映画『親友かよ』誰かの為に何かをする行為が非常に尊い

映画『親友かよ』誰かの為に何かをする行為が非常に尊い

嘘から始まった映画作り。シナリオ通りにいかない日々を描く映画『親友かよ』

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親友は、一生の宝だ。どれだけ大金を積まれようが、人生の宝となる親友は何にも変え難い。あの日あの時、共に過ごした時間は帰って来ない。同じように親友と時間を共有したくても、過ぎ去った時間が戻って来る事はない。だからこそ、友と共に過ごした時間は永劫回帰、親友との間に宇宙のように存在し続ける。物理的に取り戻せない時間があったとしても、友との間にある思い出が互いの距離と時間を宇宙の惑星のように近接させる。まるで関係ない話だと思えたとしても、遠い宇宙空間の中に見える人類と星の関係とより身近にある友情関係は一枚岩のように親密な関係性がある。親友間の友情の中に果てしない宇宙があるように、宇宙の中の銀河系の中に無数の友情が眠っている。親友のキラキラ輝く瞳の中に銀河系の星々が輝きを放つように、親友という両者の関係は銀河系の彼方より深い関係だ。映画『親友かよ』は、映画づくりを通して成長していく高校生たちのかけがえのない日々をつづったタイ発の青春ドラマ。青春の一ページや一生を捧げるような友人との出会きいは、人生において何百万分の一の確率かもしれないが、その出会いの一つでも大切にできる関係こそが、一生の宝になるのであろう。学生時代に出会えた友達は、もう二度と巡り会うことは無い一生の友情だ。

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高校生活において親友の死に直面する事は、ごく稀にあるだろう。歳を重ねれば重ねるほど、人の死と向き合う回数は増えて行くが、若年層における死は周囲の人々をも巻き込む悲しい出来事だろう。15歳から19歳の10代の若い世代の死亡原因で最も多い死因は、不慮の事故(※1)だ。また自殺も10代の死因として重要な位置を占め、特に近年、若年層の自殺が増加傾向にある。より詳しい数値では、15~19歳の死因の順位は以下となる。①不慮の事故、②自殺、③悪性新生物(がん)。10代後半の年齢層では、不慮の事故による死亡が最も多いものの、自殺も重要な死因として認識されている。高校生の不慮の事故において最も多いものとして、交通事故、特に自転車乗用中の事故、学校のグラウンドでの事故が報告されている。不慮の事故の主な種類と状況としては、まず交通事故がある。自転車乗用中の事故が最も多く、通学時間帯に多発している。出会い頭の事故、自動車との衝突事故が多く交通ルールやマナーの認識不足、運転経験の浅さが挙げられる。次に、学校内での事故では、学校のグラウンドで生徒が運転する軽自動車が横転し、死亡事故につながったケースがある(後述)。無許可での車両運転、学校の管理体制の不備が近年、問われている。その他には、転倒、転落、衝突など、突発的に発生する事故。溺水や窒息など、年齢や状況によってリスクの高い事故が起きており、夏場は特に水難事故で命を落とす10代が多くいる。車の運転による過失での事故も昔から目立っており、自身をよく見せようと車のスピードを加速させ、大事故に繋がるケース(※3)もある。高校の敷地内にあるグランドで在校生が無免許で車を運転し、死亡事故を起こした事件(※4)は、学校責任だけでなく、車を運転した学生本人の人としての資質が問われる問題でもある。また、交通事故死以外では、「教室で友人と話していた際、窓が開いていると気づかずカーテンに寄りかかり、転落した」「給食の煮物に入っていた、うずら卵をのどに詰まらせた」「持久走中、300メートル走ったところで突然ふらつき、崩れるように転倒した」(※5)など、学校生活と直結した事故は、予想もできない事から派生して起こる。それが、不慮の事故と認定してもいいだろう。事故は常に、日常の生活の隣り合わせに場所にある。

