映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』因果は巡る。悪事は必ず返ってくる。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』因果は巡る。悪事は必ず返ってくる。

2021年7月16日
©2020 Focus Features.

文・構成 スズキ トモヤ  協力 堤 健介

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の作品概要

現在、俳優やクリエイターとして活躍しているエメラルド・フェネルが、初めて監督を務めたサスペンス映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』医学生として約束された人生を送るはずだった女性キャシー(キャリー・マリガン)は、30歳になってもアルバイトとしてカフェで働き、パッとしない日々を送っている。でも、夜な夜なバーに通っては、様々な男を毎晩、テイクアウトする。そんなある日、学生時代の同級生ライアン(ボー・バナム)と偶然、勤め先で再会する。その出会いをきっかけに、キャリーの人生は思わぬ方向へ転落していく。将来を約束された女性が、失墜していく姿を描いたリベンジ映画だ。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のあらすじ

©Universal Pictures

どこにでもいそうな、ごく普通の女性キャシーは、平凡な毎日を送っている。でも夜毎、彼女はバーと言う名の男の狩場へと赴くのであった。キャシーは、酔ったフリをしては、声をかけて来た男性にテイクアウトされ、男の部屋に転がり込むのだった。目的は、ただ一つ。アルコールの入った男性を襲うことだ。セックスをするフリをして、不埒な男どもへの復讐をしていく、夜陰の堕天使だ。でも、そんなある日、学生時代の男性と再会することで、彼女の人生は予期せぬ事態へと墜落するのだった。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の感想と評価

EDITOR’S NOTE: Variety sincerely apologizes to Carey Mulligan and regrets the insensitive language and insinuation in our review of “Promising Young Woman” that minimized her daring performance.※1

意訳:編集者より。この度、女優キャリー・マリガン氏に心からお詫び致します。我々は、彼女の大胆なパフォーマンスを行った「プロミシング・ヤングウーマン」の映画評にて、彼女の演技力に対する辛辣な評価を下したことを心よりお詫び申し上げます。

© Focus Features

これは、アメリカで最も権威のある雑誌の一つ“バラエティ誌”の映画レビュー『プロミシング・ヤング・ウーマン』にて、冒頭に飾られた謝罪文だ。レビュー欄にて、このような文面が、並ぶのは異例中の異例のことだ。その発端は、本作のレビューを書いた米国の評論家の書き方が悪意に満ちており、当事者であるキャリー・マリガン本人が、激怒したと言う背景がある。その内容と言うのも、彼女自身がファム・ファタールには似合わないと名誉を傷つけられている。それを読んだキャリー自身が激高したと言う事実がある。

さて、作品の話から少し脱線した話題を挿入部に入れたが、本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、実に興味深い映画に仕上がっている。昨今、流行りの復讐劇ではあるが、夜な夜な野獣である男どもを成敗していく主人公の姿は、女性版『狼よさらば』だ。本国プレスでは、猛烈にネタバレしないようにと注意喚起が引かれる程、力を入れている。ただ、どうしても一点、ネタバレとして触れておきたい作中のエピソードがある。シナリオの長所にも直結するトピックが、本作を一層現実味のある物語として押し上げている。

© Focus Features

将来を約束された医学生キャシーが、どうして医学部を退学したのか?それには、学生たちが犯したタチの悪いイタズラが原因なのだ。日本人にとっては、馴染みのないことかもしれないが、北米では社会問題にもなっている。

それは、人のお酒に薬物を盛って、酩酊状態にさせてレイプすると言う残虐な行為だ。実は、日本でも同じような問題が浮上している。数年ほど前からwotopi  酒に薬物を混ぜるケースも!飲み会で女を「酔わせる」危険な手口を犯罪ジャーナリストが警告 #2やNHKのクローズアップ現代 気づかぬうちに被害者に… 広がるrapeドラッグ #3と言うニュース記事で取り上げられた。本作は、現代において問題視されている“レイプドラッグ”の是非についてタイムリーに訴えている作品と言うことを忘れてはならない。

© Focus Features

それにしても、主演を好演したキャリー・マリガンの変貌ぶりは、今までの印象を覆す名演だ。見事なまでに“ビッチ”な役柄を体当たりで演じている。本来のイメージは、清純と言う言葉が似合いそうな女性だ。

特に映画『17歳の肖像』での彼女は、かわいいの一言で完結する。観客を魅了させる可憐さを持った彼女が、本作では男どもを誑かす妖艶さを熱演。そんなキャリーを“ファム・ファタール”には似合わないと侮辱した評論家には、彼女からの怒りの鉄槌が下された。本作も主人公が、ふしだらな野獣共に制裁を加える話だ。現実の世界でも、映画の世界でも、同じようなことが起きている話題作。人の心を弄び、傷付ける行為がどんなことになるのか、本作を観ればきっと理解できるはずだ。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のまとめ

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本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、一人の女性の復讐を描いたサスペンスに作り上げられている反面、脚本に取り入れたレイプドラッグの善悪を問う作品として観ることもできる作品だ。

また、主演のキャリー・マリガンの女優としての演技力にも、注目したい。彼女のパフォーマンスが、この作品を一段とウィットに富んだエンタメ作品に仕上げている。余談ではあるが、劇中曲は、どれも素晴らしい。洋楽好きなら、サウンドトラックも購入必須だ。音楽監修で参加しているスーザン・ジェイコブスにも注目。

※1Variety ‘Promising Young Woman’: Film Promising Review https://variety.com/2020/film/reviews/promising-young-woman-review-1203480660/ (参照 2021-07-11)

#2 wotopi.jp 酒に薬物を混ぜるケースも!飲み会で女を「酔わせる」危険な手口を犯罪ジャーナリストが警告 https://wotopi.jp/archives/6318 (参照 2021-07-11)

#3 NHKクローズアップ現代 気づかぬうちに被害者に… 広がるrapeドラッグ https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4302/
(参照 2021-07-11)

映画『 プロミシング・ヤング・ウーマン 』は、7月16日から全国の劇場で公開開始。一部の劇場では、7月9日から先行上映。関西では、 大阪府のTOHOシネマズ梅田TOHOシネマズなんば109シネマズ箕面MOVIX八尾。兵庫県の神戸国際松竹TOHOシネマズ西宮OS。京都府のTOHOシネマズ二条にて、絶賛公開中。

関東では7月10日(土)から東京都のK’s cinemaにて、関西では7月16日(金)から大阪府のなんばパークスシネマMOVIX堺、京都府の京都みなみ会館にて上映開始。兵庫県の元町映画館は、8月7日からです。全国順次公開予定。