第20回大阪アジアン映画祭 映画『ラスト・ダンス ディレクターズカット』映画『この場所』映画『バイクチェス』映画『また逢いましょう』

第20回大阪アジアン映画祭 映画『ラスト・ダンス ディレクターズカット』映画『この場所』映画『バイクチェス』映画『また逢いましょう』

今年もまた例年通り、大阪アジアン映画祭の季節が訪れた。今年は第20回を迎え、大阪府で開催中。テーマは「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」。第20回の上映作品本数は、新たに67作品が上映される。上映作品の製作国 ・地域は19の国と地域が集結したアジア映画に特化した映画の祭典。世界初上映19作、海外初上映6作、アジア初上映4作、日本初上映31作。3月14日(金)から3月23日(日)までの10日間、開催されている。本映画祭に出品された作品レビューと当日レポートを交えて、少しづつ紹介したい。

映画『ラスト・ダンス ディレクターズカット』最期にどんな舞を踊りたい?

一言レビュー:パンデミックにより、葬儀社に転職したダオシェン。当初は指南役のマンと衝突するが、彼と仕事をするうちに人生観に変化が生まれていく。マイケル・ホイとダヨ・ウォンは32年ぶりの共演。ディレクターズカット版は世界初上映となる。道士(どうし)とは、道教を信奉し、道教の教義にしたがった活動を職業とするもの。 男性の道士は乾道(けんどう)、女性の道士は坤道(こんどう)と呼ばれる。この香港に古くから存在する伝統的習慣を題材にして、親と子、男と女、伝統と風習、生と死、現世と冥土、地獄と天国を道士を通して、一つに纏める。道士が先人の冥福を祈るために執り行う儀式・破地獄(破獄)(※1)の舞は、道教の喪礼の儀式として大切にされ、タイトル「ラスト・ダンス」と葬儀の場で行われる舞が一つに結び付く。貴方は最期にどんな舞を踊りたいだろうか?

映画『この場所』本当の絆を育み取り戻す

一言レビュー:陸前高田での父の葬儀で再会した、フィリピン人の姉と日本人の妹。ふたりはそれぞれ傷を抱えながら、復興が進む街で新たな絆を築いていく。ディアスポラ問題に切り込みながら、東日本大震災の傷跡を背景にアイデンティティと再生を描いた。このディアスポラ問題(※2)とは、故郷を離れて暮らす人々やそのコミュニティが抱える問題、またはその離散現象そのものを指す言葉であるが、その離散現象に翻弄されながら、異母姉妹という複雑な家族関係が原因で今まで一緒に暮らしていなかった姉妹が、本当の絆を育み取り戻す迄を丁寧に描いたドラマ。

映画『バイクチェス』カザフスタンの今について

一言レビュー:テレビ局の記者として働く主人公は、仕事に恋愛に充実の毎日を送っていた。しかしプロパガンダになっていく報道、妻のいる男との恋愛、レズビアンで活動家の妹の面倒に次第に疲れていく。鋭い視点とブラック・ユーモアで描く人間ドラマ。カザフスタンを舞台に一人の女性の強く逞しい姿を通して、現在のカザフスタン社会に生きる若者達の今を力強く描いたカザフスタン映画。カザフスタンの今(※3)について、理解し触れられる貴重な作品。

映画『また逢いましょう』揺るぎない真実

一言レビュー:漫画家の優希は、父が事故で重体との報せを受け、東京から京都へと駆け付ける。無事退院した父は、リハビリのため介護施設ハレルヤへ。優希はそこで働く介護職員の洋子と出会い交流する中で、彼女の人生が変わっていく。介護問題の現状(※4)、障がい者達の苦しい現実、ドイツ哲学者ハイデガーの「存在と時間」、人の生き死について描く。タイトル「また逢いましょう」には、私達の輪廻転生の可能性と是非を考えさせられる意味を持たせる。私達が今ここにいると言う存在は、どれだけ時間が過ぎても、揺るぎない真実として残る。

(※1)了解破地獄儀式https://www.paradise.com.hk/post/__%E7%A0%B4%E5%9C%B0%E7%8D%84(2025年3月15日)

(※2)「日本は移民や植民地の歴史を忘れている」 ディアスポラの視点で世界を再考 早尾貴紀さんに聞くhttps://book.asahi.com/jinbun/article/14380342(2025年3月15日)

(※3)2022年カザフスタン騒擾――国際関係の視点から見えてくる「プーチンが引いた境界線」――https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Eyes/2022/ISQ202220_005.html(2025年3月15日)

(※4)介護業界が抱える課題は?社会全体の課題や解決方法などを解説https://sif.ac.jp/column/detail/3#:~:text=%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%80%82-,%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E8%80%85%E6%95%B0%E3%81%AE%E5%A2%97%E5%8A%A0,%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8C%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2025年3月15日)