映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
あの80年代の名作が原点回帰し、正当な続編としてスクリーンに帰ってきた。「本作を子どものために製作した」と語るジェイソン・ライトマン監督。
自身が幼少期の頃に経験した『ゴーストバスターズ』シリーズの大ヒットした当時の出来事が、本作を製作するトリガーとなったに違いない。
そんな彼自身の幼児期の経験が、「子どものため作品を作る」という強い「想い」として根底にあるのだろう。
前作2作が、監督にとって子どもながらに「思い出」の映画になった以上、今の子どもたちが成長した時に、この作品が「思い出」として心に残ってくれたらという願いを作品に託しているのだ。
本作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』は、単なるオバケ退治という作品にしているわけではない。
従来のSFアドベンチャーの要素と一緒に描かれるのは、人間同士の心の成長を丁寧に描写している。
家族としての親子の確執、友としての仲間の軋轢、など、自分たちが生きる現実の世界で経験する身近な感情を表現している。
本作の脚本、監督を担当したのは、オリジナル2本を製作したアイヴァン・ライトマンの実の息子ジェイソン・ライトマンだ。まさか、30年以上経って、親子で同タイトルの作品を製作するとは、当時誰が想像できただろうか?
このシナリオを書き上げて、親子で読み上げた時、父親のアイヴァン・ライトマンは感動したらしく、早急に映画化して欲しいと懇願したという。
確かに、本作の脚本の出来は素晴らしく、ラスト数十分に込めた監督自身の想いに共鳴してしまうことだろう。
物語の設定上、亡くなった祖父の霊と疎遠がちだったゴーストバスターズの仲間が、再会する場面は感涙必至。
私生活でも、不仲説が有名だった(後に和解している)ピーター・ヴェンクマン博士役のビル・マーレイと今は亡きイゴン・スペングラー博士役のハロルド・ライミスが、実写とCGで互いの仲や信頼関係、尊敬の念を再確認する場面は、映画史史上屈指の名場面だろう。
そんなシナリオを生み出し、本作を監督したジェイソン・ライトマンは、インタビューで作品について、こう語っている。
まず、ハロルドのライミスの家族が、本作をどのように受け止めているのか、どのような反応を示しているのか聞かれ、監督は
「私は彼らのためにあまり話したくありません。しかし、ご家族この映画に感動しました。脚本を最初に読んだのは私の父でした。そして、次に読んだ人は、ハロルドの妻、エリカ、彼の子供たち、彼の娘、バイオレットでした。撮影初日からご家族を現場に呼びました。彼らはその時から、このプロジェクトの一員でもありました。また、脚本を読み、現場にも来てくれ、編集にも携わってくれました。その行動は、明らかに私にとってとても重要なことでした。彼らが首を縦に振らない限り、私はこの映画を作るつもりはありませんでした。彼らは今、映像化されたことをとても誇りに思っています。私はむしろ、彼らから彼ら自身のことを話して欲しいと、望んでいる。」
監督は、ライミス家族を気遣い、あまり深くは語らなかったようだが、映像製作で最も大事にしている脚本を父親の次に、真っ先にライミス家一人一人に提出したのは、彼らに対する監督なりの敬意の表れだろう。
その上さらに、撮影初日の現場にも呼び、編集作業まで参加させているのは、相当彼らに礼儀を尽くしてのことだろう。また、監督はシナリオの執筆についても、言及している。
「彼らは私を見つけたと思います。プロトン・パックを持った12歳の少女の頭に浮かびました。私はパックを持った彼女を見ました。彼女はとうもろこし畑にいて、とうもろこしに火をつけ、ポップコーンが飛び出し、彼女はポップコーンを微笑みながら食べてました。10代の少年が納屋でエクト・ワンを見つけて、麦畑を漂流します。私は彼らが誰であるか知りませんでした。しかし、私はスペングラーがいることを知りました。この発想が、物語を作り出す道となりました。ストーリーテリングは本能的なものだと思います。理由すらわからないことを追求します。なぜ私が物語を語る必要があるのか分かりませんでした。でも、私はすでに語ってもいるのです。」
本作のシナリオが、どのようにできあがって行ったのかが、よく分かる発言でもある。
スペングラーの孫娘の構想から始まり、その少女の親友の男の子、田舎の麦畑で走り回る彼らの姿。
そして、スペングラーの存在そのものが、本作を正式なストーリーとして作り上げるよいきっかけになったのであろう。