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亡き友人の代わりに映画作りをするタイの若者の姿を追った物語だが、亡き家族や友人、愛する者の代わりに、故人の意志を継いで何かをするのは非常にハードルが高い事だが、この物語に登場する学生達のように友人の生前の意志を大切にする人々は確かに存在する。日本国内では、亡き長男の代わりに、彼が生前、目標としていたカフェのオープンに向けて、その男性の両親が亡き長男に変わって、店をオープンさせた方(※6)がいる。人の生前の想いを引き継ぎ、この世に残された者達が亡くなった人の代わりに故人のやり残した想いを引き継ぐのは大切な事だ。また、海外のアメリカでは、「ルーズ・エンド・プロジェクト」(※7)というボランティア団体がいるが、この団体は故人の意志を引き継ぐ活動をアメリカを中心にしている。亡き人の想いを形にする事は、いつの時代でも、求められている事だろう。人は亡くなれば、二度と話す事はできない。会うこともできなければ、相手の声を聞く事もできない。故人の為に何かしたくても、故人がいなければ何もできない。でも、海外にはその故人に想いを届ける「天国ポスト」があり、生前のように互いに意思疎通が取れたら、亡き友人の想いを引き継げるかもしれない。また、日本国内には東日本大震災で亡くなった愛する者と会話ができる電話ボックス「風の電話」(※10)が東北地方に設置されている。この風の電話は、世界にも波及されており、全世界の人々は最後に愛する者との会話や声をもう一度、耳にしたいと願っている。映画作りもまた、「天国ポスト」や「風の電話」のような死者との対話を描いている。亡き者とは二度と会えなくても、何かツールを通して、いつでも心を通わせる事ができるのかもしれない。映画『親友かよ』を制作したアッター・ヘムワディー監督とパシット・タンデチャヌラット撮影監督は、あるインタビューにて本作について、こう話す。

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ヘムワディー監督:「撮影と監督という仕事を通して、監督という仕事について、これまで経験したことのない何かを発見しました。映画には独自の生命があることに気づきました。私たちが想像通りにしようとコントロールしたり、プレッシャーをかけたり、無理やり押し付けたりすればするほど、感情が薄れていくのです。俳優たちが台本通りに演じていても、台本を読んでいるようには感じられません。でも、私たちが彼らに説明したり、彼らの理解に基づいて演技してもらうと、よりしっくりくることがあります。」

タンデチャヌラット撮影監督:「この映画のビジュアル面では、まず脚本を解釈し、映画の構造と仕組みを理解しようと努め、それを視覚言語へと翻訳しました。明るく遊び心のある雰囲気の下に、暗く陰鬱な雰囲気を描きました。この映画の世界は深く人間的なので、冒頭のシーンは重苦しい雰囲気になるように意図しました。そこには、痛みと失望が潜んでいると感じました。この映画の難しさは、技術的な問題ではなく、むしろ映画の中で感情を伝えることの問題でした。楽しくて面白い部分と、感情的なシーンにつながる部分のバランスを取り、露骨すぎず違和感なく、繋がりを感じさせる必要がありました。各シーンの照明、舞台設定、美術監督との連携、カメラアングルなど、多くの要素が各シーンの雰囲気に影響を与えました。」(※11)と話す。痛みと失望に向き合う事によって、亡き友人との向き合い方を学習できるのかもしれない。親友かもしれないし、親友じゃないかもしれない。けれど、共に過ごした時間を考えれば、親友はどこまで行っても親友のままだ。たとえ、疎遠になったとしても、縁が途切れてしまったとしても、たった一度の出会いが親友以上の関係を築かせてくれる。

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最後に、映画『親友かよ』は、映画づくりを通して成長していく高校生たちのかけがえのない日々をつづったタイ発の青春ドラマだが、友人との関係を再度、想起させてくれる作品だ。友情とは、何か?親友とは、何か?その答えは、友情という関係の中にあり、亡き友人の為に映画作りに精を出す学生達の姿がすべてを物語っている。友人は、一生モノであり、代替品は存在しない。一度、失ってしまえば、もう二度と取り戻す事はできない。亡き友人の最期の願いを引き継いで、誰かの為に何かをする行為が非常に尊いか、この作品に登場する学生達の姿が指し示している。

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映画『親友かよ』は現在、公開中。

(※1)高校生の交通人身事故発生状況(令和7年上半期)https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/tokei_jokyo/vta.files/highschool.pdf(2025年8月18日)

