第20回大阪アジアン映画祭 映画『蔵のある街』映画『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』映画『愛の兵士』映画『V. MARIA』

第20回大阪アジアン映画祭 映画『蔵のある街』映画『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』映画『愛の兵士』映画『V. MARIA』

今年もまた例年通り、大阪アジアン映画祭の季節が訪れた。今年は第20回を迎え、大阪府で開催中。テーマは「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」。第20回の上映作品本数は、新たに67作品が上映される。上映作品の製作国 ・地域は19の国と地域が集結したアジア映画に特化した映画の祭典。世界初上映19作、海外初上映6作、アジア初上映4作、日本初上映31作。3月14日(金)から3月23日(日)までの10日間、開催されている。本映画祭に出品された作品レビューと当日レポートを交えて、少しづつ紹介したい。

映画『蔵のある街』

一言レビュー:高校生の蒼は、ある日幼なじみの紅子の兄で自閉症の恭介が騒ぎを起こしている場に出くわす。蒼は二人を助けようと「この街に本物の花火を上げる」と約束するが、その約束が昔ながらの街に思いがけない波乱を呼び起こして…。二人の高校生を中心に花火を通して、街の復興を願う人々の姿を描いたドラマ作品。日本は今、政府を通して地方創生(※1)の取り組みに研鑽している。各地の地方都市であらゆる催し物が開催され、ふるさと納税が設立され、その土地でしか味わえない旬の味覚などが返礼品として地元の農家や職人が総力を上げて地域活性化に力を入れている。各地の夏から秋の時期に上がる花火もまた、その土地の活気を活性化させる取り組みの一つだ。今、日本全体が物価高や戦争、災害などで士気が下がっている。そんな中、若者の力が今、求められており、本作に登場する若い力が地方活性の大きなヒントとなり、鍵になる事だろう。

映画『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』

一言レビュー:僕の穏やかな日常が、何だか騒がしくなってきた。予測不能な出会いと別れにざわめき出す心。その時、代々木ジョニーは…。『違う惑星の変な恋人』の木村聡志監督が描く、ユーモラスでほろ苦い10代の青春群像。10代の頃に感じたあの焦燥感。学生の頃に感じたあの脱力感。夢も希望もなく、ただ毎日を平々凡々に生きる。誰かが味方になってくれるはずでも無く、ただひたすらに、私達は屍のように毎日を惰性に生きていた。エリートって?一流って?プロってなんだ?思春期というあの頃を過ごした全日本人になら、10代の頃に心の中に抱えていた他者への苛立ち、焦り、羨望感を今でも覚えているだろう。私達は皆、「10代」という年齢を無事に過ごし、そして通り過ぎた大人達だ。学生だった日々は取り戻せなくても、学生だった頃の感覚は取り戻せる。思春期を経験したすべての大人に贈る青春群像だ。

映画『愛の兵士』

一言レビュー:カザフスタンの文化都市アルマティで活躍する若き音楽家ベイブト。仕事も私生活も順調に回り始めた矢先、魅力的なダンサーと知り合い…。カザフスタン映画が、日本に入って来る事は、ほほ皆無に近い。カザフスタン映画と聞いても、他の作品を思い浮かべられないだろう。それだけ、日本ではカザフスタン映画が上映される事はごく稀だ。映画は、身重の妻と共に暮らす音楽家の青年に焦点を当てたミュージカル映画だが、カザフスタンにおけるミュージカル映画は今まで聞いた事がない非常に珍しい部類の作品。現在におけるカザフスタンの社会情勢(※)は、テロや騒擾、脱炭素化などについて様々な課題があり、渡航危険度は、カザフスタン全土でレベル1で、現在治安は安定している。ただ2022年燃料価格の値上げによってカザフスタン全土で集会が開かれ、騒乱状態に。その時に使用された銃器がまだ見つかってない状態で、その点は危険として判断されている。他に他国と同じように一般犯罪情勢、薬物犯罪情勢が問題視されている。少し前まで混乱が続いていたカザフスタンからとてもハッピーになれるミュージカル映画が、日本に届いたのは喜ばしい事だろう。

映画『V. MARIA』

一言レビュー:母の突然の死後、遺品整理をしていたマリアは、「MARIA」と名付けられた再生できないデモテープを見つける。母の秘密を知るためにライブハウスへと向かったマリアは、ヴィジュアル系と呼ばれる奇天烈な音楽と出会っていく。ヴィジュアル系バンドと死んだ母親の遺品がヘッドバンキングで結ぶ母と子の絆を描くロック映画。30年の長い人生の旅路で結われる遠い遠い記憶の果ての昵懇関係。ヴィジュアル系ロック音楽で彩られた30年にも及ぶ親子の人生は、ハードロックの音色で締め括られる。どれだけ遠くに離れていても、音楽の力が親子二人の絆や縁を修復し結い付ける。

(※1)地方創生とは? 目的や取り組み事例などhttps://www.mpd.ac.jp/column/detail/regional-revitalization(2025年3月22日)

(※2)クォーターライフクライシスとは?意味や5つのフェーズ、対策方法を解説https://www.profuture.co.jp/mk/recruit/management/39512(2025年3月22日)

(※3)カザフスタンの危険情報【危険レベル継続】(内容の更新)本情報は2025年03月22日(日本時間)現在有効です。https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_187.html#ad-image-0(2025年3月22日)

(※4)「母をたずねて10年」、大人になった特別養子が捜す生みの親
https://www.yomiuri.co.jp/life/20220902-OYT8T50038/#google_vignette(2025年3月22日)