映画『チャーリー』犬という存在はかけがえのない存在

映画『チャーリー』犬という存在はかけがえのない存在

ふたりでいこう、どこまでも映画『チャーリー』

©2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.

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またここに、インド映画の名作が誕生した。飼い主と飼い犬との心温まる関係性は、映画にしなくても、日常的に感じ取れるだろう。犬は、人間の気持ちが分かる動物であり、賢い生き物だ。言葉を持たなくとも、人間の意思や気持ちを理解できる生き物は、そう多くない。感情豊かな表情をし、人に対してちゃんと自身の喜怒哀楽を持つ。犬の能力(※1)は素晴らしく、人間の感情を読み取り、飼い主が油断しているのを見逃さず、人の贔屓を見破り、飼い主の病気が分かってしまい、そして、嘘をつく人を信用しない。非常に不思議な生き物であるが、相棒として共に生活するのであれば、犬という動物は人間と非常に相性が合うだろう。人と犬との関係は近年、伴侶動物(※2)として位置づけられているが、人と犬の関係性(※3)は深い歴史を辿り、約40万年前~15万年前には、人は既に犬と共にした生活を送っており、海外では古代エジプト、日本では平安時代頃には犬をペットとして飼っていたという時代的背景もある。DNA鑑定を通して、犬と人間との関係が氷河期末期の1万1000年前にまで遡れ、犬は人類にとって最も古い「一番の親友」(※4)であるとも言われるほど、彼等犬との深い縁は切っても切れないほど、私達の生活に深く根付いている。私達の生活に根付いた犬の存在はもう、「愛犬」という存在から「家族の一員」「パートナー」という視点で語られる。一部の人は「あくまでペット」として捉えるが、大半の人々が犬を自身の家族、もしくは自身の子どもとして考え、「ペット」という概念から「いち家族」という意識調査の結果(※5)が発表されている。もう犬は、単なる動物ではなく、私達人間に最も近い存在だ。私の自宅で飼っている柴犬を愛でたくなったが、もうしばらく我慢しよう。冒頭で、「インド映画の名作が誕生した」と記したが、本作のインド映画『チャーリー』は、人と犬との関係性を究極な愛の形で表現した名作だ。南インド・マイスールで暮らす男ダルマは、職場でも自宅の近所でも偏屈者と言われ、酒とタバコとチャップリンの映画だけを楽しみに生きる孤独な日々を過ごしていた。そんな彼の家に、悪徳ブリーダーの劣悪な環境から逃げ出してきたラブラドール・レトリーバーの子犬が住み着くように…。ある時、チャーリーと名付けたラブラドール・レトリーバーに血管肉腫の難病が見つかり、余命宣告を受ける。飼い主のダルマは、最愛の愛犬の最期の為に一大決心をするというのが本作のあらすじだが、犬を飼った事がある人は分かるであろうが、愛犬には深い愛情を注ぎたいもの。それは、家畜でもペットでもない、家族としての深い絆を育んだからこその関係だろう。

