映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は、写真の真の姿を写す作品だ

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は、写真の真の姿を写す作品だ

2021年6月14日

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』の作品概要

本作『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は、世界的写真家の森山大道と言う人物についてのドキュメンタリー映画だ。

80歳を過ぎた今でも、第一線で活躍する彼が、一体何者であるのか?この作品は彼のすべてを事細かくカメラに収めている。

また、森山大道さんが50年前に刊行した写真集『にっぽん劇場写真帖』が絶版になっている事に目をつけた出版社が、幻の写真集を再び世に送り出そうと奮闘する姿も同時に追った唯一無二の映画だ。

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』のあらすじ

本作は、孤高の写真家、森山大道さんが街でスナップ写真を撮影する姿と彼が過去に発表した幻の写真集『にっぽん劇場写真帖』の再出版の話を交互に差し込みながら、話が進でいく形式のれドキュメンタリーに仕上がっている。

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』の感想と評価

写真は芸術だ。ドキュメンタリー映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は、僕の心を激しく揺さぶる写真たちを紹介している。作品冒頭、若手実力派俳優の菅田将暉が、ナレーションをしている。撮影現場にて、撮られた一枚のスナップ写真。新宿ゴールデン街にて、彼が被写体の白黒写真。パッと見、普通のスナップだが、白黒で撮られたこの写真には、躍動感が伝わってきぞうだ。

写真に収められている主役はまさに、俳優菅田将暉だろう。ただ、写真に写る街全体が主人公と見間違えるほど、この写真からはエネルギッシュな街の息遣いが聞こえてきそうな一枚だ。

まるで、街全体が呼吸をしているようだ。この一枚の写真には、新宿ゴールデン街の昼と夜の顔を容易に想像できる力がある。それだけでなく、その街に暮らす人間の人生でさえも、このスナップから見えてきそうだ。まさに、白黒写真に写るすべてが主役に見えてしまう圧倒的パワーのある写真だ。

ここからは本作についてだ。この作品は二つの物語から構成されている。ひとつは、主役である森山大道についてだ。本作は、ドキュメンタリーとしても十分観応えるのある作品に仕上がっている。

作中では、森山大道さんが街を歩く姿を撮影している。驚くことに、手にしているのは、片手に収まるコンパクトカメラだけ。プロの撮影と言えば一眼レフのカメラと望遠レンズ、ショルダーバックには代わりのカメラ。重たい荷物を肩から掛け、撮影している姿が、世間のイメージではないだろうか?

でも、森山大道さんが愛用しているのは、小さな二台のデジタルカメラだけ。彼は、写真界のノーベル賞とも言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞している世界的権威の写真家。もちろん一般人に比べれば、技術や眼力を持ち備えた人物だ。でも彼が行う撮影スタイルから、芸術的先鋭的な写真を生み出せるのだ。作中、彼は「写真は撮れさえすれば、それでいい。」と話す。それにしても、こんなラフなスタイルで、ベストショットを狙える技術や腕を持っているのは、国宝級だ。

最後に、本作で最も伝えたいことは、日本で一番優れた写真家、森山大道と言う人物についてだ。その点で言うと、この作品は、ドキュメンタリーとして成功している。岩間玄監督の森山大道に対する熱烈な愛が、ひしひしと伝わってくる。でも、これだけでは、森山大道さんの凄さも、監督の愛の深さも、計り知れないだろう。本作を製作する25年前にも同監督が、45分枠のテレビ番組「美の世界」で森山大道さんを取り上げた映像作品『写真家 森山大道 1996 – 路上の犬は何を見た?』を製作している。

こちらも併せて観れば、彼についてより深く知れるだろう。また監督自身が、昨年の8月頃からnoteに掲載している撮影日誌も読むと、より作品の長所にも出会えるだろう。

ブログでは、テレビ放映されたドキュメンタリーの裏側や本作の製作の舞台裏など、細かく記されている。詳細はぜひ、監督が更新しているサイトを覗いて欲しい。

彼が抱く森山大道に対する熱意と世界的写真家の凄みに触れて、改めて本作から写真とは、芸術作品だと教えられるだろう。

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』のまとめ

本作は、監督が敬愛して止まない世界的フォトグラファー、森山大道と言う写真家としての生き様を計り知れない熱量で製作したドキュメンタリーだ。

写真業界は今、デジタルが主要になりつつ中、森山大道は昔と変わらぬスタイルで写真の撮影を続けている。今日もどこかでデジタルカメラを手にした彼と偶然出会えるだろう。

映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は4月30日(金)から京都の京都シネマにて公開、5月15日からは兵庫の神戸アートビレッジセンターにて公開予定。他、全国にて公開されるが、地域によって緊急事態宣言に伴い、上映中止としている劇場もあるため、公式のホームページもご確認下さい。

本作『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』の上映つきまして、追記させて頂きます。京都シネマでは、5月21日(金)より1週間追加上映がございます。神戸アートビレッジセンターでは、5月22日(土)より1週間上映(追って追加上映予定)。シネ・リーブル梅田におきましては、5月31日まで休館(公開時期調整中)となっております。