(※2)中高生の事故実態と事故率https://jitensha-anzen.com/reality/data.html#:~:text=%E4%B8%AD%E9%AB%98%E7%94%9F%E3%81%AE%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E7%90%86%E7%94%B1%20*%201%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%82%84%E4%BA%A4%E9%80%9A%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%B5%8C%E9%A8%93%E3%81%8C%E6%B5%85%E3%81%8F%E3%80%81%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E5%8D%B1%E9%99%BA%E6%80%A7%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%8D%E8%AD%98%E3%81%8C%E4%BD%8E%E3%81%84%20*%202%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%95%99%E8%82%B2%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%BB%8A%E4%B8%A1%E3%82%92%E9%81%8B%E8%BB%A2%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%82%84%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E6%84%9F%E3%81%8C%E4%B9%8F%E3%81%97%E3%81%8F%E3%80%81%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%81%AB%E7%B5%90%E3%81%B3%E4%BB%98%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%84%20*%203%E5%AE%A2%E8%A6%B3%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%88%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F%E5%A0%B4%E6%89%80%E3%80%81%E7%9B%B8%E6%89%8B%E6%96%B9%E3%80%81%E4%BA%8B%E6%95%85%E6%85%8B%E6%A7%98%E3%80%81%E4%BA%8B%E6%95%85%E8%A6%81%E5%9B%A0%E3%81%AA%E3%81%A9%EF%BC%89%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E9%87%8D%E7%82%B9%E7%9A%84%E3%81%8B%E3%81%A4%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%81%8C%E6%89%8B%E8%96%84%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B(2025年8月18日)

(※3)やめろ…叫ぶ高校生らの車、事故で2人死亡 運転の18歳、頭が真っ白…猛スピードで「いいところ見せたい」https://www.saitama-np.co.jp/articles/8086/postDetail(2025年8月18日)

(※4)高校で使われる車を生徒が運転し横転 死亡事故 学校が陳謝https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20241119/1000111250.html(2025年8月18日)

(※5)「窓から転落」「給食で窒息」「ゴールポストが転倒」… 繰り返される学校事故を防ぐにはhttps://www.nhk.or.jp/minplus/0012/topic034.html(2025年8月18日)

(※6)「故郷熊本でカフェを」事故死した長男の遺志、母が継ぐ 〝30歳〟の日に開店、コーヒー通じ被害者支援の取り組みもhttps://www.47news.jp/8617360.html(2025年8月18日)

(※7)Loose Ends Aims to Help Grieving Families Finish Projects of Lovehttps://www.funeralvision.com/loose-ends-aims-to-help-grieving-families-finish-projects-of-love/(2025年8月18日)

(※8)亡き人に手紙を届ける。英国の少女が考えた「天国ポスト」https://ideasforgood.jp/2024/01/09/postbox-to-heaven/(2025年8月18日)

(※9)見えない、聞こえない、それでも亡き人を感じる 大槌町「風の電話」に人絶えずhttps://globe.asahi.com/article/14055333(2025年8月18日)

(※10)“繋がらない公衆電話”、アリゾナ州の奥地で人々の心を癒す。発端は東日本大震災の「風の電話」https://www.buzzfeed.com/jp/rikakotakahashi/wind-phone-arizona(2025年8月18日)

(※11)BEHIND NOT FRIENDS เรื่องราวเบื้องหลังของหนั เพื่อน(ไม่)สนิทhttps://www.gdh559.com/post/1727936580/?t=BEHIND%20NOT%20FRIENDS%20%E0%B9%80%E0%B8%A3%E0%B8%B7%E0%B9%88%E0%B8%AD%E0%B8%87%E0%B8%A3%E0%B8%B2%E0%B8%A7%E0%B9%80%E0%B8%9A%E0%B8%B7%E0%B9%89%E0%B8%AD%E0%B8%87%E0%B8%AB%E0%B8%A5%E0%B8%B1%E0%B8%87%E0%B8%82%E0%B8%AD%E0%B8%87%E0%B8%AB%E0%B8%99%E0%B8%B1%E0%B8%87%E0%B9%80%E0%B8%9E%E0%B8%B7%E0%B9%88%E0%B8%AD%E0%B8%99(%E0%B9%84%E0%B8%A1%E0%B9%88)%E0%B8%AA%E0%B8%99%E0%B8%B4%E0%B8%97(2025年8月18日)