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私達日本人にとって、インド映画はインド映画でしかなく、それ以上もそれ以下もないというのが、日本の捉え方だろう。でも、その点は侮ってはいけない。インド映画は、本当に奥が深い。今、私達の目の前にあるインド映画は実際、ヒンディー語が全体の大半を占める。その次にタミル語とテルグ語のインド映画が主流で、この3つの言語のインド映画が数多く制作されており、日本では特にヒンディー語映画が多く紹介されている印象があるだろう。本作『チャーリー』は、この3言語の何処にも属さないインドのカンナダ語映画である事を先に明記しておく。私の記憶では近年、カンナダ語映画はほとんど日本では紹介されておらず(インド映画特集では特集作品のラインナップに組み込まれているが、一般の劇場で公開されるカンナダ語映画はほぼ聞かない)、たとえば、映画『K.G.F』や『James(ジェームス)』、『Vikrant Rona(ヴィクラーント・ローナ)』など、検索してもカンナダ映画はほとんどヒットしないのが、今の日本の現状だ。そもそも、インド映画にはヒンディー語圏の映画の都ボリウッドの他に、多くの映画産業が存在する。たとえば、カンナダ映画のようにカルナータカ州に拠点を置くサンダルウッド、テランガーナ州に拠点を置くトリウッド、タミル・ナードゥ州チェンナイに拠点を置く映画産業コリウッド、ケーララ州南部に拠点を置く映画産業モリウッドのこの5つの地域の映画産業が今でも盛んと言われているが、ここにアッサム州に拠点を置くアッサム語映画の映画産業ジョリウッド、インド西ベンガル州コルカタのトリーガンジ地域に拠点を置くトリーウッド、東部ウッタル・プラデーシュ州とビハール州で広く話されているボリ語で映画をボジュウッド、チャッティースガル州に拠点を置く映画産業ハリウッド、インドのハイデラバードに拠点を置くデカン語とハイデラバード語のウルドゥー語映画産業ドリーウッド、インドのジャンムー・カシミール州のジャンムー管区とヒマーチャル・プラデーシュ州が拠点のハパリウッド、グジャラート州で広く話されているグジャラート語映画をゴリウッド、インドのオリッサ州ブヴァネーシュワールとカタックに拠点を置くオディア語のインド映画産業オリーウッド、インドのパンジャブ州を中心とし、アムリトサル、ルディアナ、モハリを拠点とするパンジャブ語の映画産業ポリウッド、インドのジャールカンド州、西ベンガル州、アッサム州、オリッサ州、およびサンタル族が住むネパールの一部(特にジャパ県とモラン県)で上映されているサンタリ語映画をソリウッドと呼び、〇〇ウッドという呼称のあるインドの映画産業はインド国内に全部で15ヶ所あり、〇〇ウッドという呼称のない言語の映画はコンカニ語、カシ語、カシミール語、マラーティー語、ビハール語、ハリヤンヴィ語など(ここではまだ紹介しきれないほど)、多くの言語で映画が制作されているのがインド映画だ。その大半がヒンディー語に翻訳されたり、字幕を付けて公開されているかもしれないが、これらの作品が日本に届く事は少ないだろう。いや、稀に近いだろう。また、それぞれの映画産業は歴史が深く、古くておよそ100年前のサイレント時代から1960年代頃に制作された地域もあるが、過去の作品にまで遡ると、その数は膨大となる。今、私達が劇場で観ているインド映画はこの全体の1%にも満たないほど、インドにはインド映画が盛んに制作されている。多くの作品が制作されている中、本作『チャーリー』が日本に届いたのは奇跡に近いのかもしれないが、インドを代表する5つの言語の映画の他にも、多くのインド映画が今でも制作されている事を留意したいところだ。

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インドにおける犬の存在は近年、動物がペットとしての飼育される頭数が、年々増えていると言われ、インドでは現在、約2,300万頭の犬と猫がペットとして飼育されていると言われ、2030年には8,100万頭に達すると予測されている。日本のベンチャー企業が、外資系の動物病院(※6)をインドの日本企業が密集する地域ハリアナ州グルグラム市に2021年2月23日に開院したばかりと言う。インドにおける動物産業が今、最も注目を浴び、今後ビジネスとして急成長する事を予測させている。たとえば、インドのムンバイにおける犬事情(※7)は、インドの宗教柄、生きとし生ける動物すべてを大事にする教えが浸透し、不殺生を重んじる教えは、犬の生活にも直結していると言える。家庭の犬であろうが、地域の野良犬であろうが、その扱いは同じで、犬にとっては格差のない生活を送れているようで、飢えていたりやせ細っていたりせず、人を見ても怯える様子もなく、どの犬も朗らか見えるそうだ。本作に登場するラブラドール・レトリーバーという犬種が、インドでは最も人気のある犬の種類だと言う。インド全域における犬の存在は、インド人にとって、家族と同等に最も大切な存在なのだろう。近年、カンナダ語を話すカルナータカ州の周辺では、インド全土を先駆けて、犬やその他の動物が州営バスやインド鉄道に飼い主と一緒に乗車できる制度を始めたという(乗車には、許可証や諸条件が必要)。それ程までに、インド人と犬の関係性は深く、それは日本人以上かもしれない。日本では今年の初め、航空事故が起きた時、ペットは家族か、手荷物扱いか、という論争が沸き起こったのも記憶に新しい。その一方で、インドではこのような問題も抱えている。それは、野良犬が小さい子どもを襲い、怪我をさせる事件(※10)だ。それは、日本でも時に報道される。捨てられた飼い犬が、野犬や野良犬となり、近隣住民を襲う事案(※11)もある。また、逃げ出した大型犬の犬が、近隣住民を襲うニュース(※12)はよく報道される。これらの問題は、インドと日本はよく似ているが、近頃、インドでは国や州の予算を使い、野放しになっている野良犬達の屋根と住処を建築し、人間と同等の住む家を提供している(※13)。日本は市の予算を使ってまで、犬達の為の家を建てるかと問われれば、答えはノーだろう。日本とインドを比較した時、どんな状況下でも、インドには犬を愛でる広い心を持った国民性があるのかもしれないと、理解できる。インド全土に先駆けて、カルナータカ州が動物同伴の鉄道移動を許可する程、動物への愛は深いと言える。だからこそ、本作が生まれたのだろう。映画『チャーリー』に出演したラクシット・シェッティは、あるインタビューにて本作に登場するラブラドール・レトリーバーについて、こう話している。