また、監督自身が一番初めに構想していた一人の少女(脚本の執筆段階でのちに、スペングラーの孫娘として昇格)という本作の主役であり、物語の中核を担うフィービーという大事なキャラクターを演じたのは、マッケンナ・グレイスという子役(年齢的に子役という位置付けをそろそろ外してもいい年頃)だ。
彼女は業界内外で既に、注目されている次世代を担う若手のホープだ。
彼女は、2002年から女優としてスタートし、今年で既に10年というキャリアを持つ、子役の中でもベテランの域に入る役者だろう。
日本では、『gifted/ギフテッド(2017)』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017)』『キャプテン・マーベル(2019)』『アナベル 死霊博物館(2019)』と言った作品で主人公もしくは主人公の娘役か幼少期役を見事に好演していたのが、日本人には印象に残っていることだろう。
近年では、昨年話題となったスリラー映画『マリグナント 狂暴な悪夢』でも、主人公の子供時代を演じている。
他には、海外TVドラマの『ワンス・アポン・ア・タイム』や『ヴァンパイア・ダイアリーズ』にも、出演経験がある。本作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の公開後も、SF映画『Crater(準備中)』やスリラー映画『The Bad Seed 2(準備中)』への出演が決まっている。
今後、多くの作品で彼女を見掛ける機会が、どんどん増えてくることだろう。
そんな飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が出ているマッケンナ・グレイスは、本作の出演について、どのような感情や考えを持っているのだろうか?
伝説的な映画でもある『ゴーストバスターズ』シリーズの最新作に出演するにあたり、どう感じたのかと聞かれた彼女は、こう答えている。
「私は「ゴーストバスターズ」映画の大ファンで、作品は常に私のお気に入りの1つでした。皆さんと一緒に仕事をすることで、伝説的なオリジナルのゴーストバスターズに毎日、私は夢中になりました。 「ああ、これは本物ではない。ああ、ビル・マーレイがいる。ダン・エイクロイドがいる。本当にクレイジーな日々でした。初めての経験ばかりでした。彼らからたくさんのアドバイスをもらい、たくさん話をした記憶があります。彼らと会話ができるのはとてもクレイジーだと感じています。いつも具体的なことを忘れてしまっていました。「なんてこった!すごかった!待って!いや、忘れた!」みたいな感じです。
現場で感じた興奮を語ってくれている。ビル・マーレイやダン・エイクロイドというオリジナルキャストから学びを得、話をし、アドバイスを貰った彼女の経験は、何事にも変え難い素晴らしいことだろう。
また、オリジナルについてもファンだと公言するほど、お気に入りのようでもある。また、共演者の兄弟役を務めたフィン・ヴォルフハルトのことを聞かれ、彼女は答えている。
「フィンは素晴らしいです。フィンが大好きです。私たちが最近映画のために行ったプレスで最も実際に結合したように感じます。私は考えていました。なぜなら、フィンはプレミアに参加できなかったからです…彼は今ルーマニアでA24映画を撮影しているからです。私は兄のように彼を尊敬しています。私は本当に彼を人として崇拝しています。私たちは良い関係を持っています。彼と一緒に他のことをしたいです。」
初めて共演した二人でしたが、マッケンナ・グレイスが言うように、撮影中の経験が、互いの信頼関係を通して深い絆で結ばれたようだ。
また、マッケンナ・グレイスが言うには、フィン・ヴォルフハルトがA24製作による作品のために、現在海外ロケが行われているようだ。
彼の今後も目が離せないのは、間違いないだろう。また、最後に、再共演を果たしたいとも語っているのが、印象的だ。
また、エンドクレジットに使用されている楽曲『Haunted House』は、マッケンナ・グレイス作詞による彼女のデビューシングルだ。シンガーにもチャレンジする彼女の今後の動向が、今からでも注目したいところだ。
そして、本作の影の功労者、立役者でもある人物を紹介したい。
この作品の縁の下の力持ちとして最後まで支え、観客に感動と驚きを届けてくれたビジュアル・エフェクツ(VFX:視覚効果)の担当者マイケル ‘タイニー’アルコーン、Reetu Aggarwal、Sanchit Anantのこの三人だろう(この部門には他にも約300人の関係者が携わっているが、今回はこの三名に絞る)。
マイケル ‘タイニー’アルコーンは、特殊効果アーティストと視覚効果スーパーバイザーとして作品に携わっている。
