그때 김은희 작가가 한번 읽어보더니 “이거 내가 하면 안돼?” 하고 묻더라. 이게 웬 떡인가! 당장 건네줬고 그렇게 영화 작업에 착수했다.”(※12)

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チャン監督:「映画『リバウンド』は、2012年、釜山中央高校の実話から始まった。当時、アンダードッグの反乱(アンダードッグ効果)(※13)だ、韓国版『スラムダンク』だ、と言われている記事を見た記憶があります。その時、チャン・ウォンソク製作者がカン・ヤンヒョンコーチに「今でなくても、いつかあなたの話を映画にしたい」と許諾を求めたという。ただ、その当時の時代背景は、バスケットボール映画が作られにくかった頃だったので、進行が少し遅れて、それから5年後、演出提案と共に脚本家のクォン・ソンフィのシナリオの内容を伝えました。調査をしてみると、状況がはるかに劣悪だったため、もう少し実際に近づくように考証するため、シナリオを書き直しました。その時、キム・ウンヒ作家(チャン・ハンジュンの奥さん)が一度読んでみたら「これは私が、脚色できないか?」と尋ねて来たんです。これは、どんな餅なのか楽しみになり、すぐに脚本を渡して、本作の制作に着手しました。」と、本作『リバウンド』が制作されるまでの経緯を話しているが、この作品を取り巻くチャン監督や関係者達そのものが、アンダードッグ効果と言わざるを得ない。アンダードッグ効果を簡単に説明すると、「あくまで敗北が決定していない段階の弱者、または不利な状況などに同情する心の動き、およびその現象を指す」とあるが、不利な制作背景をものともせず、作品の制作や完成へと導いた監督達の反骨精神こそが、釜山中央高校で起こったバスケ部達の奇跡と瓜二つだ。

最後に、本作『リバウンド』は、負け戦と分かっていながらも、不屈の精神で強豪チームやその現状、環境に立ち向かっていた高校生達の熱い青春を描いたスポーツ映画だが、それは大人の世界であっても、負け戦となる状況は何時でも転がっている。負けを負けと認めず、最後まで諦めず、巨頭の相手に立ち向かうネバーギブアップ精神が、高尚であり美しい存在である事を、本作が迸らせている。

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映画『リバウンド』は現在、全国の劇場にて公開中。

(※1)バスケ誕生の歴史とは?日本での広まり方も解説!https://spojoba.com/articles/234(2024年5月20日)映画『リバウンド』(※1)バスケ誕生の歴史とは?日本での広まり方も解説!https://spojoba.com/articles/234(2024年5月20日)

(※2)世界最高峰で活躍する日本人! NBA日本人特集https://b-books.jp/blog/nba-japan-player/(2024年5月21日)

(※3)人気急上昇の日本プロバスケットボール、NBAに次ぐ世界2位目指すhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-22/SCB9Z9T0AFB400(2024年5月21日)

(※4)「スラムダンク」ヒットで高まるバスケ熱 教室盛況=韓国https://m-jp.yna.co.kr/view/AJP20230305000200882(2024年5月21日)

(※5)スラムダンクに熱狂する日韓、現実のバスケ界には大きな差=韓国ネット「日本にはかなわない」https://www.recordchina.co.jp/newsinfo?id=909728(2024年5月21日)

(※6)時代遅れで世界から大きく水をあけられた韓国バスケの目も当てられない実情 杭州アジア大会https://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2023100580021(2024年5月21日)

(※7)〈夢・挑戦-在日スポーツ人〉 在日本朝鮮人バスケットボール協会会長 康勲さんhttp://korea-np.co.jp/j-2006/01/0601j0511-00001.htm(2024年5月21日)

(※8)韓国代表の顔として活躍したキム・ダンビ…日本代表からの花束に「感謝と感動」https://basketballking.jp/news/japan/wnational/20240115/469923.html(2024年5月22日)

(※9)【日本橋バスケサークルB-Bridge】初心者から玄人まで老若男女1,000人以上が所属しドタキャンドタ参加OKhttps://nihonbashi-journal.com/b-bridge.html/(2024年5月22日)

(※10)ドキュメンタリー映画『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』6月公開決定https://news.yahoo.co.jp/articles/2e8f83304806fcf4f9546a9ed0fe2229a95df03e(2024年5月22日)

(※11)韓国人初のNBA選手誕生https://www.donga.com/jp/article/all/20040625/281485/1(2024年5月22日)

(※12)[인터뷰] ‘리바운드’ 장항준 감독, 배우 안재홍, “누구에게나 다시 기회가 필요하다”http://m.cine21.com/news/view/?mag_id=102345(2024年5月22日)

(※13)アンダードッグ効果とは? 意味や具体例・活用例をわかりやすく解説https://eleminist.com/article/2757(2024年5月22日)