शेट्टी:“बातचीत में रक्ष‍ित शेट्टी ने यह कबूल किया कि ‘777 चार्ली’ उनके लाइफ की सबसे मुश्किल फिल्म है. इस बारे में बताते हुए उन्होंने कहा, एक एक्टर के तौर पर वाकई में यह मेरे लाइफ की सबसे डिफिकल्ट फिल्म है क्योंकि फिल्म में मुझे केवल एक्टिंग ही नहीं करना था बल्कि मुझे डॉग को कमांड भी करना था. उसके (डॉग) के साथ एक्टिंग भी करना था. जो बहुत ही डिफिकल्ट था. एक शॉट के लिए लेने पड़ते थे कई टेकउन्होंने आगे ‘फिल्म में डॉग्स के साथ कैसे एक्टिंग की’ के बारे में बताते हुए कहा कि हर शूटिंग शेड्यूल के बाद हर वीक में एक वर्कशॉप होता था. जिसमें ट्रेनर डॉग को ट्रेनिंग देते थे और मैं बाद में ट्रेनर के उस कमांड को सीखता और फिर बाद में डॉग के साथ प्रैक्टिस करता. ऐसे में एक शॉट को पूरा करने में हमें 50-60 टेक लेने पड़ जाते थे क्योंकि डॉग के साथ तालमेल बैठना बेहद मुश्किल था. फिर भी मैंने हर टेक को डॉग के साथ परफेक्टली पूरा करने की कोशिश की.”(※14)

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シェッティ:「『チャーリー』が人生で最も難しい映画だった。この映画は俳優としての私の人生の中で本当に最も難しい映画でした。映画の中で私は演技するだけでなく、犬を指揮しなければならなかったからだ。私も犬と一緒に行動しなければなりませんでした。それはとても大変でした。「映画の中で犬とどのように演技したか」について説明し、すべての撮影スケジュールの後に毎週ワークショップがあった。トレーナーが犬を訓練し、その後、私がトレーナーのコマンドを学び、犬と練習するというものでした。このような状況では、犬との調整を維持するのが非常に困難だったので、ショットを完成させるまでに 50 ~ 60 テイクを要しました。それでも私は犬とのあらゆるテイクを完璧に完成させようと努めました。」と語っている。また、映画にはチャーリー役の犬が4匹、登場していると言うが、シェティはその中の一匹を養子として迎え入れる予定だと言う。また、カンナダ語映画関係者(※15)は、日本で本作『チャーリー』が公開される事を喜び、誇りにしている。日本でのインド映画ブームは、現地でも非常に有名なようだが、その中にカンナダ語映画がラインナップする事を喜ぶ記事が掲載されている。日本人としても嬉しい限りだ。

最後に、映画『チャーリー』は人と犬との濃ゆい関係性を描いた動物映画であるが、人と犬との絆や関係は深ければ深いほど、濃密であると映画は教えているが、それは人対人との関係でも言える。ただ、人間同士の関係だけでなく、犬や他の動物との関係を築く事が、人間にとってプラスになる事は間違いないだろう。犬が持つ能力、犬が人に与える影響力、犬という存在が私達の生活をより良いものにさせている。私達人間にとって、犬という存在はかけがえのない存在である事は周知の事実だ。