彼の経歴は、特殊効果の技術者として2009年に公開された映画『 スタートレック』がデビュー作だ。その後、『トランスフォーマー:ダークオブザムーン(2011)』『スター・トレックイントゥ・ダークネ(2013)』『 スターウォーズ:エピソードVII-フォースの覚醒(2015)』『 ジュラシック・ワールド 炎の王国(2018)』『バンブルビー(2018)』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019)』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019)』など、今のハリウッドの特殊効果部門を担う最重要人物だ。
次回作には、視覚効果スーパーバイザーとして2023年公開の超大作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』にも参加している。
特殊効果部門における注目の技術者なのは、間違いないだろう。
また、Reetu Aggarwalは日本ではほとんど彼の存在は知られていないだろうが(自分も調べるまで知らなかった)、特殊効果部門のテクニシャンとして映画、海外TVドラマ合わせて約69タイトルの作品に参加している。
今年2022年、来年2023年公開が控えている作品は、18タイトルほどある。まさに、ひっぱりだことは彼のことを指す言葉だろう。
ココ最近ではあるものの、自分たちが普段目にする大作映画には、必ずと言っていいほど、この人物が絡んでいる。
2019年頃がデビューだと考えると、数年の間にハリウッドの業界で人気が出たスタッフだ。
初期の作品には、ノンクレジットものの、SF映画『テネット』にも参加している人物なのだ。
また、Sanchit Anantもまた若手の技術者であり、既に12本の作品にVFX担当者として活躍中だ。
初期作には、SF映画『メン・イン・ブラック:インターナショナル(2019)』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019)』『 ワンダーウーマン1984(2020)』などに参加。
その他にも『 ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(2021)』や『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)』がある。
今最もノリに乗っている技術者たちが集まったからこそ、本作の特殊効果は一定水準のレベルがあり、観客にも感動や驚きを提供できたのであろう。
調べてみたものの、彼らに対するインタビューは現地では行われていない模様だ(おそらく、今後も注目されないだろう)。
また、監督自身がVFXについて言及している記事があるかと思ったが、こちらも皆無に等しい状態。
彼らがどのような思いで作品に参加し、VFXを作り上げたのかは、まったく分からない。
ただ、作品を作る上で彼らの働きぶりは、必ず評価されるべきことだろう。
ひとつの作品には多くの裏方のスタッフがいることを忘れては行けない。
最後に、本作は全世界が待ちに待った待望の最新作だ。本当にいい作品は、作り手や演じ手たちの魂が宿ると言われている。
本作はまさに、その典型と言えるだろう。亡き俳優ハロルド・ライミスの魂をスタッフ総出で作品に吹き込んだに違いない。
その想いが、一つ一つ伝染し、観る側に「感動」という感情を植え付けたのだろう。
シリーズの正当な続編という称号が相応しい程に、映画は一つの作品として見事に成就している。今後、本作同様に80年代にヒットした名作・傑作が、新しい魂を宿して、新しい時代に「新作」として舞い戻ってくるかもしれないだろう。
次の世代に継承していける良質な作品が、誕生することを切望して止まない。
映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』は現在、全国の劇場にて上映中。
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(2)Ghostbusters: Afterlife Actress Mckenna Grace Dishes On The OG Cast, Paul Rudd, And The Reitmans – Exclusive Interviewhttps://www.looper.com/666055/ghostbusters-afterlife-actress-mckenna-grace-dishes-on-working-with-the-og-cast-paul-rudd-and-the-reitmans-exclusive-interview/(2022年2月8日)