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映画『チャーリー』は、絶賛上映中。

(※1)犬は全部お見通し!?人間の知らない犬の能力https://dime.jp/genre/432999/(2024年7月25日)

(※2)生涯の伴侶として暮らす動物たち 求められるヘルスケアもヒトと同じhttps://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/wellness/h_vol42/(2024年7月25日)

(※3)犬と人間のつながりの歴史。どうして人間は犬と暮らすようになったの?https://peco-japan.com/52285(2024年7月25日)

(※4)犬は人間の最も古い「親友」 DNAから判明https://www.bbc.com/japanese/54743546(2024年7月25日)

(※5)愛犬はどんな存在?飼い主の言葉遣いの意識調査【ニュース】https://www.butch-japan.jp/archives/pecola/news90(2024年7月25日)

(※6)インド初、外資系動物病院がオープン 日本のベンチャー企業が「ペット・ヘルスケア」ビジネスに挑むhttps://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/b6022a7a445dc3e0.html#:~:text=%E6%88%90%E9%95%B7%E3%81%8C%E7%B4%84%E6%9D%9F%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2%E5%B8%82%E5%A0%B4&text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%9B%BD%E5%86%85%E3%81%AB%E3%81%AF%E7%B4%84,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82(2024年7月25日)

(※7)【#海外の犬たち】インドの犬事情が興味深い!インドの動物愛護施設もご紹介https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2024/04/bigdog-india-2024.html(2024年7月25日)

(※8)कुत्ते-बिल्ली के आए मजे! अब से आपका Pet भी कर सकेगा ट्रेन में सफर, बस एक बार जान लें सुविधाएंhttps://navbharattimes.indiatimes.com/travel/destinations/in-indian-railway-now-pet-can-also-travel-with-owners-with-irctc-ticket-booking-facilities/articleshow/100088217.cms(2024年7月25日)

(※9)JAL機炎上事故で浮上した「ペット」論争 愛犬・愛猫との「同伴搭乗」が問題解決にならない理由https://www.dailyshincho.jp/article/2024/01060903/?all=1#goog_rewarded(2024年7月25日)

(※10)ನಾಯಿ ಸಾಕಲು ಲೈಸೆನ್ಸ್‌ ಕಡ್ಡಾಯhttps://vijaykarnataka.com/news/mysuru/the-license-for-a-dog-is-mandatory/articleshow/60442651.cms(2024年7月25日)

(※11)捨て犬が「野犬の群れ」になり“かみつき被害”で住民は恐怖の日々。地域犬にできないのか?https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3805075fbf75a175620426ba57ebf7319e1ddb92(2024年7月25日)

(※12)栃木 逃げ出した大型犬2頭 1頭確保 もう1頭の捜索続けるhttps://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240613/1000105452.html(2024年7月25日)

(※13)Karnataka Budget 2023: ಶೀಘ್ರದಲ್ಲೇ ಪ್ರತಿ ಬೀದಿ ನಾಯಿಗೂ ಸಿಗಲಿದೆ ಸೂರು, ಬಜೆಟ್​ನಲ್ಲಿ ಇದಕ್ಕೆಂದೇ ಹೊಸ ಯೋಜನೆ ಘೋಷಣೆ!https://kannada.news18.com/news/state/karnataka-budget-2023-24-bumper-news-for-animal-lovers-special-scheme-for-street-dogs-vdd-972649.html(2024年7月25日)

(※14)EXCLUSIVE: रक्ष‍ित शेट्टी के लाइफ की सबसे मुश्किल फिल्म है ‘777 चार्ली’, बताया कैसे की डॉग्स के साथ शूटिंगhttps://hindi.news18.com/news/entertainment/bollywood-exclusive-interview-777-charlie-is-most-difficult-film-for-rakshit-shetty-4303640.html(2024年7月25日)

(※15)ಜಪಾನ್​ಗೆ ಹೊರಟ ‘777 ಚಾರ್ಲಿ’; ಕನ್ನಡ ಸಿನಿಮಾಗೆ ಮತ್ತೊಂದು ಗರಿhttps://tv9kannada.com/entertainment/sandalwood/rakshit-shetty-starrer-777-charlie-movie-set-to-release-in-japan-mdn-822884.html/amp(2024年7月25日)